いじめられて学校に行けなくなってしまった子、保健室登校になってしまった子、自殺してしまった子……肉体的・精神的に苦しめられている子の親御さんもいるかと思われます。いじめをやめさせたい、認めさせたい、受けた苦痛に対する慰謝料を請求したい等、色々な思いがあるでしょう。加害者に損害賠償請求するにはどうすればいいのでしょうか。弁護士が解説します。

いじめに対する損害賠償は請求できますか?

いじめによって怪我をさせられたり、精神的な苦痛を負わされたりした場合、いじめの加害者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することが可能です。

不法行為に基づく損害賠償を請求する場合、不法行為の被害者が不法行為があったことや損害等を立証しなければなりません。そのため、怪我をした場合には診断書やけがをした部位の写真、暴言の場合には録音などの証拠が必要になります。

加害者と学校、双方にいじめの損害賠償を請求することは可能ですか?

いじめの加害者だけでなく、学校に対しても不法行為に基づく損害賠償を請求することができる場合もあります。

不法行為は、故意または過失によって他人の権利を侵害することですから、いじめによって損害を受けたことについて学校にも過失が認められる場合には、学校にも不法行為責任が生じるのです。

学校に過失があるといえるためには、単にいじめによって損害を受けたことだけでは足りず、学校がいじめを把握していたにもかかわらず適切な措置を講じなかった、把握すべきであったのに把握していなかったなどと言った事情が必要になります。

いじめが原因で大怪我をしました。どのような損害を請求できますか?

まず考えられるのが、病院関係の費用(治療費、通院交通費など)と、怪我をしたことによる精神的な苦痛に対する慰謝料です。慰謝料は、通常は入院・通院の期間に応じて決まります。

また、治療を受けても元通りになるとは限らず、顔に傷跡が残ったり、手や足の機能に制限が残ったりするなど、後遺障害が残る場合があります。その場合には、後遺障害による逸失利益と、後遺障害に対する慰謝料を請求することができます。

逸失利益とは、本来得られたはずが不法行為によって死亡または後遺障害が残ったことで得られなくなった利益のことをいいます。後遺障害の内容によって等級が定められており、逸失利益も慰謝料も等級に応じて算定されることになります。

意識不明の重体の場合、どのような損害賠償請求ができますか。

基本的にはいじめが原因で大怪我をした場合で解説した損害を請求することができます。 また、医師の指示により近親者の付添が必要であった場合には、付添費用を請求することもできます。 一般的に治療費などが支払われるのは症状固定までとされていますが、たとえばいじめによって植物状態になって回復の見込みがないような場合には、将来の治療費や、将来の介護費用を請求することができます。

いじめで殺されました。どのような損害を請求できますか?

転倒させられて頭を打つとか、川や海に落とされるなど、いじめによる暴行が原因で被害者が死亡することもあります。そのような場合、死亡したことによって将来働いて収入を得ることができなくなりますから、逸失利益を請求することができます。

また、死亡したことを理由とする慰謝料(被害者本人の慰謝料、近親者の慰謝料を含む)の請求をすることもできます。さらに、相当な範囲内の葬儀関係の費用を請求することも可能です。

いじめを苦に自殺しました。どのような損害を請求できますか?

請求できる損害の内訳としては、いじめで殺された場合の解説が当てはまります。

ただし、不法行為に基づく損害賠償を請求するには、不法行為(いじめ)と損害との間に相当因果関係がなければならず、相当因果関係があると言えるためには、加害者が損害の発生を予見できたことが必要とされています。

いじめを苦にした自殺の場合、いじめで殺された場合のように加害者の直接的な行為で死亡したわけではないので、いじめの内容や悪質さの程度次第で、自殺することまでは予見できなかったとして相当因果関係が否定され、死亡したことを理由とする損害賠償請求ができない可能性もあるのです。

まとめ

今回は、いじめの損害賠償について解説しました。

理論的には損害賠償請求ができるとしても、被害者側に証明責任があり、学校側が協力的でないことも少なくないことから、いじめ問題は真相の解明や証拠の収集が難しいという傾向があり、保護者の方だけで対応することは限界があるでしょう。

お子さんがいじめを受けてお悩みの方は、弁護士に相談することをお勧めします。