交通事故の被害に遭い、被害者が治療費や生活費を払えないときは、仮払い仮処分で損害賠償金を請求することもできます。

交通事故での仮払い仮処分命令とは?

仮払い仮処分って何?

交通事故の被害者が加害者に対して損害賠償を請求したが、加害者が任意に支払わない場合、被害者は損害賠償請求の訴訟を提起する必要があります。
しかし、訴訟を提起しても、判決が出るまでには通常は数ヶ月~1年程度かかるので、その間に被害者が一切の賠償を受けられないとすると、被害者が生活費や治療費に困窮してしまい、生計を維持できなかったり、不本意な内容で早期に和解に応じざるを得なかったりという不利益を被るおそれがあります。
そこで、一定の条件を満たした場合に、裁判所が加害者に対し、治療費や生活費について仮の支払いを命じる制度が設けられています。これを仮払い仮処分といいます。

仮払い仮処分が出る条件とは?

仮払い仮処分の条件

仮払い仮処分は、仮とはいえ加害者に実際の支払いを命じるものですから、「著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするとき」(民事保全法23条2項)に出すことができるとされています。具体的には以下のような条件を満たした場合のみ、出されることになります。

  • 被害者が訴訟で勝訴する可能性が高いこと
  • 被害者が事故による負傷で生活費、治療費などに困窮していること

仮払い仮処分の命令は慎重に出される

仮払い仮処分は、実際に加害者から被害者にお金が動く上に、被害者は受け取ったお金を生活費や治療費としてつかってしまうことが確実であるため、将来的に判決で損害賠償義務が否定されると、加害者が支払ったお金の返還を受けることができるかということが大きな問題になります。
そのため、裁判所としては、仮払い仮処分を出すかどうかは慎重に判断しています。

仮払い仮処分の特徴

慰謝料などは仮払い仮処分で受け取れるわけではない

先にご紹介したとおり、仮払い仮処分は、「著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするとき」に出されるものですから、支払いを命じる範囲(項目)も日々必要となる治療費や生活費に限られており、精神的な苦痛に対する慰謝料などは含まれません。
なお、仮処分はあくまで仮のものであって後に訴訟で覆される可能性があり、相手方に損害を与えてしまう可能性があることから、請求額の一定割合を保証金として供託することになっているのですが、交通事故の仮払い仮処分の場合、生活費や治療費にも困窮している被害者に高額の補償金を要求するのは本末転倒ですから、保証金も低い金額に抑えられます。

訴訟前に仮払い仮処分命令を申し立てることも可能

仮払い仮処分は金銭的・精神的な救済措置

仮払い仮処分命令は訴訟係属中に出されることが多いのですが、法律上は訴訟提起後に限定されているわけではありませんので、被害者の救済という側面から、訴訟を提起する前に申し立てをすることも認められています。

まとめ

今回は仮払い仮処分についてご紹介しました。裁判所は、仮払い仮処分の申し立てがあると、被害者・加害者の双方を裁判所に呼び出し、双方の主張立証を検討して(審尋といいます)、仮払い仮処分を命じるかどうかを決めるのですが、被害者一人では書面の作成や審尋期日での裁判所への説明などを十分にすることは難しいでしょう。仮払い仮処分の利用を考えている場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。