世の中にはニュースにはならないような、小さな犯罪が多数存在します。街中で見かけるものから、うっかりやってしまいがちなものまで、まとめてみました。それぞれどんな罪に問われる可能性があるか、見ていきたいと思います。

ペットをリードなしで散歩する

ペットをリードなしで散歩している人をたまに見かけます。

ペットは、法律上は「物」ですが、動物は命あるものですから、動物の飼い主は、動物の種類や習性等に応じて、動物の健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命等に害を加えたりすることのないように努めなくてはなりません。

そこで、動物の愛護及び管理に関する法律は、「動物の所有者又は占有者は,動物が人の生命,身体若しくは財産に害を加え,又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない」(同法7条1項)と規定します。

この法律をうけて、環境大臣は、「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」を制定していますが、その第4の5項では、犬の所有者等は、犬を道路等屋外で運動させる場合に (1) 犬を制御できる者が原則として引き運動により行うこと。(2) 犬の突発的な行動に対応できるよう引綱の点検及び調節等に配慮することを遵守するように努めることを規定します。

この規定を受けて、各地の地方公共団体は、大抵、「ノーリードでの散歩はいけない」という規定を設けています。

たとえば「大阪府動物の愛護及び管理に関する条例」第4条は一定の例外を除き、「犬の飼養者は、その飼養する犬(以下「飼い犬」という。)を、人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれのない方法で、常に係留しておかなければならない。」と規定します。

これに反すれば、知事は、その犬を捕獲し、抑留することができる(同条例11条)としていますし、同条例は罰則として拘留または科料を規定しています。(なお、拘留は、1日以上30日未満、刑事施設での拘置で、科料は1,000円以上1万円未満の金銭を徴収することです。)

ペットの糞を放置する

ペットの糞の置き去りは本当に迷惑ですが、犯罪が成立するのでしょうか。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条は、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と、廃棄物の不法投棄を禁止しています。同法2条は、「この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。」としていますから、ペットの糞をもこれにあたりますが、ペットの糞の放置で、この法律の適用が検討されることは、この法律の罰則が5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金という重いものであることから、よっぽど悪質なケースに限られるかもしれません。

軽犯罪法1条27号では「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物または廃物を棄てたもの」を拘留または科料で処罰すると規定しています。

また、「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」第4の3項は、「犬の所有者等は、頻繁な鳴き声等の騒音又はふん尿の放置等により周辺地域の住民の日常生活に著しい支障を及ぼすことのないように努めること。」と規定しています。

さらに、糞害に悩む自治体では、条例で規制しているところもあります。

たとえば、大阪府泉佐野市では、「泉佐野市環境美化推進条例」に基づき、主に、禁止区域での路上喫煙および犬フン等の放置に対して、平成25年7月から過料の徴収を行っています。平成25年7月15日、巡視員が犬の糞を放置した57歳の男性を見つけ、糞を持ち帰るよう注意しましたが、男性はこれを聞き入れず現場を立ち去ろうとしたことから、この条例にもとづいて初めて5,000円の過料を徴収したということです。

ゴミの指定日以外にゴミを捨てる

ごみの日には留守にしているからなどとつい、ごみを指定日以外の日に捨てることがあるかもしれません。このような行為になにか犯罪が成立する可能性があるのでしょうか。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律は、その第5条で、「土地または建物の占有者(占有者がいない場合には、管理者とする。以下同じ。)は、その占有し、又は管理する土地または建物の清潔を保つように努めなければならない。」と規定し、第16条では、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」と規定しています。

ごみの指定日以外は、ごみは回収されませんので、これらの規定に反することになります。この法律の罰則は、個人の場合5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が課せられることになっています。

また、一戸建て住宅の場合は、ごみを出す場所が自宅前の路上であることがありますが、道路法43条は「道路に投棄した廃棄物により交通に支障を及ぼす恐れを生じさせた者」について1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処するとしています。

コンビニやスーパーのゴミ箱に家庭ゴミを捨てる

それでは、コンビニやスーパーのゴミ箱にごみを捨てる場合はどうでしょうか?

