フリーランスの人が交通事故の被害者となった場合、どのように休業損害を請求することができるのでしょうか。順番に見ていきたいと思います。

フリーランスの休業損害はどうやって計算するの?

フリーランスの休業損害の計算方法

フリーランスで仕事をしている人は、勤め人と異なり、毎月決まった収入があるわけではありません。固定給ではないため収入は月ごとに変動し、場合によっては月ごとの収入に相当大きな変動があることもあります。

実務では、勤め人であれば事故前3か月程度の期間の給与額から日割りで1日当たりの収入を算出し、それに実際に休業した日数を掛けるという方法で休業損害は算定されています。

しかし、フリーランスの人の場合には収入の変動が激しい場合もあるので、これと同じように休業日数を算定すると、事故があった時期によって休業損害額が大きく変わってしまいます。例えば、それまでは毎月多額の収入があったのに、たまたま事故前の一定期間だけ収入が少なかった場合には休業損害額は低くなり、逆にそれまであまり収入がなかったのに事故前の時期だけ多額の収入があった場合には休業損害額は高くなって、事故がいつ起こったかという偶然の事情で休業損害額に大きな差が生ずる可能性があります。

したがって、実務では、フリーランスの人の休業損害については勤め人とは異なる扱いがなされています。

休業損害の計算式

休業損害を算出するには、次のような計算式が用いられます。

1日当たりの基礎収入 × 休業日数 = 休業損害

この「基礎収入」、「休業日数」の算出方法について以下に説明して行きましょう。

フリーランスの休業日数ってどう出すの?

休業損害はいわゆる逸失利益の一種で、本来なら得られたはずの収入を事故によって得ることができなかったことを損害と評価して加害者に賠償を求めるものです。したがって、一般的には現実に仕事ができなかった日数を休業日数とすることになります。

ただ、勤め人の場合には仕事を休んだ日数は勤務先に作成してもらった休業日数証明書で割合簡単に証明することができますが、フリーランスの場合には雇い主がいるわけではありませんから、そのような証明書をもらうことはできません。そのため、他の証拠で休業日数を証明することになりますが、利用できる証拠はケースによってさまざまです。

業務日誌などを付けていればその記載、病院のカルテや診断書などの記載、 受注先とのメールやFAXなどによるやり取りに事故により仕事ができない旨の記載があればその記載など、ケースによって利用できるものを探して証拠として利用することになります。したがって、事故に遭った後は、仕事を休んだことについて何らかの形で記録を残すことを心掛けるとよいでしょう。

フリーランスの基礎収入って、どうやって計算するの?

先ほども触れたとおり、勤め人と異なり、フリーランスの場合には収入には変動があります。また、給料を貰っている訳ではありませんので、毎月の給与明細などもありません。

そのため実務では、フリーランスの人の場合には、事故の前年の確定申告書に記載された申告内容をもとに休業損害を算定する扱いが行われています。申告書の記載をもとに、売り上げから経費を差し引いた金額を基礎収入として扱っていくことになります。

なお、年度による収入の変動がかなり大きいような場合には、事故の前年だけでなく、事故前の数年間(3年程度)の確定申告書をもとに平均を取って基礎収入を算定することもあります。

また、フリーランスの人の中には、申告額と実際の収入額が異なる人もいます。節税などのために経費を過剰に申告するようなケースがこれに当たります。理屈で言えば、税金の申告と損害額の算定は別の問題ですから、申告額と実収入額が異なるのであれば実収入額によって休業損害を算定すべきことにはなりますが、実際には申告額と異なる収入によることは難しいでしょう。裁判例でも、申告額と異なる収入によることを否定するものが多くなっています。

確定申告していない場合はどうしたらいいの?

開業間もないために前年にはまだ確定申告をしていない、前年に病気などのために仕事ができず申告していないなど、場合によっては確定申告に関する書類を収入の証明として利用することができないケースがあります。そのような場合には他の手段で収入を証明することになります。例としては、帳簿の記載、取引先からの領収書、取引先の支払証明書などを利用することが考えられます。

また、場合によっては、賃金センサスなどの収入に関する一般的な指標をもとにして基礎収入を算定することもあります。

事故が原因で仕事がキャンセルになった場合、損害としてどこまで認められるの?

事故のために仕事をすることができず、予定していた仕事自体キャンセルになってしまったような場合や、実際に仕掛かっていた仕事を継続することができなくなってしまった場合などには、事故に遭わなければ仕事ができて収入にもなったはずです。そのような、事故のために失った仕事に関する収入は、事故による損害として認められるのでしょうか?

一般論で言えば、できたはずの仕事が事故のせいでできなくなったのであれば、事故と失った収入との間には因果関係(原因と結果の関係、またはあれなければこれなしの関係)があるということができますので、これも事故によって被った損害の一つであるということができます。

ただ、先ほど述べたとおり、フリーランスの休業損害を算定するに当たっては、前年の収入をもとにすることが多く、その場合には休業していた期間の現実の収入によって休業損害を算定しているわけではありませんから、事故で失った仕事だけを別に逸失利益として請求することは、加害者側から見れば損害を二重に評価していることになります。

したがって、よほど特別な(通常は行っていない内容、金額などの)仕事は別として、事故による仕事のキャンセルなどを損害として認めることは難しいでしょう。

また、損害と評価することができるとしても、そのためには仕事が確実に存在していたことを証明することは必要でしょう。契約書、発注書などの書面によって、失った仕事が現実に存在していたことを示す必要があります。

まとめ

以上のように、フリーランスの休業損害については、勤め人とはさまざまな点で異なる部分があり、場合によっては判断が難しいこともあります。

勤め人の場合には給与明細などをもとにした形式的な処理で済むところが、フリーランスの場合にはそれでは済まないケースバイケースの複雑な問題がありますので、フリーランスの人が事故に遭った場合には、弁護士に相談するなどして慎重に対応することが必要です。