逮捕と書類送検はよく聞く言葉だと思いますが、この二つの違いを知らない人も少なくないでしょう。そこで今回は逮捕と書類送検の違いについて詳しく見ていきましょう。

逮捕とは

逮捕とは、短期間被疑者の身柄を拘束する手続きをいいます。逮捕による身体拘束期間は最大で72時間です(刑事訴訟法第205条第2項参照)。この72時間の間に、検察官送致(逮捕から48時間以内、同法第203条第1項)と勾留請求もしくは釈放(いずれも検察官送致から24時間以内、同法第205条第1項・第2項)が行われます。

身柄付送検とは

逮捕事件の検察官送致においては、書類・証拠物及び被疑者の身柄とともに、事件を検察官に送致しなければなりません(刑事訴訟法第203条第1項)。これを身柄付送検といいます。

なお、書類の例としては、供述調書や実況見分調書、捜査報告書などです。また、証拠物の例としては、犯行に使われた物や被害物品などです。

書類送検とは

書類送検はマスコミ用語であって、法律上の用語ではありません。法律上の手続きとして説明するのであれば、「逮捕されていない被疑者に関する事件(在宅事件)について、書類・証拠物とともに検察官に送致すること」となるでしょう。

身柄付送検と書類送検の関係

法律上の規定の仕組みから説明すると、刑事訴訟法第246条本文は「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。」と規定しています。これがいわゆる書類送検として行われる手続きです。そして「法律に特別の定のある場合」に該当するものとして、同法第203条第1項の身柄付送検があるのです。

また両者の違いとしては、身柄も含めた送致か否かという点の他に、送致までの時間が挙げられます。書類送検の場合は捜査をしたときは速やかに検察官送致を行わなければならないとされており、特に明確な時間制限があるわけではありません。他方で身柄付送検の場合、身体拘束を伴っているため、被疑者の権利を不当に侵害しないよう、逮捕時から48時間以内というより厳格な時間制限が課されているのです。

警察が逮捕した場合でも、釈放したら書類送検を行わねばならない

警察が捜査した事件については、原則としてすべて検察官へ送致されることになっています。これを全件送致の原則といいます。そして、この全件送致の原則から、被疑者を逮捕している身柄事件の場合は「身柄付送検」がなされ、被疑者を逮捕しない在宅事件の場合は「書類送検」がなされるのです。

このように、書類送検は在宅事件の場合に行われる手続です。そのため、警察が被疑者を逮捕した場合でも、検察官送致前に被疑者を釈放したのであれば、その時点から在宅事件とされ、書類送検として検察官送致が行われることになります。

まとめ

このように逮捕は「身柄付送検や勾留の前段階に、被疑者の身体を拘束する手続」であるのに対して、書類送検は「検察官送致時に被疑者の身体拘束がない場合に、書類・証拠のみを伴って行われる送致手続」であるといえます。こうみると、両者では、手続きの段階自体違うといえます(大きく、「逮捕・身柄付送検」と「逮捕せず・書類送検」という2パターンがあることになります)。

どちらにせよ、警察官が被疑事件について捜査をした場合は、原則として検察官送致が行われ、検察官によって終局処分(起訴・不起訴など)がなされることになります。そのため、「刑事事件の捜査が正式に行われているようだが、逮捕はされていない」という場合であっても、後に起訴される可能性がありますので、そのような状況にある人は終局処分がなされる前の段階から弁護士に相談することも考えるべきでしょう。