駐車場で交通事故トラブルに巻き込まれることも少なくありません。特に駐車場は狭い空間なので交通事故が起きやすいのです。駐車場内で交通事故に遭遇した場合はどのように対処すればいいのか、詳しく見ていきましょう。

駐車場内で起きた事故と一般道路で起きた事故に違いはあるの?

駐車場内の事故は、一般道路の交通事故と違うの?

駐車場内で交通事故が起こったとき、一般道路上での事故とは異なる取り扱いがなされることがあります。このことがあるため、「駐車場内の事故は交通事故では無い」などと言われることもあります。

実際、駐車場内の事故は、どのような点でいわゆる「交通事故」とは異なるのでしょうか?

交通事故については、道路交通法上に定義されていますが、その内容は「車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊」と規定されています。

道路交通法上の交通事故とは、道路上で起こった事故のことですが、そうだとすると「道路」に私有地や駐車場が含まれるのかが問題になります。道路交通法上に言う道路は、基本的には公道ですが、「一般交通の用に供するその他の場所」も含まれます。

不特定多数のものが通行しない私的な駐車場は道路交通法が適用されないことも

「一般交通の用に供するその他の場所」かどうかについては、不特定多数の者が自由に通行(利用)できる状態かどうかによって判断されます。そこで、他者の立ち入りや通行が制限されている私有地で起こった事故には道路交通法が適用されず、同法に言う「交通事故」扱いにならないことがあります。

また、駐車場も同じで、不特定多数のものが通行しない私的な駐車場は、やはり「道路」ではなく、道路交通法の適用がありません。ただし、私有地や駐車場であっても、不特定多数のものが通行する場所であれば、道路交通法が適用される余地があります。

道路交通法が適用されない場合、交通事故証明書が発行されない

駐車場や私有地の事故で道路交通法が適用されない場合、通常の公道上の交通事故とは異なり、交通事故証明書が発行されません。また、道路交通法違反は成立しないことになります。駐車場内で無免許運転などをしても、道路交通法上の責任は問われないということです。同様に、駐車場内で交通反則行為をしても、免許の点数が加算されることはありません。

このように、駐車場での事故は、道路交通法上の「交通事故」にならず、道路交通法の適用がないことがあるという点が、駐車場事故と公道上の事故の大きな違いです。

駐車場内で交通事故を起こした場合の罰則

道路交通法上の「道路」に該当しない駐車場内で事故を起こした場合、「交通事故」にならないので、免許の点数などは引かれません。しかしその場合でも、罰則の適用はあるので、注意が必要です。駐車場内での事故でも、刑事責任や民事責任は免除されないからです。また、駐車場であっても不特定多数が通行する場所であれば、道路交通法の適用があります。以下で、具体的に見てみましょう。

当て逃げをした場合の罰則

駐車場内で当て逃げをすると、罰則があります。この場合に適用される罰則には、行政罰と刑事罰があります。行政罰とは、免許の点数が加算されることで、免許の点数が大きく加算されたら、免許停止や免許取消処分を受けることになってしまいます。刑事罰とは、刑事責任を問われることで、刑事罰が適用されたら、前科がついてしまいます。当て逃げをした場合の行政罰として、免許の点数が以下の通り加算されます。

  • 基礎点数:安全運転義務違反 2点
  • 付加点数:危険防止措置義務違反 5点

合計7点が加算されるので、免許停止になってしまいます。

さらに、刑事罰として、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金刑が科される可能性があります。

ひき逃げをした場合の罰則

次に、ひき逃げをした場合の罰則を確認しましょう。ひき逃げをすると、大変に重い罰則があります。

まずは、行政罰を見てみましょう。ひき逃げの行政罰は、どのような状態でひき逃げをしたのかや、ひき逃げをした結果被害者がどうなったかなどによって加算点数が異なります。また、ひき逃げをすると免許取消になりますが、その後しばらく欠格期間が発生して、その間は免許取得ができなくなります。

ひき逃げの場合の加算点数と免許の欠格期間は、具体的には、以下の表のとおりです。

違反の種類 点数 欠格期間
ひき逃げ事故(救護義務違反) 35点 3年
ひき逃げの傷害事故 48点(35+13) 5年
ひき逃げの死亡事故 55点(35+20) 7年
酒気帯びひき逃げ傷害事故(0.15~0.25mg ) 61点(13+35+13) 8年
酒気帯びひき逃げ死亡事故(0.15~0.25mg ) 68点(13+35+20) 9年
酒気帯びひき逃げ死亡事故(0.25mg以上) 80点(25+35+20) 10年
酒酔いひき逃げ傷害事故 83点(35+35+13) 10年
酒気帯びひき逃げ傷害事故(0.25mg以上) 73点(25+35+13) 10年
酒酔いひき逃げ死亡事故 90点(35+35+20) 10年

また、ひき逃げをすると、刑事罰も適用されます。ひき逃げの場合に適用される可能性がある刑事罰は、どのような違反があったかや、どのような結果が生じたかによって異なってきます。具体的には、以下の表のとおりです。

違反内容、結果 罰則の内容
負傷者の救護と危険防止の措置違反 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
事故が、運転者の運転に起因する場合は10年以下の懲役又は100万円以下の罰金
事故報告の義務等違反 3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
現場に留まる義務違反 5万円以下の罰金
自動車運転過失致死傷罪 7年以下の懲役もしくは禁錮、又は100万円以下の罰金
危険運転致死傷罪 負傷:15年以下の懲役
死亡:20年以下の懲役
殺人罪 死刑・無期懲役・懲役5年以上

このように、ひき逃げをすると、非常に重い刑罰が科されてしまうので、駐車場内の事故であっても、絶対にしてはいけません。

駐車場内で起きた交通事故の過失割合は算定が難しい!

