実際に収入を得ていない専業主婦でも慰謝料請求することができます。通院費・入院費・治療費のほかに、交通事故の被害に遭った専業主婦が請求できる賠償金はどのようなものがあるのでしょうか。

交通事故被害者の専業主婦が請求できる賠償金とは

入院付添看護費

これについては、一般的には、医師の指示があった場合や、けがの程度、被害者の年齢等を考慮して、付添看護が必要である場合に認められます。具体的には、被害者が幼児の場合や、頭部外傷により見守りが必要な場合、腕や足の骨折により日常生活に介助が必要な場合などが挙げられます。
職業付添看護人を雇った場合であれば、その人に支払った実費が認められます。被害者の親といった近親者が付き添った場合であれば、1日あたり5,000円~7,000円になります。

通院付添看護費

けがの程度や、被害者が幼児もしくは高齢であるといった年齢等の事情により、一人での通院が困難な場合に認められます。1日あたり3,000~4,000円が請求できます。

治療費

治療にかかった実費を請求できます。これには、診察代、薬代、手術費用等すべてが含まれます。但し、個室料や特別室の費用等は含まれず、その病院の平均的な病室の料金が基準となります。
また温泉治療費やマッサージ費用などは、医師が療養上必要と認められたものに限られます。

入院交通費

交通費がかかった場合は、被害者に請求できます。電車代やバス代の実費が請求できます。したがって、これらを利用した場合は、通院した日と運賃を記録しておきましょう。タクシー代については、必要性があると認められる場合において請求できます。自家用車を利用した場合は、ガソリン代や駐車料金といった実費が請求できます。これらについては、領収証を保管しておきましょう。

入院雑費

入院中にかかる、生活消耗品や諸々の費用についても請求することが認められています。これについては、1日あたり1,400~1,600円が認められます。定額化されていますので、領収証は必要ありません。

医師への謝礼

社会通念上相当なものであれば、認められる場合があります。そして、社会通念上、相当とよべる金額とは、数千円から数万円をいいます。但し、医師は基本的には診療報酬以外の金銭を受け取ることを慎むべきという日本医師会の倫理指針も策定されているので、今後は、認められない方向になるかもしれません。

専業主婦(家事従事者)の休業損害

専業主婦でも休業損害を請求できる

休業補償というのは、交通事故によるケガによって、仕事を休むことを余儀なくされ収入が減ってしまった場合に、それを補てんするために支払われるものです。
一方、専業主婦の方は、家事をこなしてもそこから収入が発生するわけではありません。ただ、これを他に人に頼んだり、外注したりすることになれば、多くの出費を強いられることになります。このことは、主婦業は、金銭的に評価できることを意味します。そのため、専業主婦の担う主婦業も休業損害の対象となります。なお、家事従事者の性別は関係ありませんので、専業主夫であっても対象となります。

専業主婦の休業損害は賃金センサスを元に計算

専業主婦の休業損害を算出するには、厚生労働省が発表している「賃金センサス」をもとに算出します。専業主婦の場合は、「賃金センサス」の女子労働者全年齢の平均賃金をベースに決められます。この金額は、おおよそ350万円程度になります。この「賃金センサス」での平均賃金を基に基礎収入額を計算し、これに家事をすることができなかった期間を休業期間として、休業補償の金額を計算します。

休業損害の計算式

  • ・休業損害 = 基礎収入額×休業期間

専業主婦の慰謝料請求の3つの基準

慰謝料請求の3つの基準

交通事故の損害賠償を算出する基準には、3つあり、それぞれ自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準と呼ばれます。自賠責基準は、自動車損賠賠償保障法という法律に、補償が受けられる症状とそれに対応した保険金の基準額が定められています。そもそも、この法律の趣旨が、人身事故の被害者に対する最低限の補償を確保することにありますので、補償額も120万円までと高額ではありません。
任意保険基準は、それぞれの保険会社で自由に設定している基準です。会社内部で定めているものですから一般には公開されていません。自賠責基準よりは高額ですが、弁護士基準よりは低額です。
弁護士基準とは、弁護士の団体が出している基準のことです。これは、過去の裁判例をベースにして算出されています。
したがって、争いが、裁判まで持ち込まれた場合に、勝ち取ることができる金額に近いといえるでしょう。

自賠責保険基準

自賠責保険での専業主婦の休業損害の計算は、次のようになります。まず、基礎収入額は、日額5700円と決められています。これに家事を行うことができなかった期間(休業期間)を掛けます。仮に休業期間を30日とすれば、5,700円×30日=171,000円となります。

弁護士基準(裁判基準)

弁護士基準の場合は、賃金センサスを基準とします。この金額は、おおよそ350万円程度ですから、日額では、9,600円程度となるでしょう。したがって、仮に休業期間を30日とすれば、9,600円×30日=288,000円となり、自賠責基準より高額となります。

まとめ

交通事故に遭った場合、専業主婦であっても、休業損害を受けることができます。つまり主婦業は、きちんと金銭的な評価を受けることができるということです。 そして、損害賠償の算定基準には、3つの基準が存在し、それぞれ被害者が受け取ることができる賠償額が異なります。そこで、納得がいく損害賠償を受けるためには、交通事故問題に強い弁護士に相談なさることをおすすめいたします。