年末年始は事件が起きやすくなります。ここでは、お正月にうっかりやってしまいがちなことや、ちょっとした疑問について解説します。

子供のお年玉を使い込んでしまった…これって罪になるの?

正月にお子様に渡されるお年玉は一旦お子様の手元に渡された後に、親御さんが通帳などで管理することが多いと思います。このような場合、親御さんはお子様のお年玉を実質的には自由に処分できてしまいます。このように、子供のお年玉を親が預かり、これを勝手に使い込んでしまったとすれば、刑法の構成要件上、横領罪(刑法252条)に該当することになります。お年玉はあくまでお子様の所有財産に属するものであり、親御さんはその管理をお子様から法的には委託されているに過ぎないものですから、お年玉が「自己の占有する他人の物」に該当することになるためです。

横領罪ってどんな罪?逮捕された際の刑罰は?

もっとも、刑法の基本的なスタンスとして、家庭内の問題には立ち入らない、というものがあります。そのため、刑法244条が、親族間の犯罪に関する特例を規定しており、犯罪を免除することとしています。横領罪もこの条文を準用していることから、仮に、お子様のお年玉を親御さんが使い込んでしまったような場合であっても、刑法上罪に問われることはありません。

ただし、民法上では話が別です。有用の資、例えばお子様の学費などにお年玉を使ってしまった、というのであれば話は別ですが、一般にお子様のお年玉を使い込んだ、ということになれば、その親御さんはお子様の財産を管理する権利を喪失する可能性があります。民法835条は「父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。」と規定しており、この審判が下されれば、その親御さんは以後、お子様の財産を管理することができません。

拾ったお賽銭を貰ったら罪になるの?

お賽銭箱に入らず、落ちていたお賽銭を拾い、それをそのまま自分の懐に入れてしまうことについては、窃盗罪(刑法235条)、及び占有離脱物横領罪(刑法254条)の両方が問題になるといえます。

お賽銭が落ちていたのだから、そのお賽銭は誰のものでもない、という面を重視すれば、そのお賽銭は誰の占有にも属していないもの、ということになり、「……その他占有を離れた他人の物を横領した者」に該当する可能性があることとなり、占有離脱物横領罪の成否が問題になることになります。

もっとも、お賽銭はあくまで神社に対して、参拝している人が寄付する目的で支払っているものです。そして、お賽銭を拾うとすればその神社の境内、ということになるでしょう。そうすると、お賽銭は神社に占有がある、と評価することもできます。その結果、神社の占有にあるお賽銭を神社の意に反して行為者が取得することとなりますので、「他人の財物を窃取した者」として、この面を重視すれば窃盗罪の成否が問題になる、ということになるでしょう。 但し、いずれにしても、拾ったお賽銭の金額が小さければ、可罰的違法性がない、ということになる可能性は十分にあると思います。

また、遠くから投げられたお賽銭が例えばコートのフードに入ったような場合については、そのタイミングでは、拾った(フードに入った)本人に、窃盗罪であれ、占有離脱物横領罪であれ、いずれにしても故意(刑法38条1項)がない、ということになるでしょう。そのため、このタイミングでは刑法上の犯罪は成立しない可能性が高いと思います。

もっとも、家に帰ってこれに気付いた場合については、上記と同様に占有離脱物横領罪の成否が問題になる可能性があるのではないでしょうか。

お賽銭箱にお金以外を入れたらどうなる?

お賽銭箱にお金以外のもの、例えばごゴミや偽札などを入れることは刑法261条の器物損壊罪の成否が問題になると考えられます。

お賽銭箱は本来、神社において、参拝者のお賽銭を受ける(中に入れてもらう)目的で設置されているものです。そうすると、そのお賽銭を受けることそのものがお賽銭箱の機能、ということになります。お賽銭箱に本来の目的ではない、偽札やゴミを入れることは、その機能を害する、ということになります(その分のお賽銭が入らなかったり、その後、神社での仕分け作業が必要になることに注目することになるでしょう。)。

そのため、このような行為については、刑法261条の器物損壊罪が規定する「他人の物を損壊」した、と評価される可能性がある、ということになるでしょう。

お賽銭を人の頭に狙って投げつけたら罪になるの?

