もし刑事事件で逮捕されて前科がついてしまった場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

前科とは?

前科の意味・定義

前科とは、過去に有罪判決を受けたことがある経歴を言います。ここでいう有罪判決は懲役、禁固、罰金の刑を宣告されたことをさし、執行猶予付きの判決も含まれます。
有罪判決を受けたかどうかが基準ですから、逮捕されたとしても不起訴・起訴猶予になれば前科にはあたりませんし、逆に交通事故などで逮捕されることなく在宅で捜査が進められ、罰金刑に処せられた場合は前科にあたります。

前科と前歴の違いとは?

前科がついた場合のデメリット

前科者は就職・転職が難しいのか

前科があると就職・転職ができないわけではありません。
もっとも、法律上の制限はなくても、就職活動が現実的に難しくなることが考えられます。履歴書の書式に「賞罰欄」がある場合、「罰」とは確定した有罪判決であると判断した裁判例があり、この裁判例に従うなら「賞罰欄」に前科を記載しなければならないからです。

前科が付いた場合のデメリット

前科は履歴書に書かないといけないのか

賞罰欄がある場合には、基本的には記載しないといけません。もし賞罰欄に記載をせず、後日前科が発覚した場合、勤務先から解雇されるなどの労働トラブルに発展するおそれがあります。記載したくない場合には、賞罰欄のない履歴書の書式を使用するといいでしょう。

前科持ちだと公務員になれないのか

公務員や一部の国家資格は、前科の内容次第で資格を失うことがあります(欠格事由といいます)。
公務員の場合、禁固以上の刑に処せられることが欠格事由とされ、執行猶予付きの場合は執行猶予期間が満了するまで、実刑の場合は刑期満了まで公務員になることはできませんし、現に公務員である者は失職することになります。
また、これらの期間が満了した後、または欠格事由に当たらない罰金刑の場合であっても、前科の内容次第では採用の過程で不利になることは十分に考えられます。

前科持ちだと弁護士になれないのか

弁護士の場合、禁固以上の刑に処せられたことが欠格事由とされており、執行猶予の場合は猶予期間満了まで、実刑の場合は刑の執行を終えてから罰金以上の罪を犯すことなく10年以上経過するまで、弁護士になることはできません。 また、罰金刑であれば法律上の欠格事由には当たりませんが、前科の内容次第では弁護士会への登録を拒まれる場合も考えられます。

前科持ちだと刑事裁判に影響を及ぼすことも

前科のある人が再び罪を犯した場合、裁判官に常習性や再犯のおそれがあるとか、遵法精神に欠けると思われるおそれがあります。その結果、前科がない人と比較して刑期が長くなったり、前科がなければ執行猶予が付くような犯罪でも前科があることで実刑になったりすることがあります。

前科がつくと海外旅行に行けなくなるのか

前科があってもパスポートの取得を制限されることはないので、海外旅行に行けなくなるわけではありません。
ただし、前科の内容によっては、渡航先の国からビザの発給を拒否されたり、ビザが発給されても入国審査で入国を拒否されたりすることもあります。

結婚相手に戸籍を見られたら、前科がばれるのか?

戸籍に前科が記載されることはありませんし、戸籍以外にも、住民票、住民基本台帳などに前科が記載されることはありません。前科の記録は市町村、検察庁で管理していますが、一般の方が目にする機会はまずありません。
ですから、結婚をする際に戸籍謄本をとって結婚相手に前科があることがばれるというようなことはありません。

前科持ちだとお金が借りられないのか?

銀行や消費者金融、カード会社などは、貸付やカード作成の申し込みを受けた際、信用情報機関で申込者の信用情報を確認するのですが、信用情報機関が収集する情報は経済的な信用力に関するものに限られ、犯罪歴などは登録されません。したがって、前科があっても、(経済的な信用力が認められれば)お金を借りたり、車や家のローンを組んだりすることは可能です。

まとめ

このように、前科があることで様々なデメリットを受ける可能性があります。
冒頭で紹介したとおり、前科とは有罪判決を受けたことをさしますが、すべての犯罪が起訴され、有罪となるわけではなく、事案によっては起訴猶予という形で終わることもあります。
ですから、万一ご自身やご家族が刑事事件に関与してしまった場合には、なるべく前科がつかないよう、早い段階で刑事事件に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。