子供が欲しいのに配偶者に拒否されることがあります。
セックスレスは離婚事由になりますが、子作り拒否された場合はどうなのでしょうか?
今回は、子作り拒否されたことを理由に離婚できるのか、慰謝料は請求できるのか解説します。

子作り拒否されたことを理由に離婚できる?

子作り拒否とは、
①性交渉すること自体を拒否するケース
②性交渉をする際は必ず避妊することを求め、避妊した上での性交渉には応じるものの、避妊しない性交渉には応じないケース
上記のいずれかが考えられます。

このようなケースにおいて、性交渉を拒否された側から離婚請求がなされたものの、性交渉を拒否した側が離婚に応じないとき、裁判所は判決で離婚を命じることができるのでしょうか。

この点について、民法の法律解釈に関して最も権威がある文献である「新版注釈民法」の第22巻392頁には次のように記載されています。

「夫婦間の正常な性生活を妨げるなんらかの事情(性交不能・懐胎不能・異常性欲・性交拒否・性病など)も、「婚姻を継続し難い重大な事由」を構成する重要な要素となる。当事者の責任は、さしあたり問題にならない。しかし、異常ないし過度の性関係を相手の意思に反して、あるいは暴力的に強要するといった場合には、責任も問題となり、それだけ離婚も認められやすくなるといえる。」

上記の法律解釈を前提にすると、性交渉をすること自体を拒否すると離婚原因となります。実際、多くの家庭裁判所や高等裁判所が性交拒否を離婚原因とする離婚判決を言い渡しています。

これに対し、性交渉をする際は必ず避妊することを求め、避妊した上での性交渉には応じるものの、避妊しない性交渉には応じないケースが離婚原因となるかどうかについては、これに言及する文献や裁判例の記載を発見することはできませんでした。

しかしながら、一般的な婚姻生活において夫婦が性交渉をする目的は、単に夫婦間の性的結合関係を強めて夫婦間の愛情を確認するためにとどまらず、子供をもうけて産み育てるためでもあります。そうすると、合理的な理由がないのに避妊を強要して子作りに応じなければ、離婚原因となる可能性が高まるといえるでしょう。

年齢は離婚できるかどうかに影響するの?

前述したとおり、性交渉をすること自体を拒否すると離婚原因になります。しかし、例えば夫が70歳の高齢であり、肉体的に性交に応じることができないケースなどでは、社会通念上一般に性交渉に応じなくてもやむを得ないといえますので、例外的に離婚原因とはならないと考えられるでしょう。

他方で、妻にとっては、一般に、高齢になると妊娠しにくくなったり健康な子を出産することができる可能性が低くなったりしますので、年齢が若いうちに妊娠・出産したいという要求には相応の合理性があります。そのため、妻が高齢になり、安全な妊娠・出産をする年齢的なタイムリミットに近づけば近づくほど(文献や裁判例の裏付けはありませんが、医学上35歳以上が高齢出産に分類されていることから、35歳が一応の目安になるのではないでしょうか)、避妊しない性交渉を拒否することが離婚原因になりやすいといえるでしょう。

妻が高齢になると離婚原因になりやすいとはいえ、妻の年齢が若ければ離婚原因になりにくいとはいえません。妻の年齢にかかわらず、合理的な理由なく避妊を強要して子作りを拒否することは離婚原因になると考えられます。

とはいえ、当然のことながら、裁判等の法的手段に出る前に夫婦の間で十分な話し合いをする機会を設けておくことが必要であり、離婚を請求する側としては「こちらから十分な話し合いを求めたものの、相手はそれに誠実に応じようとせず、依然として避妊をしない性交渉を拒否している」という形を作っておくことが重要です。

子作り拒否しているのが夫の場合

前述したとおり、性交渉をすること自体を拒否すると離婚原因になります。そのため、そもそも性欲がない、仕事で疲れているので性交するよりも休みたいなどという理由で性交渉をすること自体を拒否することは許されず、仮にこれを拒否すると離婚原因となります。

しかし、「新版注釈民法」22巻392頁に記載されているとおり、過度の性関係は拒否することができます。性交渉の頻度がどの程度になれば「過度」といえるかについては明確な基準はありませんので、その夫婦の実情に応じてケースバイケースで裁判所が判断することになります。

また、合理的な理由なく避妊を強要して子作りを拒否すると離婚原因になると考えられます。そのため、子供が嫌い、父親になる自信がないなどという理由で避妊をしない性交渉を拒否することは許されないといえるでしょう。なお、離婚請求をする側としては、前述したとおり、裁判等の法的手段に出る前に夫婦の間で十分な話し合いをする機会を設けておくことが必要です。

子作り拒否しているのが妻の場合

子作り拒否しているのが妻の場合であっても、夫の場合と同様に考えられます。

すなわち、そもそも性欲がない、子供が嫌い、母親になる自信がないなどという理由で子作り拒否をすることは許されません。

これに対し、貯金がないとか今の稼ぎではでは育てられないなどの家計上の理由や、前回の妊娠がつらかったのでもう妊娠したくないなどの理由で、性交渉には応じるものの、避妊を強要するケースでは、避妊を求める理由に合理性があるかどうかについて慎重な判断がなされることになります。

子作り拒否が原因で離婚した場合、慰謝料はもらえるの?

子作り拒否が離婚原因として認定されると、拒否をした者は「有責配偶者」となりますので、原則として他方の配偶者に対して慰謝料をもらうことができます。

慰謝料の相場

離婚に伴う慰謝料とは、離婚によって受けた精神的苦痛を慰謝するための金銭賠償のことです。そのため、離婚の伴う慰謝料が認められるためには、他方配偶者が離婚原因を作った「有責配偶者」といえなければなりません。

離婚に至る経緯やそれによって受けた精神的苦痛の程度はケースバイケースですから、離婚に伴う慰謝料の客観的基準を明確に定めることは極めて困難ですが、一応の判断要素としては、①相手方の有責性の程度(有責性が大きければ慰謝料も高額になる)、②請求者の精神的苦痛の程度(精神的苦痛の程度が大きければ慰謝料も高額になる)、③婚姻期間(婚姻期間が長ければ慰謝料も高額になる)、④未成熟の子の存在(子供が幼ければ慰謝料も高額になる)等があります。

弁護士の一般的な感覚としては、離婚に伴う慰謝料の相場は100万円から300万円程度です。100万円だと安く感じ、300万円だと高く感じます。500万円以上の慰謝料が認められるケースは極めてまれです。

とはいえ、繰り返しになりますが、離婚に伴う慰謝料の金額がいくらになるかは、千差万別であり、ケースバイケースの最たるものといえます。

まとめ

裁判は一種の戦争です。勝てるかどうか分からない状態で裁判に踏み切るべきではなく、理想を言えば、万全の状態で提訴し、提訴後は勝訴判決を確認するだけにしたいものです。そして、そのためには法律の専門家である弁護士の助言を得ながら、事前に入念な準備を行うべきです。単純な性交拒否であっても、これを離婚原因として裁判所に認めさせるためには、事前に争いの余地のないほど明確に証拠化しておく必要があります。

弁護士は、相談者・依頼者の最善の利益を図るべく行動します。離婚事件は男女関係の機微に触れることが多く、相談することが恥ずかしいと思う事項があるかもしれません。しかし、弁護士には守秘義務があります。弁護士から相談者・依頼者の秘密が外部に漏れることはありませんので、ご安心ください。迷っていることや悩んでいることがあれば、まずはお気軽に弁護士相談を受けてみられてはいかがでしょうか。