警察や検察が行う家宅捜索の目的とは。家宅捜索を受けたときに、どのように対処すればいいのか。詳しく見ていきましょう。

家宅捜索と家宅捜査の違い

マスコミの報道などで、「家宅捜索」という代わりに「家宅捜査」という表現が使われることがあります。本来、捜査とは、犯罪の証拠や被疑者の身柄を保全することをいいます。つまり捜査は、さまざまな証拠の収集や、被疑者の逮捕などの強制処分を含んだ幅広い概念です。捜索も捜査の一つで、一定の場所、物、人の身体について、物または人を発見するために行われる強制処分をいいます。捜索のうち、被疑者の自宅などを捜索する場合を、「家宅捜索」と呼んでいるのです。したがって、厳密には「家宅捜査」という表現は誤りといえます。

家宅捜索について

家宅捜索の目的とは

捜索は、物または人を発見することを目的に行われるものですが、被疑者の自宅には犯罪を証明するために不可欠な証拠が残されている場合があることから、このような決定的な証拠の発見を目的に、家宅捜索が行われます。

家宅捜索が行われるタイミング

法律上は、捜査段階においても、起訴された後の公判段階においても捜索をすることができます。ただし、検察官は確実に有罪の立証ができると判断した事件しか起訴しませんから、通常は捜査段階で捜索が行われ、証拠の収集を終えていることが多いでしょう。

家宅捜索には捜査差押許可状が必要

捜索は、強制処分であるとご説明しましたが、「強制」という意味は、裁判所の発付する捜索令状が必要ということです。ただし、捜索は強制的に探すことができるにとどまり、発見した証拠を強制的に入手するには、別に差押令状が必要になります。そのため、通常は捜索令状と差押令状を一括した捜索差押許可状が発付されます。捜索差押許可状には、被疑者・被告人の氏名、罪名のほか、捜索すべき場所、身体、物を特定すること、差し押さえるべき物を明示することが必要とされています。

家宅捜索で闇雲に差押えすることはない

上記で触れたとおり、捜索差押許可状には、差し押さえるべき物を明示しなければならないとされており、事件と無関係なものまで闇雲に差し押さえられるわけではありません。もっとも、特定の物を列挙した上で、「その他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件」という捜索差押許可状の記載も有効とされていますから、具体的に記載のある物以外でも差押を受ける可能性はあります。

差し押さえたものは、留置の必要がない場合は返還される

差し押さえられた物のうち、証拠として裁判所に提出される物については、裁判が終わるまで返還されないこともあります。また、所持すること自体が犯罪を構成する物(覚せい剤などの薬物など)や犯罪によって生み出された物(偽造された文書など)は、当然返還されません。これに対し、留置の必要のない物は返還しなければならないとされているので、必要のない物は、捜査中であっても返還されます。

いつ家宅捜索が行われるのか?

家宅捜索は突然やってくる

ほとんどの場合、予告なしに突然やってきます。予告をすると、捜索に着手する前に証拠を隠滅されてしまう可能性があるので、捜査機関としては当然の対応といえます。人の住居の捜索を行うには、住居主やそれに代る者(これらの者の立会ができないときは隣人、地方公共団体の職員)を立ち会わせなければならないと定められています。また、被疑者・被告人が立ち会いを求められることもあります。

家宅捜索は数時間程度で終わる場合が多い

捜索差押について、法律上は時間的な制限はほとんどありません。日出前、日没後に行うには、令状に夜間でも執行できることが記載されていなければなりませんが、日没前に着手した時は日没後でも継続することができるといった規定がある程度です。もっとも、一般的には、令状を執行して捜索に着手してから数時間で終わる場合が多いと言われています。

家宅捜索は拒否することができない

家宅捜索は拒否できない

捜索は強制処分であり、裁判所の令状が必要であると説明しましたが、強制ということのもう一つの意味は、裁判所の令状が発付された以上は拒否ができないということです。適法な捜索に抵抗し、物理的に妨害するようなことがあれば、本来捜査の対象となっている罪名とは別に、公務執行妨害罪に該当するおそれがあります。

家宅捜索が行われる前に検討すべき対処方法

何かしらの予兆がある

捜索は突然やってくるといいましたが、それでも何かしらの予兆があることが多いといえます。捜索には裁判所の令状が必要になりますが、裁判所は何の嫌疑もないのに令状を発付するようなことはしません。そのため、捜査機関は捜索の前に一定の捜査をして、証拠を収集しています。その過程で、被疑者に任意同行、任意出頭を求めたり、関係者の事情聴取をしたりしているので、家宅捜索を受けることを予測できる場合もあるのです。

適切な対応

捜索差押は、財産権や住居のプライバシーを侵害する強制処分です。また、何人もの捜査官が自宅に出入りして捜索すると、近隣住民にも捜査の対象となっていることが知られてしまうおそれがあります。ですから、できれば捜索を受けることのないよう、適切な対応をしなければなりません。捜索差押は、捜査機関が証拠を保全するために行うものですから、任意同行、任意出頭に応じ、取り調べにも協力的な態度を示すことも必要でしょう。被疑事実に間違いがない場合には、事実を認め被害者と示談するとか、証拠を任意に提出するなどによって、家宅捜索を回避できることもあります。

弁護士と相談して対策を取る

これまでご紹介したとおり、家宅捜索には何かしらの予兆がある場合が多く、その時点で適切な対応ができるかが重要になります。しかしながら、事情聴取への対応や被害者との示談を専門知識のない本人が独力で進めるのは難しいでしょう。犯罪の嫌疑をかけられた場合には、早期に弁護士に相談し、対応策を協議しておくことが望ましいといえます。

まとめ

家宅捜索についてご説明しましたが、いかがでしたでしょうか。刑事事件は一般の方にとってはなじみがないので、適切な対応をとらないと捜査機関の思うとおりに進行することになりかねません。ですから刑事事件に巻き込まれてお悩みの方は、刑事事件に詳しい弁護士への相談、依頼を検討するといいでしょう。