今、世間を騒がせている「法律事務所の業務停止」とは、いったいどのような処分なのでしょうか。
また、どの様な影響があるのか、具体的に見ていきましょう。

法律事務所の業務停止とは

今回の業務停止は行政処分ではなく、弁護士会が下した処分となります。
業務停止により法人名で受任していた契約、顧問契約、裁判など全てを解任しなくてはなりません。
また、受任契約した際に発生した着手金なども、基本的に全て返金しなければならないため(事件の経過により変わる可能性もあります)、極めて重い処分といえます。

弁護士会とは

弁護士会とは全国で52あり、弁護士は弁護士法(第31条2項)に基づき各地方ごとに設立された弁護士の指導・連絡・監督を行う弁護士会に所属しなければ、弁護士としての業務はできません。

また、「弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、 弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図る」とありますので、弁護士会は弁護士等の登録審査、弁護士等に対する懲戒処分など弁護士等の身分に関する業務を行ったり、弁護士等が守らなければならない会則などを定めたりしています。

弁護士自治とは

弁護士は他の士業(司法書士、税理士、行政書士など)と違い独自の制度である「弁護士自治」をいう制度があります。
弁護士自治とは、弁護士、弁護士会は国や地方自治体などの監督を受けず、弁護士会が自治権をもち、自主的なルールの下で指導、連絡、監督を行うことです。

弁護士自治はなぜあるのか

弁護士は時に、国家と対決しなければならない場合があります。
例えば、刑事事件裁判などは国が有する検察・検事と裁判にて対決することになります。

その際に、基本的人権の擁護と社会正義の実現のために弁護士が活動できるようにするため、弁護士には自治権が保障されています。

契約中の弁護士法人が業務停止になって困っている方へ

相手と連絡が取れません。どうしたらいいですか?

窓口が用意されている場合はそちらに連絡をしてください。時間内に連絡できない、回線が混んでいて繋がらないなどの場合はほかの事務所に相談してみてください。

何故、受任案件を解約しなければいけないのですか?

そのように取り決めがなされているからです。業務停止の期間が1ヶ月以内の場合は解約しなくていい場合もあります。『弁護士法人の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会の採るべき措置に関する基準』の第2項1にも、その旨が記されています。

もうすぐ終わりそうなので、引き続きやってもらうことはできませんか?

そのまま継続はできません。契約は一度解除されます。依頼者様が望むなら弁護士個人と契約を結びなおすことができますが、相手方から契約しなおしてほしい等の働きかけがないことが条件です。

和解成立直前で業務停止になったのですが、報酬はどうしたらいいのでしょうか。

報酬は払う必要があります。依頼者様がその後の処理をした場合(和解をすると返事をする、書類を作成するなどした場合)は、その分に関して減額請求できる可能性があります。

契約を解除したいのですが、着手金等の弁護士費用は返ってきますか?

どこまで着手されているか、委任契約書の記載内容がどうなっているかにもよります。基本的には返還されるものと思われますが、全ての方に当てはまるわけではありません。

「個人でなら再度受任できます」と言われました。頼んでもいいですか?

原則として、個人として引き継ぐことはできません。依頼者様が受任を求めるなら認められることもありますが、当該社員からその旨の働きかけがないことが条件です。このことは弁護士会及び日本弁護士連合会が決めた基準第2項2の10に、“委任を求める働きかけをしてはならない”と記載されています。
個人でなら受任できると言われたことが基準に触れるかどうかは微妙なところです。なお、契約しなおす場合は別途書類の提出が必要になります。

まとめ

裁判中の方、やっとの思いで弁護士を見つけた方等、急な業務停止の連絡で困っていることでしょう。連絡がつかず困っている方、他の弁護士との契約を考えている方は一度他の事務所に相談してみてください。他所と契約しなおす場合は、契約してから解約通知を送るとスムーズに業務の引継ぎができます。同じ事務所の弁護士と再契約すること自体は問題とはなりませんが、再契約するまでの経緯によっては再度の処分となり、ご依頼者様の大きな負担となる可能性もあります。早い段階で別の事務所へ相談するといいかもしれません。