交通事故の被害者になったときに、過失割合で加害者と揉めることがあります。交通事故の過失割合で納得がいかないときにどうすればいいか、対処方法など詳しく説明していきます。

そもそも交通事故の過失割合って何?

交通事故において被害者にも何らかの過失がある場合、被害者に生じた損害の全てを加害者に賠償させることは公平ではありません。 そこで、損害の公平な分担という観点から、被害者の過失を考慮して損害賠償額を調整(減額)する必要が生じます。

これを過失相殺といいます。

過失相殺の具体的な方法は、被害者の過失を割合的に把握し、全損害額からその割合に相当する額を差し引くように計算します。 この、被害者と加害者の過失の割合、いいかえれば事故に対する責任の割合が、過失割合と呼ばれるものです。

交通事故の場合、過去の膨大な事例の集積により、事故の類型ごとに基本となる過失割合や、その修正要素が定められています。

過失割合って誰が決めるの?

過失割合は、損害賠償という民事上の問題を処理するためのものです。

人身事故で刑事事件になったとしても、警察が過失割合を決めるようなことはありません。

したがって、当事者間の話し合いによって過失相殺を決める必要があります。

双方が任意保険に加入している場合には、保険会社の担当者同士で協議をして、過失割合を決めています。

過失割合について詳しく知りたいときは、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)別冊判例タイムズ38号」、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(いわゆる「赤い本」)などの書籍が発行されていますので、参照するといいでしょう。

当事者間(保険会社間)の協議によっても過失割合が決められなかったとき(合意ができなかったとき)は、最終的には訴訟を提起して裁判所に過失割合を決めてもらうことになります。

保険会社が言う過失割合は絶対に正しいの?

保険会社は、2.で紹介した書籍などを参考に過失割合を呈示します。

しかしながら、その割合が絶対に正しいとは限りません。

まず、1.でも触れたとおり、過失割合は、基本となる割合だけでなく、基本割合を修正する様々な要素が決められているのですが、保険会社からの呈示は、保険会社に不利な事情があってもそのことを考慮に入れていない可能性があります。

また、保険会社は、基本的に契約者の言い分をもとに過失割合を考えますから、契約者が保険会社に事実に反する説明をしているような場合には、当然、正しい過失割合にはなりません。

過失があった場合に、賠償金にどう影響するの?

先ほども触れたとおり、全損害額を割合的に減額することになります。

具体的には、
全損害額×(100%-被害者の過失割合)=賠償額
という計算式で算出します。

たとえば、被害者の全損害額が300万円、被害者の過失割合が2割だとすると、賠償額は
300万円×(100%-20%)=240万円
になります。

なお、先に治療費などの支払いを受けている場合(既払い金といいます)には、
全損害額×(100%-被害者の過失割合)-既払額=賠償額
になります。

上の例で治療費、休業損害などで100万円がすでに支払われている場合には、
300万円×(100%-20%)―100万円=140万円
が、最終的に支払われる賠償額になります。

相手の過失割合の主張に反論することはできるの?

過失割合は、基本的には当事者間の協議で決めるものですから、相手方の主張に納得ができない場合には、当然、反論することができます。

もちろん、双方の言い分が食い違う場合に相手方を説得するには、それなりの根拠が必要になります。

事故の発生状況や事故現場付近の道路の状況などについては、警察が作成する実況見分調書が重要な証拠になります。

また、最近ではドライブレコーダーが安価になってきたので、搭載されている方も多いでしょう。

このような、自分の言い分を裏付ける証拠を集め、相手方の主張に反論していくことになります。

物損事故と人身事故で過失割合が変わることはあるの?

過失割合は、事故類型ごとに定められているので、物損事故か人身事故かで変わることは基本的にはありません。

ただし、物損事故と人身事故とでは、自賠責保険の有無という大きな違いがあります。

自賠責保険は、人身事故の被害者に最低限の補償をするために作られたもので、被害者に軽度な過失があったとしても、保険金額が減額されることはありません(被害者に重過失がある場合、その割合に応じて保険金額が減額されます)。

したがって、軽微な人身事故で被害者の損害が自賠責保険の補償の範囲内におさまる場合には、被害者の軽度な過失があっても問題にされず、被害者に過失のない場合と同様の保険金額を受け取ることができます。

これに対して、物損事故には自賠責保険の適用がありませんので、被害者の過失が軽度なものであったとしても、原則通りに過失割合による過失相殺が行われ、賠償額が減額されてしまいます。

まとめ

過失割合についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

過失割合には複雑な修正要素があるため、適正な過失割合を算定するのは簡単なことではありませんし、相手方との間で事実関係についての言い分が食い違うために過失割合で争いになっているような場合には、どうやってこちらの言い分が正しいことを証明するかという難しい問題に直面することになります。

過失割合のことでお困りの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。