これもやはり、その個人が指定された場所でない場所にごみを捨てる場合ですので、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条では、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」という規定に違反することになります。

また、コンビニやスーパーなどは、家庭ごみを処理することで、本来の業務ができないこともあります。コンビニやスーパーが、「家庭のゴミ捨てないで」と注意喚起をしているにも関わらず、それを無視して、家庭ごみを捨てた場合などは、「威力業務妨害罪」に問われることもあります。

「威力業務妨害罪」は、威力を用いて人の業務を妨害すること(威力業務妨害罪)を内容とする犯罪で、刑法234条に規定されています。

また、このように不法投棄をする目的のみでコンビニやスーパーに立ち入ることは、店も容認するものではないので、建造物侵入罪(刑法130条前段)に問われる可能性もあります。

道端に痰や唾を吐く

道ばたに痰や唾を吐くことが、なにか犯罪になるのでしょうか。

まず、軽犯罪法第1条第26号は、「街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者」について、拘留又は科料に処すと規定します。また、各地の条例でも、痰や唾を吐くことが規制されている場合もあります。

例えば、「長浜市さわやかで清潔なまちづくり条例」はその第15条で、「市民等は、公共の場所等で、みだりにたんつばを吐き捨ててはならない。」と規定しています。

なお、痰や唾を路上で人に向かって吐きかけた場合は、刑法208条の暴行罪が成立する可能性があります。唾がついても、人がけがをすることは一般的に考えられませんが、判例ではこのような行為でも、人に対する有形力の行使は暴行罪が成立すると考えるのです。

また、衣服につくだろうと思いながら痰やつばをかければ、衣服を汚すことを認容しているので、刑法の器物損壊罪(261条)が成立する可能性があります。

飲み会で無理やり飲ませる

飲み会の席で、無理矢理お酒を飲ませることについて、なにか犯罪は成立するでしょうか。

無理やり何かをさせることについては、刑法223条が、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。」と規定しています。ですので、飲ませる際に、脅迫や暴行が用いられていると、強要罪が成立します。

また、酔いつぶすこと(急性アルコール中毒状態にすること)を狙って飲ませた場合は、刑法204条の傷害罪が成立します。また、飲まされたひとがそのまま亡くなった場合には、刑法205条の傷害致死罪が成立します。酔いつぶすつもりがなくても、飲んだ人が急性アルコール中毒で亡くなった場合は刑法210条過失致死罪が成立する可能性があります。

さらに、飲ませることを煽った人についても、現場助勢罪(刑法206条)が成立しますし、酔いつぶれている人を放置した人は保護責任者遺棄罪(刑法218条)が成立する可能性があります。放置した人が亡くなれば、保護責任者遺棄致死罪(刑法219条)が成立する可能性があります。

行列に割り込む

迷惑な割り込み行為になにか犯罪は成立するでしょうか。

軽犯罪法第1条13号は、

公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者

条文が長いので要約すると「威勢を示して、公共の乗物や、演劇その他の催し等に割り込みした者」について、拘留または科料に処すると規定します。乱暴な言動や威勢をしめしての割り込みは、軽犯罪法違反です。

また、条例で規制がある場合もあり、たとえば愛知県の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」2条4項は、「何人も、祭礼、又は興行その他の娯楽的催物に際し、多数の人が集まつている公共の場所において、故なく、人を押しのけ、物を投げ、物を破裂させる等により、その場における混乱を誘発し、又は助長するような行為をしてはならない」と規制します。

さらに、割り込みにより、その施設の正常な業務を妨害する場合は、業務妨害罪が成立する可能性があるでしょう。

買い物をせず、トイレだけを使用する

トイレの無断使用を禁じる店舗や、従業員専用トイレを勝手に使用した場合は、店が、そのような人の立ち入りは許容していないと考えられます。

裁判例は、違法な目的で建物に立ち入った場合に建造物侵入罪(刑法130条前段)の成立を認めることがあるので建造物侵入罪が成立する可能性があります。

酔って自転車を運転する

道路交通法第65条1項は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と規定します。

車両等とは、「自動車、原付、軽車両、トローリーバス」をいい、自転車は軽車両に該当(道路交通法第2条1項11号)するので、お酒を飲んで自転車を運転することはできません。

アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で自動車等を運転した場合(酒酔い運転)は、 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金の刑(道路交通法65条1項、同法117条の2第1項第1号)となります。

もっとも、酒気帯び運転は、 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が法律で定められています (道路交通法65条1項、同法117条の2の2第1項1号、道路交通法施行令44条の3)が、自転車の場合、酒気帯び運転違反は罰則の対象にはなりません。

しかし、たとえば大阪では、2015年3月11日に、自転車の飲酒検問が実施され、60人に対して口頭指導や警告が実際に行なわれました。自転車について、酒酔い運転の悪質な違反者が自動車運転免許証を所持していれば、免許の点数に寄らない行政処分を公安委員会も行うことができるとされており、免許の点数がひかれずとも、都道府県によっては、免停処分がされることがあります。

盗まれた自転車を発見し、そのまま乗って帰る

もともとは自分の自転車、持って帰っても罪にはならないと考える人は多いです。

たとえ、もとは自分の自転車でも、盗んだ人や、盗んだ人から転売された人の管理下にある自転車をそのまま乗って帰ってしまえば、持ち帰った元の所有者には窃盗罪(刑法235条)が成立します。転売された人は正規の所有者となっている可能性がありますし、窃盗をした犯人が持っている場合でも、日本では正式な手続きを経て取り戻すべきと考えられているのです。

また、誰かが管理しているような状態とは見られない状態でも、やはり勝手に持ち帰ってしまえば、占有離脱物横領罪(刑法254条)が成立します。いずれにしても、自転車が盗まれた場合は、すぐに警察に届け出て、自転車が発見された場合も、持ち帰るのではなく、警察に連絡するべきでしょう。

インターネットで悪口をまき散らす

デブ、ブス、バカ、むかつく…など悪口をインターネットで、まき散らした場合まず、侮辱罪(刑法231条)が成立する可能性があります。

侮辱罪は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」と規定されており、インターネットは、不特定多数の人が認識できる場といえますので、デブなどの悪口をまき散らせば、侮辱として成立するのです。

また、刑法230条は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」と規定します。それが真実でなくとも、「○○は不倫して離婚した」などの事実を書いて、名誉を傷つけた場合は刑法230条に基づき罰せられます。

また、悪口の内容がその人の商売に関わるものであった場合は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した」として、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります(刑法第233条)。

他人の個人情報を晒す

では、個人の住所、名前、職場などを掲載した場合はどうなるのでしょうか。

上記の場合とは違って、単に個人の住所や名前、職場を掲載した場合は「侮辱」でもないし、名誉を毀損したともいえず、犯罪は成立しません。

しかし、個人の情報はいわゆるプライバシー情報ですので、これが侵害されたことで被った損害(精神的損害も含みます)は、その相手に対して民事裁判で損害賠償請求をすることは考えられます。

自撮りのわいせつ画像を掲載する

自分の写真であれば、人に迷惑をかけないので、何も罪には問われないのでしょうか?

自分の画像・動画を拡散した場合でも、それがわいせつ性を有する物であれば、「わいせつ物頒布罪」となる可能性があります。

刑法175条は、

わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする(第1項)。有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする(第2項)。

と規定しています。

どのようなものが「わいせつ」であるかは「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反する」かどうかで判断されることになります。

なお、18歳未満の児童にわいせつな動画や画像を要求することは、それが個人トークでの送信要求でも児童ポルノ製造罪になり、3年以下の懲役刑か300万円以下の罰金刑になります。

まとめ

日常生活の中でついやってしまいそうな行為に犯罪が成立する可能性があることがご理解いただけたでしょうか。

このコラムを読んで、自分がうっかりやってしまったことが犯罪に該当するのではないかという不安をもった人もいるかもしれませんし、自分が困らされていた他人の行為に実は犯罪が成立するのではないかと気づいた人もいるでしょう。

とはいえ、犯罪が実際に成立するかは、具体的な行為の内容や、周囲の状況、行為者の年齢や状況によっても異なります。自分で判断するのではなく、何かお困りごとがあれば、ささいなことでも法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。