離島に住んでいる人が交通事故に遭ってしまった場合に、島内に病院が無かったら?病院はあるけれど交通事故の患者は受け入れができなかったら?本土への通院が必要になってしまった場合、通院交通費はどうなってしまうのでしょうか。

陸路はあるけど有料道路!橋の通行料や高速道路の料金は通院交通費として認められる?

橋を通らないと通院できない!橋の通行料は通院交通費として認められる?

交通事故での怪我による通院に要した交通費は、実費(現実に支出した交通費)が損害として認められるのが原則です。ただし、タクシーや高速道路(有料道路)などの利用料金は、特別にその必要が認められる場合のみ損害として認められ、特別な必要がない場合には公共交通機関や一般道路利用の範囲内のみでしか損害としては認められません。

では、被害者が病院のない離島に住んでいて有料の橋を通らなければ通院ができない場合には、その橋の通行料は損害として認められるのでしょうか?

この場合、島外の病院に通院するのに、電車・バス・船などの公共交通機関がなく、橋の通行料金を負担した上で自動車を使用しなければ通院ができないのであれば、先ほど触れた特別に必要が認められる場合にあたることになり、橋の通行料金も損害として認められることになるでしょう。

逆に、公共交通機関がある場合には、原則として公共交通機関の利用料金の範囲でのみ損害が認められるに止まります。ただし、歩行が困難であるなど怪我の性質・程度などによっては、公共交通機関があっても自動車を利用することはやむを得ませんので、自動車の利用に伴って発生する橋の通行料金も損害として認められることになるでしょう。

高速道路を降りると遠回りになる…高速料金は通院交通費として認められる?

では、通院に自動車を利用しており、高速道路を利用した方が早い場合や、高速道路を利用せずに一般道を利用すると遠回りになる場合には、高速道路の利用料金は損害として認められるのでしょうか?

これについても先ほど説明したのと同様に、特別にその必要が認められる場合には高速道路料金が損害として認められますが、特別な必要が認められない場合には高速道路料金は損害として認められないことになります。

例えば、一般道を利用すると30分かかるところを高速道路を利用すると5分短縮できるという程度では特別な必要は認められないでしょうが、通院先が相当程度遠方にあり高速道路を利用するのとしないのとでは通院の所要時間が大きく異なるような場合には特別な必要があると認められ得るでしょう。

交通手段は航路のみ!フェリーや高速船は通院交通費として認められる?

航路についても陸路と同じように考えられます。通院するための交通手段が船に限られる場合には、航路を利用しなければ通院ができませんから船賃は通院交通費として認められますが、フェリーや高速船などの特別な航路の利用代金も認められるのでしょうか?

航路についても特別な必要がない限りは通常の航路のみが損害として認められますが、特別な必要があれば、その必要の程度に応じて特別な航路の利用代金も損害として認められることになります。したがって、フェリーや高速船などの利用については、それらを利用する特別な必要があるかどうかで判断されることになります。例えば、船を下りた後で公共交通機関がないため自動車で移動しなければならないのであれば、フェリーを利用することに特別な必要があると言えるでしょうし、通常の航路と高速船で著しく所要時間が異なるのであれば特別な必要があると認められる可能性も出てくるでしょう。

飛行機は通院交通費として認められる?

他の交通手段に比べて飛行機はその利用代金が格段に高額になることが予想されます。通院に飛行機を利用した場合にはその利用代金は通院交通費と認められるのでしょうか?

先ほど説明したとおり、公共交通機関が利用できる場合にはその利用代金の範囲内でのみ損害として認められるのが原則です。したがって、例えば東京から大阪に通院する場合には鉄道(新幹線)もありますので、飛行機の利用代金は損害とは認められないのが通常です。

しかし、飛行機以外の交通手段の種類や所要時間などによっては飛行機の利用も認められる可能性がないわけではありません。例えば、飛行機以外には航路を利用するしか交通手段がなく、航路を利用すると10時間以上の長時間がかかるのに対して空路なら1時間で行けるというように、所要時間に著しい差があるような場合には、空路の利用も認められる可能性があります。実際にも、徳之島(奄美群島)から鹿児島へは、航路で18時間かかるのに対して空路なら1時間で行くことができます。このような大きな差がある場合には、空路での通院が認められる可能性は高いといえます。

ただ、フェリーなどの航路では2時間30分、空路なら30分というような場合には、飛行機の利用が認められるのは難しいでしょう。結論的にはケースバイケースの判断ということになりますが、いずれにしても空路の利用が認められるのは特殊なケースで、かなりハードルは高いといえるでしょう。

まとめ

以上まとめたように、高速道路、フェリー、高速船、飛行機などを利用した代金が通院交通費として認められるかどうかは、それらを利用した事情、必要性、代わりの交通機関の有無、他の交通機関との所要時間などの差などの諸事情から判断されることになります。

その判断基準は必ずしも明確なものではなく、判断が難しいケースも考えられますので、これらの特別な交通手段を利用して通院する場合には、いったん弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。