神職の元までお賽銭が届けば願いが叶うといった話や、烏帽子に向かってお賽銭を投げると良い、といったガイドの説明が話題になったことがありました。こういったことを行えば、場合によっては前の人、あるいは本殿で参拝している人、住職の方などにお賽銭がぶつかってしまうこともあるでしょう。こういった場合、刑法の構成要件の問題としては、その当たってしまった人に対する不当な有形力の行使、と評価することができます。その結果、被害者となってしまった方の生理的機能を害するか否かで暴行罪(刑法208条)、及び傷害罪(刑法204条)が成立する可能性があることになります。

ここでいう生理的機能を害するか否か、というのは、非常にあいまいな基準であり、裁判例においてもケースバイケースで判断されているところです。例えば、出血などの結果が伴った場合には傷害罪の成否が問題になることになります。逆に、女性の髪を切った、というだけでは、生理的機能を害していない、と判示している判例もあるところです。

また、仮に前の人や住職の方を狙った場合にはその行為についての構成要件的故意(刑法38条1項)も認められることになるでしょう(可罰的違法性については別途問題になり、不可罰、となることもあるでしょう。)。お賽銭を投げ入れようとして、たまたま前の人や住職にお賽銭がぶつかってしまったような場合については、構成要件的故意が認められない、と評価されることになる可能性が高いといえます。そうすると、暴行罪の結果しか生じていないような場合については、不可罰となり、傷害罪の結果が生じてしまっている場合には過失致傷罪(刑法209条1項)の成否が問題になることになります。

また、仮にこれらの行為により、住職の業務が妨害されるとすれば、「威力を用いて人の業務を妨害した者」と評価され、威力業務妨害罪(刑法234条)が成立する可能性もある、ということになるでしょう。

しめ縄や鳥居にお賽銭を投げて刺さったら罪になるの?

しめ縄や鳥居等にお賽銭を投げ、そこに刺さったらいいことがある、等と評判になっている場所があるようです(例えば、出雲大社のしめ縄、厳島神社の鳥居等がターゲットになっているようです。)。

もちろん、そういう話題があれば、乗っかってみたい、ご自身もその願いを叶えたい、と考える人が少なくないことは想像に難くありません。もっとも、それが当然に許されるかというとそんなことがないことには注意が必要です。神社などからすれば、このような参拝人の行為を当然に望んでいるわけではありません。場合によっては、しめ縄や鳥居がダメージを負ってしまうことも考えられます。

刑法261条は器物損壊罪を規定しており、その構成要件は「他人の物を損壊」したこと、です。しめ縄や鳥居がダメージを受けるとすれば、明らかにこの「他人の物を損壊」、つまりはその効用を害していることに該当することになりますので、(程度の問題として可罰的違法性は別途問題にはなるでしょうが)器物損壊罪の構成要件に該当してしまうことになるでしょう。また、軽犯罪法違反になる可能性もあると考えられます。

今回例示したように文化財等に指定されるようなものについては、効用が非常に大きいと評価されやすいといえますので、特に、「他人の物を損壊」に該当する可能性が高くなるといえますし、その物件の要保護性から可罰的違法性も充たす可能性が高くなると考えられます。また、別途条例などで規制があれば、その条例違反、という形になる可能性もあることに注意が必要です。

〇〇に小銭を投げて乗ったら願いが叶うと噂に…やってもいい?

賽銭箱以外の場所、例えば、神社の池や池の中にある岩などに小銭が投げられている光景を目にすることは少なくありません。このような行為が当然に許されているかといえばそうではなく、犯罪に当たる可能性があることに注意が必要です。もちろん、神社などが、当該池や岩について「乗せることができれば願いが叶う。」「投げてみよう。」といったように、許容しているのであれば問題はありません。

しかし、本来、池等はお金を投げ入れることが想定されているものではありません。当然、神社側からすれば余計な清掃費用等も発生することになります。また、池等はその景観を維持することに価値がある場合もあり、そうであれば、小銭を投げ入れる、といった行為はその景観を害しかねません(神社の財産を害していることにつながりかねません。)。

神社の余計な仕事を増やす、という意味では、「威力を用いて人の業務を妨害した者」として、威力業務妨害罪(刑法234条)が成立する可能性があり、景観を害する、という意味では、その池の効用を害している、と評価することもでき、「他人の物を損壊」と評価できる可能性もあるでしょうから器物損壊罪(刑法261条)が成立する可能性がある、といえるでしょう。

初詣なう…SNSに写真をアップしたい!

