お花見といえば桜のイメージがつきもの。お花見スポットとして有名なところでは、毎年場所取りも大変なことでしょう。ここでは、お花見の時に気を付けたい、やってしまいがちな犯罪行為について解説します。

場所取り自体が違法になることはあるの?

ここでは、お花見をする場所が公園等の公共の場なのか、そうでないのかについて分けて解説します。

公園等の公共の場である場合

公園等の公共の場である場合、場所取りが少人数の場所取りであるときには特に問題視されないかと思いますが、公園等の公共の場を特定の者が独占的に利用する場合には、都市公園法又は同法の委任受けた条例に基づく公園管理規定により、占有許可を得る必要があります。

占有許可を得ずに公園等の公共施設を占有した場合には、市町村等の公園管理者は行政代執行法により代執行を行い占有を排除でき(都市公園法第6条第1項、同法第10条、行政代執行法第2条)、当該排除行為に要した費用は占有者に対し負担させることができます(行政代執行法第5条)。したがって、このような場所の場所取りは場合によっては違法となります。

公共の場ではない場合

この場所は、公園等の不特定多数の者の利用を目的とされていない場所なので、当該場所の管理権者の許可を得る必要があります。許可を得て占有する場合には特に問題はありません。

他方、許可を得ずに当該場所を占有している場合には、たとえば、その土地が塀等で囲まれた場所であれば、その場所に立ち入る行為が建造物侵入罪(刑法第130条)を構成するおそれがあります。したがって、このような場所の無許可での場所取りは違法となります。なお、管理権者から退去を命じられたにも係らず、退去に応じなかった場合には不退去罪(刑法第130条)成立する可能性があります。

お花見で必要以上に場所取りしたら罰せられる?

お花見で必要以上に場所取りをする行為は、その場所を占有する許可を取っている場合や許可をとる必要がないものと認められる程度の場所取りである場合、ただちには違法にはなりません。ただし、トラブルの原因にはなります。

とはいえ、地方自治体もこの種のトラブルに頭を悩まされているのでしょうか、たとえば横浜市公園条例第6条第1項第6号では「競技会、展示会、博覧会、祭礼、集会その他これらに類する催しのため公園の全部または一部を一時的に独占して使用する」場合には市長の許可が必要となり、その許可範囲を超えた場合(たとえば、許可されていない範囲の場所取り、許可された期間を超えた場所取り)には、同条例第25条第3号により過料に処せられるのでご注意ください。

違法な場所取りを見つけたら勝手に撤去してもいい?

まず、違法な場所取りを発見した場合に撤去するような、私人が実力行使して違法状態を適法状態に回復させるようなことを自力執行といいます。

日本の法律の考え方では、国民の権利関係の安定を重視しているので、基本的にはこのような自力執行は認められておりません。ちょっと難しく言うと、罪が成立するためには、刑法等の法律に記載された行為を行い、かつその行為が違法で有責であると評価される必要があります。

仮に自力執行が認められる(=適法)なのであれば、自力執行の際に刑法に触れる行為を行ったとしても、その行為は違法ではないため罪は成立しないこととなります(このような行為・事由を違法性阻却といいます。)。たとえば、「違法」な場所取りに対し、占有しているブルーシートを引き剥がし、当該シート上の料理等を台無しにした場合には、器物損壊罪が成立します(刑法第261条)。また、当該自力執行の際に、場所取りをしている者に対し暴力を振るった場合には暴行罪(刑法第208条)が成立することになります。つまり、これらの行為については自力執行行為は違法性阻却事由とならないことを意味します。

桜の枝を折って持ち帰ったら逮捕される?

