交通事故が起こると過失割合が原因で揉めることがよくあります。過失割合が5対5、どっちも同じように悪い場合というのはどういう事故なのでしょうか?お互い様だから、支払いもなしで終わるのでしょうか?解説します。

過失割合が5対5だと治療費や慰謝料は請求できないの?

過失割合が5対5とされる場合であっても、現に損害として発生した治療費や慰謝料等の請求は可能です。

過失割合とは、交通事故に関する当事者の責任の割合を比率で表したものです。そして、交通事故の損害賠償を請求する場合、この過失割合に応じて、損害賠償金額が減額されることになるのですが、自分の過失割合が10(100%)でない限り、減額はされても請求できる分は残りますので、お互いに同程度の責任があるからといって、治療費や慰謝料の請求ができなくなるというわけではないのです。すなわち、過失割合が5対5の場合は、損害額の50%が減額されますが、残りの50%を請求することはできるということになります。

もっとも、実際に受け取れる額には、下記のように、お互いに生じた損害金額によりますので、最終的に自分が受け取れる金額は0である場合はあります。(このことは、過失割合が5対5の場合に限りません。)

交通事故の過失割合が5対5の賠償金額の計算方法は?

例として、過失割合が5対5で、一方(A)の損害額が200万円、もう一方(B)の損害額が500万円の場合の、損害賠償金額を計算してみます。

前述のように、過失割合が5対5の場合、請求することができるのは全損害の50%となりますので、Aが実際に請求することのできる損害賠償金額は、100万円(200万円×50%=100万円)となります。

同じように、Bが実際に請求することができる損害賠償金額は、250万円(500万円×50%=250万円)となります。

さらに、このようにして確定させた損害賠償金額についてお互い差し引きを行い、最終的には、Bが、150万円(250万円-100万円)を受け取れることになるのです。

路上で寝ていて轢かれた場合、過失割合が5対5になるって本当?

夜間に路上で寝ていて轢かれた場合の過失割合は、5対5と判断されることが多いといえます。

過失割合がどれくらいになるかは、法律実務では、判例タイムズ社の出版する『民事交通訴訟における過失相殺等の認定基準』を基準として判断されることが一般的です。この本では、交通事故の態様ごとに、基本となる過失割合や基本の割合を修正すべき要素が示されています。

路上で寝ていて轢かれてしまった場合についても、この本に基準が掲載されているのですが、昼間と夜間は別の態様とされています。昼間の場合は、人が路上に寝ていたとしても比較的容易に発見できることが多いために、基本的に自動車の方が過失は大きいと考えられており、基本の過失割合は、寝ている人が30%、自動車が70%とされているのです。一方、夜間の場合には、昼間と比較して、路上に寝ている人を発見するのはかなり困難ですので、上記のように、寝ている人の方に過失がプラスされて、5対5とされているのです。

交通事故の過失割合が5対5になるケース

他にも、歩行者と自動車の事故においては、歩行者が横断歩道を赤信号で交差点に侵入し、かつ、自動車が黄色信号で交差点に侵入したような場合などに、基準の過失割合が5対5とされることがあります。

また、自動車(四輪車)同士の事故では、代表的なケースを挙げると、(1)両方の自動車が赤信号で交差点に進入して衝突したような場合、(2)高速道路上で、前の自動車が急ブレーキをかけたために後ろを走行していた自動車が追突してしまったような場合、(3)駐車場内の通路で交差部分に侵入した自動車同士の事故などの場合に、5対5を基準として過失割合が判断されることがあります。

このように、事故の当事者両方に同程度の責任があると思われるような場合に、過失割合が5対5とされることが多いのですが、同じような事故態様であっても、周囲の状況やどちらか一方の大きな過失などによって、それぞれ、個別に基本の過失割合が修正され、最終的には5対5ではなくどちらかの過失の方が多いと判断される場合もあります。

イラスト入りでわかりやすい!過失割合5対5になる交通事故

まとめ

これまでみてきたように、交通事故の過失割合は、少し変わるだけで賠償金額に大きな影響を与えることもありますので、不当な過失割合で示談をしてしまうことは避けなければなりません。もっとも、過失割合は、基準とされるものがあるとはいっても、様々な要素を考慮したうえで判断されるものですし、基準自体も、法律実務に詳しくない人が十分に理解し自分の主張をきちんと伝えて交渉することは非常に難しいものです。

ですから、過失割合・過失相殺については、専門家である弁護士に相談して、交渉を進めてもらった方がよいといえるでしょう。