初詣等は当然多くの人が訪れます。そこで写真を撮れば、意図していない人などが映り込んでしまうことも少なくありません。では、他の人が映り込んでしまった写真をインスタグラムやfacebookといったSNSに投稿することに問題はないのでしょうか。

まず、刑法的な意味で犯罪になるか、と言われると犯罪は成立しない、というのが回答になろうかと思います。ここで問題になるのは肖像権やプライバシーですが、こういった権利は憲法13条で規定されている幸福追求権に基づいて認められる権利であり、そもそも相対的(人によって保護領域が異なる権利)な権利であるため、刑法上、規定することができていません(端的に言えば、法の整備が追い付いていません。)。もっとも、肖像権やプライバシーの侵害ということになれば民事上の責任追及がなされる可能性はあります。この場合、それぞれの権利の侵害、と認められれば、掲載の差止めやそれに伴う損害賠償請求が成立する可能性がある、ということになるでしょう。

その場合の基準ですが、ケースバイケースだとは思いますが、民法の不法行為(民法709条)で、違法と評価されるのは、被害者の受忍限度(耐えられるかどうか)を超える場合、とされていますので、その写真により、その個人が特定できるかどうか、が一応のメルクマールになるのではないか、と思います。また、ご自身ではなく、その被写体がメインになってしまっているような写真であれば、より肖像権やプライバシーの侵害、と評価される可能性は高くなる、といえるでしょう。念には念をで、そのような写真をSNSにアップする場合には、意図していない個人が特定されないような写真を選ぶか、他人の顔にボカシを入れる、といった工夫をしておくのが安全策といえます。

他人が書いた絵馬の写真をアップしたら罪になるの?

神社等で絵馬を写真に撮る行為はよく見かける行為です。これがご自身の絵馬である場合には何ら問題はありません。これが、他人の絵馬であり、かつそれをインスタグラムやfacebookといったSNSにアップする行為が当然に許されるかどうかは別問題です。

特に実名をアップしてしまう行為は、プライバシーの侵害につながりかねません。プライバシー侵害となれば、その行為は民法709条が規定する「不法行為」、と評価される可能性があります。その結果として、写真の掲載の差止めや損害賠償請求がされる可能性がある、ということになります。もっとも、絵馬であればそもそも公共の場に絵馬を書いた人が公開しているのですから、ほとんどの場合、受忍限度内、と評価されることになるのではないでしょうか。

これが一般人ではなく、著名人であるような場合には、「公人」と評価され、その結果、更に不法行為が成立する可能性は低くなるでしょう。もっとも、住所などまで記載されているような場合については、被侵害利益が大きくなってしまいますので、受忍限度を超え、不法行為と評価される可能性は高くなる、ということになるでしょう。

なお、当該写真のアップロードに際して、プライバシー侵害となりうるような情報が含まれていることに気づいていたか、気づかずにアップロードしてしまったか、は結果には大きく関係しません。民法709条は「故意」・「過失」の両方について、不法行為が成立することを定めている条文であり、気づいている、いない、というのはこの点の評価にのみ関わる問題であるためです。いずれにしても、他人の絵馬が写真に写ってしまっているような場合については念のため、当該絵馬についてはボカシを入れる、といった工夫をしておくべきです。

絵馬で犯罪予告したら罪になる?