公園等の不特定多数人の利用が認められている場所の場合

このような場所で桜の枝を折る行為は、都市公園法により、国の設置にかかる公園の禁止行為として、第11条第1項第1号では、都市公園を損傷し、又は汚損することが挙げられ、同第2号では竹木を伐採し、又は植物を採取することが挙げられております。そして、同法第40条第1項で10万円以下の過料に処せられます。

他方、花を摘む行為についても、都市公園法第11条第1項第2号、同法第40条1項により、10万円以下の過料に処せられることになります。

そして、風情を楽しむために桜吹雪を見たくて木や枝を揺する行為についても、これにより木や枝が傷む程の行為で行われたのであれば、上記都市計画法第11条台1項1号の行為に該当し、同法第40条第1項で10万円以下の過料に処せられます。

公共の場ではない場合

この場所は特定の者の管理権が及んでいる場所ですので、そこに寄生している樹木は全て当該管理権者に占有に属する物であると認められます。その桜の枝を折る行為は、その管理権者の物を損壊したとして器物損壊罪(刑法第261条)が成立します。

次に、花を摘む行為にしても同様に管理権者の物を損壊したとして器物損壊罪が成立することになります。さらに、桜吹雪を見たくて木や枝を揺すった場合に、木や枝が傷ついた場合には同様に器物損壊罪が成立することになります。

さらに、この場所が都市公園法の適用のある公園であった場合には、上記都市計画法第11条第1項第1号及び第2号の行為に該当し、同法第40条第1項で10万円以下の過料に処せられます。ただし、実際に過料等に処せられるかについては、行為態様、損害の大きさ、結果の社会的な影響等の事情を総合的に判断してなされるので、行為自体が直ちにこのような刑に処せられるわけではありません。

お花見のゴミを置いて帰ったら逮捕される?

このような行為は、廃棄物処理法第16条に違反し、同法第25条により5年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に処せられます。

ここで、同法第16条の廃棄物とは、同法第2条第1項で「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)をいう」とされており、お花見のごみも同条の廃棄物に該当します。

さらに特段の理由がないにもかかわらず、当該廃棄物を置いて帰る行為は、同法第16条のみだりに捨てる行為に該当します。さらに軽犯罪法第1条第27条は「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者」は、拘留又は科料に処すると規定しているところ、お花見のごみを置いて帰る行為は、これに該当し、拘留又は科料に処せられます。

ただし、実際に拘留等の処分がされるかは具体的な事情に左右されますので、行為自体が行われたことにより直ちにこのような刑が処せられるわけではありません。

酔って羽目を外したら逮捕される?

騒ぐ行為について

酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律第4条1項「酩酊者が、公共の場所又は乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をしたときは、拘留又は科料に処すると規定しているところ、お花見の途中で酒によって、公共の場所で他のお花見客に迷惑をかける程度に粗野又は粗暴な言動で騒いだ場合」には、拘留又は科料に処せられるおそれがあります。

大音量でカラオケを行う行為

軽犯罪法第1条第14号「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者は、拘留又は科料に処すと規定しているところ、大音量でカラオケを行い、警官等の公務員の制止をきかずに継続したような場合」には、拘留又は科料に処せられるおそれがあります。なお、当該行為により公共の場所で他のお花見客に迷惑をかける程度に粗野又は粗暴な言動でカラオケを行った場合には、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律第4条第1項により拘留又は科料に処せられるおそれがあります。

川に飛び込む行為

軽犯罪法第1条第25号「川、みぞその他の水路の流通を妨げるような行為をした者、拘留又は科料に処すと規定しているところ、酒に酔って、川に飛び込み、水路等の流通を妨げる行為を行った場合」には、拘留又は科料に処せられるおそれがあります。

さらに、その態様が公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動に至るような場合には、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律第4条1項により拘留又は科料に処せられるおそれがあります。

桜の木に登る行為

都市計画法に規定する都市公園内において、桜の木に登り、それにより桜の木を傷つけた場合には、上記都市計画法第11条第1項1号の行為に該当し、同法第40条第1項により10万円以下の過料に処せられます。

また、その態様が公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動に至るような場合には、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律第4条1項により拘留又は科料に処せられるおそれがあります。

まとめ

以上のとおりですので、お花見で、はめを外し過ぎないよう社会人として最低限のマナーを持ちたいですね。また困ったら弁護士に相談したほうがよろしいかと存じます。