駐車場内で交通事故が起こったとき、問題になることが多いのが過失割合です。公道であれば、優先道路や信号機、道路標識などもあるので、どちらに過失があるかがわかりやすいですが、駐車場や私道にはこのようなものがないので、はっきりとどちらが悪いとは言いがたいことが多いからです。

すると、結局は当事者双方の言い分によって過失割合が決められることになりがちです。保険会社の担当者の力量で過失割合が変わってくることもあります。ただ、そうはいっても、駐車場内の交通事故の過失割合にも、一定の基準や相場はあります。

駐車場内での交通事故!どちらが悪いの?!

駐車場内に止まっている車に、通路を進行する車がぶつかった場合

以下では、駐車場内の交通事故の過失割合の目安をケースごとに見てみましょう。まずは、駐車場内に止まっている車に対して、通路を進行する車がぶつかったケースです。この場合、止まっている車の過失は0、ぶつかった車の過失は100となるのが基本です。

駐車場内の駐車禁止場所に止まっている車に、通路を進行する車がぶつかった場合

次に、駐車場内に駐車禁止場所がある場合、その車に通路を進行する車がぶつかった場合の過失割合を考えてみましょう。

この場合、止まっている車の側にも「駐停車禁止場所」に駐車していたという過失があります。そこで、上記の過失割合が修正されて、止まっている車の過失割合が10、ぶつかった車の過失割合が90となります。

駐車場の通路を進行する車と、駐車区間から通路へ出ていこうとする車が出会い頭で衝突した場合

次に、駐車場の通路を走行する車と、駐車区画から通路へ出て行こうとする車が出会い頭で衝突した場合です。この場合、通路を走行していた車の過失割合が30、駐車区画から通路へ出ようとしていた車の過失割合が70となるのが基本です。

駐車場内で逆走してきた車と、通路を進行する車が正面衝突した場合

駐車場内で逆走してきた車が、通路を進行している車と正面衝突してしまった場合、逆走してきた車の過失割合が100、通路を走行していた車の過失割合が0となるのが基本です。

お互いの車が駐車区間に入ろうとして接触事故を起こした場合

車がお互いに通路から駐車区画に入ろうとして接触事故を起こした場合には、基本の過失割合は50:50になります。

保険会社は被害者の過失を主張してくる

駐車場内で交通事故が起こった場合、上記のようにそもそも過失割合を決めにくいという問題がありますが、それ以上に保険会社の対応にも問題があります。一般的に、保険会社は、支払いを減らすために被害者側の過失を大きく主張してくることが多いです。

また、駐車場内の事故は過失割合をはっきり決めにくいことや、調査や交渉の手間を省く目的などのために、保険会社の担当者同士が話し合いによって、50:50かそれに近い数字にしてしまうこともよくあります。

駐車場内の交通事故で被害者になった場合には、不当に自分の過失割合を大きくされないように注意する必要があります。

駐車場内での交通事故の過失割合に納得がいかない!

駐車場内で交通事故に遭った場合、保険会社に任せていると、被害者側の過失が増やされて、適当に50:50などにされてしまうおそれがあります。そうなると、受け取ることができる損害賠償金が本来より大きく減ってしまい、不利益を受けます。

そこで、駐車場内での交通事故の過失割合に納得ができない場合の対処方法をご紹介します。この場合、事故の状況を明らかにするための証拠を集めることが何より大切です。そのためには、交通事故現場(駐車場)に防犯カメラや監視カメラの映像が残っていないかをチェックしましょう。最近では、私有地の駐車場であっても、防犯目的でこれらのカメラを設置していることが多いです。もし、これらのカメラの映像記録があるなら、駐車場の管理者に対して、映像を見せてくれるよう交渉してみましょう。「駐車場内で事故に遭った」と言えば映像を見せてくれる人もいますし、もし見せてもらえない場合には、警察経由で頼んでみると良いでしょう。

ドライブレコーダーの映像が役に立つこともある

また、自車にドライブレコーダーを搭載していた場合には、その映像も役に立つことがあります。ドライブレコーダーの映像記録は交通事故状況の証拠になるので、重宝します。もし今自動車にドライブレコーダーをつけていない場合には、今後の交通事故対策のために購入すると良いでしょう。

さらに、これらの手段によっても、過失割合を納得がいく数字にしてもらえないなら、弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、適切な証拠の集め方と法律的な相場を知っているので、相手保険会社と交渉をして、適正な過失割合にしてくれることが期待できます。

まとめ

今回は、駐車場内での交通事故について解説しました。駐車場内で交通事故が起こった場合、公道上の事故とは異なり、道路交通法の適用がないケースがあります。ただ、駐車場内であっても、不特定多数が通行する場所であるなら道路交通法の適用がありますし、どちらの場合でも罰則はあります。

また、駐車場内の交通事故は、過失割合の判断が難しいという問題があり、相手との示談交渉も難航することが多いです。被害者側の過失割合が不当に大きくされて、50:50やそれに近い数字にされてしまうこともよくあります。

駐車場内の交通事故の場合に納得いく過失割合にしてもらうには、まずは証拠集めが重要ですが、自分ではどうしようもないときには、交通事故事件に強い弁護士に相談に行きましょう。

今回の記事を参考にして、駐車場内で事故に遭った場合も上手に対処して、不利益を受けないようにしましょう。