もし、家族がオレオレ詐欺で逮捕された場合、どのような罪になるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

オレオレ詐欺にどのように協力したか?

オレオレ詐欺は組織的に行われており、複数の人物が異なる役割を果たしています。
代表的なものとしては、被害者に電話を掛けて被害者を騙す「かけ子」、騙された被害者に接触して被害者からお金を受けとる「受け子」、騙された被害者が口座に振り込んだお金をATMで引き出す「出し子」などがあります。
これらの役割に応じて、成立する犯罪や軽の重さが変わることになります。

振り込み詐欺で逮捕されたら

オレオレ詐欺で逮捕された場合の刑の重さ

刑の重さとは?

オレオレ詐欺は、被害額が大きく、被害者の多くが高齢者であることなどから大きな社会問題となったこと、組織的な犯行であることから暴力団の資金源になっている疑いがあること、被害弁償がなされることが少ないことなどから、他の詐欺事件と比べても罪が重くなる傾向があります。

オレオレ詐欺の初犯で逮捕

オレオレ詐欺は厳罰化の傾向があるので、初犯であっても実刑になる可能性があります。
とくに「かけ子」の場合、オレオレ詐欺の犯行の中心的な役割を果たしたといえますし、「受け子」や「出し子」と違って「詐欺とは知らなかった」「詳しいことは知らない」といった弁解もできないので、実刑になる可能性が高いでしょう。

執行猶予を獲得することはできるのか?

「受け子」や「出し子」の場合、「かけ子」に比べると軽い罪になる傾向があります。
とくに、詐欺組織の上層部とのつながりがなく、オレオレ詐欺の全体像を把握せず、単に指示に従ってお金を受け取ったり、ATMから現金を引き出しただけというような場合には、執行猶予が付く可能性もあります。

アルバイトでオレオレ詐欺に協力していた場合

アルバイトとしてオレオレ詐欺に関与してしまった場合でも、逮捕される可能性があります。
なお、詐欺罪は故意犯ですから、犯罪の故意がなければ成立しないので、罪に問われることはありません。
もっとも、オレオレ詐欺が社会問題になり、広く知られている昨今の状況からは、お金を受け取るだけ、あるいはお金を引き出してくるだけの割のいいアルバイトと言われれば、何らかの詐欺行為の可能性に思い至るはずですから、故意がないとの主張は簡単には認められないでしょう。

オレオレ詐欺で逮捕されたらどうなるの?

勾留・勾留延長

オレオレ詐欺で警察に逮捕されると、そこから72時間以内に勾留請求されます。
勾留は原則10日間で、必要がある場合にはさらに10日間の延長が認められます。
オレオレ詐欺は組織的犯罪であり、複数の人物が関与しているため、事件の全容を明らかにするには時間がかかることが多いことから、通常は最初の10日間の勾留では捜査が終わらず、勾留が延長されます。

起訴・不起訴

最大20日間の勾留機関が満了すると、検察官は起訴するか、釈放するか(不起訴または処分保留とする)を決めなければなりません。
起訴されると勾留が自動的に継続し、保釈が許可されるなどの例外を除いて、裁判が終わるまで身柄を拘束されることになります。
不起訴または処分保留になれば釈放をしなければならないのですが、身柄拘束は事件単位に行われることになっているので、別の事件で身柄拘束をすることは可能です。
そのため、他の事件に関与した疑いがある場合には、捜査機関は別件についてあらかじめ逮捕状をとっておき、当初の事件の釈放と同時に別件で逮捕するという運用をしており、その場合にはまた一から身柄拘束が続くことになります。

接見禁止処分

勾留中は面会や手紙のやり取りができるのが原則ですが、証拠隠滅の恐れがある場合には、裁判所が弁護人以外の者との面会、手紙のやり取りを禁止する決定をすることがあります(接見禁止処分といいます)。
オレオレ詐欺は組織的な犯罪であり、逮捕されていない者も含めて多数の人物が関与していることから、口裏合わせなど証拠隠滅のおそれがあるので、接見禁止がつくことが多いといわれています。

オレオレ詐欺で逮捕されたが、釈放されるか?

逮捕後に釈放されるケースとしては、①不起訴または処分保留で釈放される場合、②起訴後、保釈が許可された場合、③執行猶予付きの判決で釈放される場合の3つが考えられます。
ただし、①については再逮捕の可能性があることは3-2.で説明したとおりです。
保釈が許可された場合、保釈の条件を守りさえすれば、学校や仕事に行くなどそれまで通りの生活をすることが可能になります。
執行猶予付きの判決で釈放された場合も、海外渡航が制限される場合があることなどを除いて、基本的にはそれまでどおりの生活をすることができます。

オレオレ詐欺で逮捕されたが、不起訴は狙えるのか?

広い意味での不起訴は「起訴をしない」ということで、具体的には①嫌疑なし、②嫌疑不十分、③起訴猶予の3つのいずれかに該当することをいいます。
起訴猶予は、犯罪が成立し、その立証も可能であるが、諸般の事情を考慮して起訴しないというものです。初犯の万引きなどをイメージすればわかりやすいと思いますが、あえて起訴するほどのことはないという判断です。
オレオレ詐欺の場合、検察は社会問題であり重大な犯罪と考えているので、たとえ被害者との間で示談が成立したとしても、起訴猶予になる可能性は非常に低いといえます。
したがって、不起訴を狙うには、被疑者の行為が詐欺罪の構成要件に該当しないことや証拠が不十分であることなどを理由に、被疑者に嫌疑がないこと、あるいは嫌疑が不十分であることを主張していく必要があります。

オレオレ詐欺で逮捕されたが、執行猶予は狙えるのか?

「執行猶予を獲得することはできるのか?」でも述べたとおり、執行猶予が付くこともないわけではありません。
執行猶予を付けるかどうかにあたって考慮される事情としては、オレオレ詐欺の過程で果たした役割、被害額、被害者の数など犯罪に関する事情のほか、被告人の年齢、家庭環境など被告人に関する事情、示談成立の有無などです。
とくに、オレオレ詐欺は被害者がいる事件で、一般に被害額も高額であるので、示談ができているかいないかは大きな判断要素になります。

オレオレ詐欺で逮捕されたが、示談はすべきなのか?

被害者との間で示談が成立したことは、当然、被告人にとって有利な情状になります。
ですから、少しでも刑を軽くしたいとか、執行猶予の可能性を高くしたいと考えている場合には、示談をすべきといえます。
また、示談が成立したことは、通常は被告人が罪を認めたことを意味しますから、証拠隠滅や被害者やその親族を脅迫するなどのおそれがなくなると考えられるため、保釈が許可される可能性が高くなるというメリットもあります。

まとめ

以上、オレオレ詐欺についてまとめましたが、いかがでしたでしょうか。
「受け子」や「出し子」の場合、若い方がアルバイト感覚で軽い気持ちでかかわってしまうことも少なくないので、オレオレ詐欺は決して遠い世界の話ではありません。
万一、親族などがオレオレ詐欺で逮捕された場合、早期の身柄の釈放や執行猶予を狙うのであれば、刑事事件に詳しい弁護士への相談・依頼を検討するといいでしょう。