絵馬に「●●を爆破する。」「●●を殺害する。」といった犯罪を予告する内容を書き込むことは、その被害者の「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」した、と評価されることになる可能性があることになるため、当該被害者に対する脅迫罪(刑法222条)を構成する可能性があります。

また、当該絵馬に具体的な犯行日時や場所まで記載され、それに基づき何らかの対応を被害者や警察が取らざるを得なくなったような場合については、警察や被害者となる神社などの通常業務に支障が出るような形で、その業務を妨害していることになる可能性(「威力を用いて人の業務を妨害した者」に該当する可能性)があり、威力業務妨害罪(刑法234条)、実際に加害者が何もするつもりがなかったような場合については、同様に警察や神社などに対して、「偽計(※端的に言えば、嘘のことです。)を用いて……業務を妨害した」と評価される可能性があり、評価されれば、偽計業務妨害罪(刑法233条)の構成要件に該当することになるでしょう。

もっとも、単に「爆破したい。」「爆破されますように。」等と抽象的に破壊願望(のようなもの)を書いているに留まる場合については、具体的に害悪の内容が特定されているとは言えず、これだけで刑法上の犯罪が成立することになる可能性は低いといえます(もちろん、その場所についての業務妨害罪が成立する余地は残りますが・・・。)。

お金を払わずにおみくじを取ったら

多くの神社では、おみくじは、引きたい人がお金を支払いおみくじを引く形態になっています。そこに、誰かが立っていて本当にお金を支払っているかを監視していたり、お金を支払わないとおみくじが引けない、といったことはあまり見かけるものではありません。

しかし、だからといって、お金を払わずにおみくじをとるのが適法になるわけではありません。仮に神社がおみくじを無料で取ることを許容しているのであれば、何ら罪にはなりません。しかし一回●円、といった形で規定され、それを認識している以上、神社にそのおみくじの占有はあるといえ、かつ、おみくじを引く人はその対価を支払う義務を負っている(監視などがなくても勝手にお金を支払わずにおみくじを引くことを神社が許容しているものではない。)、といえます。これに反し、お金を支払わずにおみくじを引く、ということは、刑法235条の窃盗罪の構成要件(「他人の財物を窃取した者」)に該当することになります。要は、スーパーなどで万引きをするのと刑法上の取扱は同じ、ということになるでしょう。

別の家の年賀状が間違って届いた…放っておいていい?

近年、年賀状の配送間違えにとどまらず、配送業者が年賀状を配送せずに廃棄したりする問題が起きています。これらは、刑法上の器物損壊罪(刑法261条)に該当するのはもちろん、配送中であれば郵便法違反となる可能性があり、同法77条は、「会社(郵便局)の取扱中に係る郵便物を正当の事由なく開き、き損し、隠匿し、放棄し、または受取人でない者に交付した者は、これを3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と規定していますので、この罪に問われることになります。これとは別に民事上の責任(民法709条)、社会上の責任(当該企業の信頼の低下)を負ってしまうことになります。

これに対して、個人の家に配送された郵便物については郵便法77条の「取扱中」ではないので、郵便法が問題にはなりません。
もっとも、これを放っておくことは場合によっては、誤配された年賀状も「信書」に該当することから、「他人の信書を隠匿した者」として、信書隠匿罪(刑法263条)に該当してしまう可能性があることになります。また、これとは別に、誤配された年賀状を破棄してしまえば、その年賀状の効用を害した、として別途器物損壊罪(刑法261条)に該当する可能性があります。

誤配された年賀状に対して放置したり、遺棄することはこのような罪に問われる可能性があることになりますので、大人しく、郵便ポストに再度投函し、郵便局に再配達を促すことがベストの選択肢でしょう。また、仮に誤配された年賀状でお年玉が当たってしまった場合、これを得てしまうと横領罪(刑法252条)が成立してしまう可能性があります。あくまで、当該年賀状の持ち主は本来の配送先の人であり、誤配された人ではないため、誤配された人にとって自己が占有する他人の物であり、このお年玉を交換してしまうことは不法領得の意思の発現行為、ととらえることができるためです。

まとめ

このように、お正月の期間で何気ない行為であっても、刑法上の犯罪、あるいはそれに至らなくても民事上の責任追及をされる可能性がないとは言えません(多くの場合、可罰的違法性がない、と評価され、実際に責任追及される可能性は低いとは思いますが・・・。)。万が一、何かしてしまい、不安に駆られるようなことがあれば、法律の専門家である弁護士に一度相談し、どのように対処するのが適切なのか、適切なアドバイスを求めるようにしましょう。