少年事件での面会は、様々な取り決めがあります。保護者や裁判官などとの面会はどのような決まりがあるのか見ていきましょう。

鑑別所における少年との面会

付添人が少年との面会で行うこと

少年事件では、弁護士が付添人として活動します。
少年事件において少年の処分を決めるうえで考慮されるのは、大きく分けて非行事実(犯罪事実)の存否と、要保護性の有無、程度です。
要保護性という言葉は聞きなれないかもしれませんが、①将来、再非行の可能性があるか、②家庭裁判所が保護処分をすることがふさわしいか、③矯正教育によって再非行を防ぐ可能性があるか、を考えるとされています。
少年との面会では、付添人の立場、役割を説明したうえで、非行事実や要保護性に関連することがらについて聞き取りをします。成人の刑事事件と比較すると、少年自身の資質や家庭環境などが要保護性との関係でより重要になります。
付添人の面会には、施設の職員の立ち会いはなく、時間の制限もないので、時間をかけてじっくり話を聞くことができます。

保護者などとの面会

付添人が保護者や親族に積極的に面会して話を聞く

要保護性を把握するためには、保護者や親族とも積極的に面会して話を聞くことが必要です。それによって、家庭環境や交友関係など、少年自身からは聞けなかったことを知ることができる場合もあります。通常は付添人の事務所で面会をすることが多いのですが、少年の実家を訪問することで、家庭環境などについて思わぬ発見をすることもあります。

調査官との面接・意見交換

付添人調査官に面接することが不可欠

家庭裁判所には、少年の資質や家庭環境などを調べるために調査官という職員がいます。調査官は、少年や保護者と面会したうえで、裁判官に少年の処分についての意見書を提出します。
ですから、付添人としては、調査官と面接し、意見交換をしたり、調査官の調査が及んでいないことがらを報告したりして、調査官の意見を付添人の意見と一致するよう働きかける必要があります。

鑑別技官との面会・意見交換

鑑別所には、鑑別技官という職員がいて、少年の内面や行動についての観察を行い、鑑別結果通知書という文書にまとめて、裁判所に提出しています。具体的には、知能テストや心理テストなど少年の内面の分析や、鑑別所内でどのように過ごしているかといった日常の行動の分析が行われているので、鑑別技官との面談で、少年自身が自覚していない新たな発見をすることもあります。

裁判官との面会・協議

裁判官に正しい認識を持ってもらう必要がある

成人の刑事事件と異なり、裁判官は、審判前に記録を精査しており、審判前にある程度の心証を固めています。
ですから、付添人としては、裁判官とも面会し、裁判官に非行事実、要保護性について正しい認識を持ってもらうことが必要です。
また、少年審判は、進行や証拠調べについて法律で詳細には定められておらず、裁判官の裁量にゆだねられている部分が多いという特徴があります。進行や証拠調べについての要望があれば、面会の際に裁判官に伝える必要があります。
例えば、少年審判では裁判官から少年に質問をし、その後に付添人から質問をするのが一般的ですが、少年の性格上、いきなり裁判から質問されても委縮してきちんと答えられないおそれがあるような場合には、先に付添人から質問させてもらえるよう申し入れをすることがあります。また、要保護性の立証との関係で審判に保護者以外の親族や第三者を出席させたい場合には、事前に裁判官に伝える必要があります。

被害者への謝罪・示談交渉

少年が被害弁償を行うことはできない

被害者のいる非行事実については、付添人が少年・保護者に代わって被害者への被害弁償・示談交渉を行います。少年自身が被害弁償をすることはできませんが、手紙などで謝罪することが必要です。
謝罪したことや示談が成立したことは、少年や保護者が少年の行為の重大性を認識し、被害者の受けた被害と真摯に向き合った結果といえますので、要保護性の判断の上で考慮されます。

付添人意見書の提出

早めに意見書を提出することが必要

付添人も、少年の処遇に対する意見書を裁判所に提出します。時期の制限はありませんし、回数の制限もないので、早めに提出することが必要でしょう。調査官と面談をしても付添人と調査官の意見が食い違うような場合には、調査官の意見書に対する反論を追加で提出する必要があります。
少年が非行事実を争っている場合には、早期に審判で非行事実を争うことを伝えるとともに、捜査記録以外に少年に有利な証拠があれば、証拠調べをするよう要望することが必要です。

鑑定留置中の付添人活動

付添人が得た情報を提供する

鑑定留置とは、被疑者・被告人に対し、精神障害により刑事責任を問えない可能性がある場合に、被疑者・被告人の精神・心身の状態を調べるため、病院などの施設に身柄を拘束することを言います。少年の場合でも、刑事責任能力に疑問がある場合には、鑑定留置が行われます。
鑑定留置が行われると、鑑定医が行為当時の精神状態について鑑定をすることになるのですが、その際、付添人がそれまでに得た情報を鑑定医に提供することで、より正確な鑑定が行われることが期待できます。

処分に不服がある場合

高等裁判所に2週間以内に抗告をすることができる

保護処分に不服がある場合には、「抗告」という不服申立ての制度があります。
決定のあった日の翌日から2週間以内に、高等裁判所あての抗告申立書をもとの裁判所に提出することが必要です。
抗告ができる理由は法律で定められており、

  • ① 決定に影響を及ぼす法令違反(法令違反がなければ異なる決定になっていたであろう場合)
  • ② 重大な事実誤認(非行事実についての事実誤認)
  • ③ 処分の著しい不当

のいずれかに該当する必要があります。

抗告審は、基本的に書面審査で、期日が開かれることはありません。
ですから付添人から積極的に裁判官との面談を求め、抗告理由について説明したり、新たな証拠の取り調べを求めたりすることが必要になります。

抗告に理由がないと判断されると、抗告棄却の決定がなされます。
抗告棄却決定に対しては、最高裁判所に抗告することができます。これを再抗告といいますが、再抗告ができるのは、

  • ① 憲法違反
  • ② 憲法解釈の誤り
  • ③ 最高裁判所または控訴裁判所である高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと

に限られます。

少年が逆送された場合

積極的に立証する必要がある

裁判所は、つぎの場合には、事件を検察官に送致します(一般に「逆送」といいます)。

  • ① 本人が20歳以上であることが判明したとき
  • ② 刑事処分を相当と認めるとき
  • ③ 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件で、行為時に少年が16歳以上であったとき

逆送を受けた検察官は、起訴できるだけの犯罪の疑いがあるときは起訴しなければならないとされており、以後は成人の刑事事件と同様の流れで進みます。したがって、実刑判決を受ければ、少年院ではなく少年刑務所に収容されることになります。
弁護人としては、未成年者の可塑性(人格の変化のしやすさ)、更生の可能性を積極的に立証し、刑罰よりも社会内での更生の機会を与えるのがふさわしいと主張していく必要があります。

まとめ

以上のとおり、少年事件の面会、付添人の活動についてご紹介しましたが、ご理解いただけたでしょうか。付添人の活動は多岐にわたるもので、審判の結論にも大きな影響を与えることも少なくありません。万一、子どもが少年事件の当事者になってしまった場合には、弁護士に相談をするといいでしょう。