夫が覚せい剤で逮捕された場合に、家族はどのように動けばよいのでしょうか。突然、身内が刑事事件で逮捕されると、動揺してしまい、どうすればいいのかわからないこともあります。弁護活動を行うならば、覚せい剤の刑事事件に詳しい弁護士へ依頼を検討しましょう。

旦那(夫)が覚せい剤所持で逮捕されたら

逮捕後の流れ

警察に逮捕された場合、48時間以内に検察庁に送致され、そこから24時間以内に勾留されることになります。

覚せい剤所持で逮捕された場合の量刑

営利目的のない個人での使用、所持の罪は、10年以下の懲役と定められています。
覚せい剤の自己使用と、自己使用相当量の所持では量刑にほとんど差がなく、初犯であれば懲役1年6月、執行猶予3年程度になることが多いといわれています。
もちろん、あくまで目安であって、個別の事案ごとの事情によって、これより短くなったり、長くなったりすることがあります。たとえば、自己使用、所持にとどまらず、他人を巻き込んだような場合には、刑が重くなる可能性があります。
では自首をした場合はどうかというと、刑が軽減されることはありません。自首の効果としての「刑の軽減」とは、有期懲役の場合、上限・下限をそれぞれ2分の1にするということなのですが、覚せい剤の使用、所持は1か月~10年の懲役と定められているので、軽減をしなくても法定刑の範囲で適切な量刑を選択すればよいと考えられるからです。もっとも、自首が無意味なのではなく、自ら出頭したことが量刑をより短くするために有利な事情にはなるでしょう。
経歴も情状の一つであり、その意味で量刑に影響するとはいえますが、大きな影響があるとまでは言えないでしょう。

再犯で逮捕された場合の量刑

再犯の場合、執行猶予が付くことはまれで、懲役2年前後の実刑になることが多いといわれています。ただし、前回の裁判から10年以上経過していたような場合には、執行猶予が付くこともあります。

同居する家族が覚せい剤の罪で逮捕されるとガサ入れ(家宅捜査)される

覚せい剤に関連する罪で逮捕された場合、覚せい剤や覚せい剤を使用するための道具を隠し持っていないか調べるため、自宅を捜索(いわゆるガサ入れ)されます。

覚せい剤での逮捕後の面会

覚せい剤での逮捕は勾留されることがほとんど

覚せい剤に関する犯罪は、背後に密売人などが組織的に関与している可能性があります。そのような場合に逮捕後に勾留せずに釈放すると、それらの関係者に連絡を取り、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあります。 そのため、覚せい剤に関する事件では、逮捕に引き続いて勾留され、身柄拘束下で捜査が継続されることがほとんどです。

逮捕直後は家族でも面会することができない

逮捕されてから勾留されるまでの間は、弁護士以外は面会が認められません。たとえ妻や両親であっても例外ではありません。先に説明したとおり、逮捕から勾留までは最長で約3日間かかりますので、その間は面会ができないことになります。

覚せい剤の刑事事件の特徴

覚せい剤での逮捕は不起訴になることは難しい

窃盗や傷害など被害者のいる事件では、被害者と示談をすることで不起訴になることもありますが、覚せい剤のような被害者がいない事件で、しかも軽微な犯罪とは言えない事件の場合、不起訴になることは期待できません。

執行猶予が多い

初犯の場合、執行猶予付きの懲役刑が言い渡されることがほとんどで、裁判が終われば釈放されます。初犯でも営利目的(売人)の場合は執行猶予が付かないこともあります。

再犯率が非常に高い

覚せい剤はやめたいと思っても簡単にやめられるものではありません。
他の犯罪と比較しても、覚せい剤の再犯率は非常に高くなっています。平成21年版犯罪白書によれば、覚せい剤で執行猶予判決を受けた人のうち24.7%が、4年以内に覚せい剤の再犯で検挙されています。

勤め人の場合は会社から解雇処分され、家族に影響を及ぼす

交通事故やけんか(暴行、傷害)などであれば、逮捕されたとしても雇い続けてくれる会社はあるかもしれませんが、覚せい剤のような反社会性の強い犯罪の場合、ほぼ間違いなく解雇されてしまうでしょう。収入を絶たれてしまうので、本人だけでなく家族の生活にも影響を及ぼすことになります。

覚せい剤での逮捕で身柄を拘束されている期間

すでに説明したとおり、逮捕から勾留までに最長で3日間かかります。
勾留は原則10日間ですが、捜査の必要がある場合にはさらに10日間の延長が認められています。ですから、逮捕から起訴されるまで最大23日間、身柄を拘束されることになります。
さらに、起訴されてから第1回公判が行われるまで、早くても約1か月はかかり、その間、警察の留置場または拘置所で身柄拘束が続くことになります。

旦那(夫)が覚せい剤で逮捕されたときに家族ができること

接見禁止解除への動き

組織的な関与が疑われるなどの事情がある場合には、弁護士以外との面会、手紙のやりとりを禁止する接見禁止処分を受けることがあります。しかし、家族との面会が禁止されると、家族や仕事を今後どうするかなどについて本人と十分に話し合うことができませんし、身柄拘束を受ける本人にとっても、家族の様子がわからないことは精神的に大きな不安となります。 ですから、弁護士を通じて接見禁止の一部解除の申し立てをするといいでしょう。

保釈請求を行う

起訴された後は、保釈請求をすることが可能になります。覚せい剤の所持や使用は、覚せい剤そのものや尿の鑑定などによって証明することができるので、個人での使用や所持の場合には、保釈請求が認められることが多いといえます。

再犯を防ぐ環境を整える

裁判所が判決内容を決めるにあたって考慮する要素の一つに、再犯の可能性がどの程度あるかといったことがあげられます。再犯の可能性がなければ、刑務所に行くのではなく、社会内で更生の機会を与えようという方向になるのです。
そのためには、まず、覚せい剤に関係する者との交友関係を断ち切ることが必要です。
また、本人がやめたいという気持ちを持っていたとしても、簡単にやめられないのが覚せい剤の恐ろしさです。家族や職場など周囲のサポートが不可欠ですし、長い間覚せい剤を使用していたような場合には、専門的な治療、カウンセリングなどが必要なこともあります。
このような再犯防止のための適切な環境づくりをするには、薬物事案についての専門的な知識が必要になりますから、刑事事件に強い弁護士に依頼をするといいでしょう。

まとめ

夫が覚せい剤で逮捕されてしまった場合の対処についてご説明しましたが、いかがだったでしょうか。覚せい剤を本当に断ち切るためには、本人の意思だけでなく、周囲の環境づくりも重要であり、場合によっては専門的な治療、カウンセリングなども必要になります。刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼をすれば、単に裁判のことだけでなく、裁判が終わった後の更生についてもさまざまな助言をしてもらえますので、そのような弁護士を探すといいでしょう。