相場よりも安く借りることができるため、一部の人には事故物件が人気なようです。心理的瑕疵あり、告知事項ありなどと表記されているものがそれにあたりますね。大家さんやオーナーからしてみれば、それさえなければ通常の価格で貸せたのに…と思うこともあるでしょう。

では、入居者が原因で事故物件になってしまった時、原状回復費用や、安く貸さなければならなかった分の補填金などは請求できるのでしょうか?解説します。

そもそも事故物件ってどんなもの?

そもそも「事故物件」とは、どのようなものなのでしょうか?

現在の日本の法律には、「事故物件」について明確な定義はありません。一般的に「事故物件」と呼ばれる物件には、2種類あります。

1つ目は、「物理的瑕疵」です。屋根裏にカビが生えている物件や、床下の柱が傾いている物件のことです。購入する前には分からないけれど、実際に住み始めた後になって判明するような隠れた瑕疵のことです。

2つ目は、「心理的瑕疵」です。住んでいた人が倒産した場合や、借り主が自殺をした場合などを意味します。他にも、殺人事件や傷害事件の現場となった物件なども含みます。心理的瑕疵は、目で確認することはできないものの、多くの人が「なんとなく気持ちが悪い」「不気味なので住みたくない」と感じる瑕疵のことです。

今回の記事では、2つ目の「心理的瑕疵」について解説します。

自殺や孤独死の場合、遺族や連帯保証人に損害賠償を求めることはできる?

自殺の場合

借り主が自殺した場合は、「事故物件」と呼ばれ、次の借り手が見つかりにくくなります。たとえ借り主が見つかったとしても、家賃を相場よりも大幅に減額しなければいけないことがほとんどです。それでは、この家賃の減額分は、遺族や連帯保証人に請求することができるのでしょうか?

平成27年の東京地方裁判所の判決では、借り主が室内で自殺した場合に、大家さんの家賃収入の減少分を損害賠償として認めました。このケースでは、自殺した物件が都心のワンルームであったことから、「1年間は借り主がみつからないだろう。しかし、都心でしかも交通の便が良いので、その後はすぐに借り主が見つかるはずである。もっともその場合でも、最初の2年間は家賃を半額にせざるをえないだろう」と裁判所が判断して、損害賠償として「1年分の家賃全額」と「2年分の家賃半額」を認めました。

孤独死の場合

上記の裁判例は、あくまで自殺のケースです。自殺は本人の意志によるものなので、損害賠償請求が認められやすい傾向があります。

しかし、孤独死の場合は、人間の衰弱によって必然的に起こることです。自然の摂理として、避けることができません。自殺のケースであれば、多くの人が「なんとなく気持ちが悪い」と感じますが、自然死の場合は、自殺のケースに比べれば抵抗感が少なく、次の借り手を見つけやすいと言えます。

以上の理由により、孤独死の場合は、損害賠償請求が認められにくい傾向にあります。ただし、個別のケースによっては損害賠償請求が認められる可能性がありますので、孤独死による事故物件についてお悩みの方は、弁護士までご相談ください。

部屋で殺人が起きた場合、損害賠償を求めることはできる?

自己が所有する物件で殺人が起きた場合、事故物件として次の借り手が見つかりにくくなります。借り手を見つけるためには、家賃を相場よりも大幅に減額しなければいけません。このような場合、損害賠償を求めることができるのでしょうか?

借り主が殺人事件の犯人であれば、家賃の減収分を、損害賠償として借り主に請求することができます。

一方で、借り主が被害者である場合は、借り主に過失はありませんので、借り主に損害賠償を請求することはできません。借り主が被害者である場合は、加害者を探し出して、加害者に損害賠償を請求することになります。

加害者が警察に逮捕されている場合は、加害者の弁護士と連絡を取り、弁護士を通じて損害賠償の交渉をすることになります。

まとめ

自殺による事故物件については、遺族や連帯保証人に損害賠償を請求することができます。孤独死の場合は、人間の衰弱によって必然的に起こることなので、損害賠償請求が認められにくいという傾向があります。

損害賠償としてどれぐらいの金額を請求できるかは、個別のケースによって異なります。事故物件についてお悩みの方は、法律の専門家である弁護士までご相談ください。