未成年の犯罪については、一般的に「少年事件」と呼びます。成年の刑事事件においては、行った犯罪に対して刑罰を課すことが目的になりますが、少年事件については、教育的・福祉的目的が重視されています。

少年が逮捕・勾留された場合

まず、少年も逮捕・勾留される場合があります。この場合、成人の場合と同様、任意同行の段階では、少年を逮捕、勾留しないように弁護活動を行います。具体的には、保護者による監督を約束したり、呼び出しがあった場合は、速やかに出頭すると約束をしたり、逮捕、勾留されると学校に通えなくなるなど、少年にとって不都合が生じることを主張していくことになります。

逮捕、勾留されなければ、いわゆる「在宅事件」として扱われます。少年が逮捕されてしまったら、勾留請求がなされないように弁護活動を行います。

少年の場合、少年法第3条3項に、検察官は、やむを得ない場合でなければ、裁判官に対して、勾留を請求することはできないと規定されています。身柄拘束の少年に対する影響を考えれば、勾留されることは避けたいところです。そこで、付添人としては、裁判官や検察官に対して、罪証隠滅や逃亡のおそれがないこと、保護者が身元の引き受けを約束していることはもちろんのこと、少年であり、原則、身柄の確保は、少年法の理念に反することや、学校に行けなくなるなど、少年にとって不都合があることなどを強く主張し、勾留請求を裁判官が認めないよう、付添人活動をします。

少年も捜査関係者による取調べがおこなわれますが、少年は、手続きの意味がわからなかったり、取調べで話したことが先々の処遇に対して、どのように影響するか、よくわかっていません。従って、例えば、黙秘権とは何かを説明したり、少年事件の手続きの流れやどのような処分があるかを説明し、少年の供述が処分にどう影響するかをしっかり説明することが重要です。特に、身柄が拘束されている少年は、取調べ時、捜査機関に誘導されて供述しがちです。付添人は、そのようなことがないように少年に注意をし、そのような取調べが行われていることがわかったら、速やかに捜査機関に対して誘導的な取調べを止めるよう要請をすべきです。

家庭裁判所に送致され、観護措置にならないようにするための付添人活動

家庭裁判所送致前から付添人として活動をしている場合、特に少年が逮捕・勾留されているようなときには、家庭裁判所送致後、24時間以内に観護措置決定手続きがとられるので、鑑別所収容を避けたいのであれば、家庭裁判所に送致される時期を把握することが必要です。

家庭裁判所送致の日は、通知等がなされるわけではないので、付添人としては、警察等に問い合わせるなどして、送致の日を確認する必要があります。

送致日が判明したら、できれば保護者と一緒に家庭裁判所に行き、まず、付添人選任届を提出します。付添人及び保護者が観護措置決定手続きに立ち会えるかどうかは、基本的に裁判官の裁量に委ねられており、少年の処遇決定に付添人及び保護者の意見が必要であることを裁判所に上申し、立会の必要性を訴えます。

なお、立ち会った際の意見陳述のポイントとしては、以下のような点になります。

  • 観護措置の究極の目的が身体確保にあることから、身体確保(調査や審判への出頭)の保証をすること(この点で、保護者の動向が必要です。)
  • 鑑別の必要がないということ(非行事実に及んだ原因が明確で、その対処方法があること)
  • 鑑別所に収容されることになった場合の不都合性(出席日数不足による留年や退学の処分のおそれ、無断欠勤又は欠勤の長期化による解雇等)

審判までに付添人が行う活動

家庭裁判所は、受理した事件について、審判に先立って調査を行います。この調査を行うのが家庭裁判所調査官で、調査官は、調査を行い、審判にあたって、裁判官に調査結果と少年の処遇について意見を行います。ですから調査官の調査は、非常に重要です。 審判までの期間が限られていること、審判は通常1回しか行われないこと、少年の処遇がすぐに決まることなどから、審判までの付添人の活動は大変重要になります。付添人が審判までに行う活動は、以下のとおりです。

進行協議

重大事件や否認事件等で、審判期日を複数回入れる必要がある事件においては、家庭裁判所への送致後、速やかに、裁判官・調査官とで進行協議を行う必要があります。仮に裁判所から進行協議をしたいという連絡がなければ、付添人の側から進行協議を申し入れます。

記録の閲覧・謄写

少年事件の記録には、法律記録と社会記録があります。法律記録とは、捜査機関が作成・収集して家庭裁判所に送付する送致書、その他の書面と家庭裁判所送致後に家庭裁判所が作成する審判の記録等を綴ったものです。

社会記録とは、調査官が行う社会調査や鑑別所で行う鑑別の結果を記録した書面を中心とするもので、少年の要保護性判断の資料になるものです。法律記録については、付添人は原則として閲覧・謄写が認められます。なお、謄写する場合でも、念のため原本の閲覧は欠かすべきではありません。どの部分が謄写不許可になっているかについて、書記官はわざわざ教えてはくれないので、付添人が確認するしかありません。

社会記録に関して、付添人は閲覧できますが、謄写は認められない扱いが一般的です。従って、付添人は、必要な個所をメモする必要があります。

鑑別所に収容されることになった場合の不都合性(出席日数不足による留年や退学の処分のおそれ、無断欠勤又は欠勤の長期化による解雇等)