交通事故によって、むちうちの症状が出てしまうことは多いものです。
しかし、むちうちによる慰謝料の請求を受ける際には注意しなければいけないポイントが多いのも事実です。
むちうちの症状、治療期間といった一般的なことなら、相手方保険会社とやり取りする際の注意点など、幅広くお伝えしていきます。

むちうちの代表的な症状

むちうちの代表的な症状は、首の周りや頭部・頸椎への痛みです。その他、首を動かせない、めまい、目のかすみ、疲労感なども知られています。中には手や指先など身体の末端が麻痺しているような感覚に襲われる重い症状もあり、握力の低下などにも発展します。

このような自覚症状が既にあるのであれば、むちうちの可能性が非常に高いと言えるでしょう。

事故後すぐに症状が出るとは限らない

むちうちは、事故後すぐに症状が出るとは限りません。
事故の当日から症状が現れる場合もあれば、数日~1週間程度で出てくることもあります。

また、むちうちは見た目に変化が表れにくく、セルフチェックをしても「アザや腫れがないから大丈夫」と見逃してしまいがちです。よく診察してみると、実は首の内側の靭帯や関節包、神経、筋肉を傷めてしまっていたということもありますので、自覚症状がなくても念のため整形外科に行くことをおすすめします。

物損で処理をしてしまうと、慰謝料をもらうことができない

事故によって怪我をした場合、肉体的・精神的苦痛や負担について慰謝するために支払われるのが「慰謝料」です。
得られる慰謝料の金額は、事故を物損で処理するか、人身で処理するかによって大きな差が出てきます。
物損事故の場合は自賠責保険による補償は為されませんが、人身事故の場合は最低限の補償が確保されます。

また、それ以外にも、加害車両の所有者や会社等にも慰謝料の請求が可能とされているので、最終的に得られる慰謝料の金額に差が出てくるということになります。
「怪我もないようですし、お互い事故処理に時間を取られるのも大変なので…」と、相手から物損扱いにする提案があったとしても、一度冷静に考えておく必要があるでしょう。

むちうちの場合に賠償請求できる項目

では実際に、むちうちになった場合に損害賠償として請求できる項目にはどんなものがあるのでしょうか。
1つずつご説明していきます。

治療費

むちうちの症状を治すための施術や診察にかかる費用のことです。
加害者側の保険会社が直接病院に支払うことが多く、被害者側が立て替える必要があまりないのも特徴です。

通院費

通院のためにかかる費用のことです。
往復の電車代やタクシー代、自家用車で向かう場合のガソリン代などを補填してくれます。
実際にどの交通手段を選択するかは保険会社との相談をしておくべきでしょう。

雑費

診断書の作成費用や、検査資料を取り寄せるための費用です。
また、事故の場合は交通事故証明書を作成してもらう必要もあるので、こうした書類作成費についても補償の範囲となります。

休業損害

むちうちになると、痛みや痺れの影響で日常生活が思うように送れなくなるケースも出てきます。
仕事を休まざるを得なくなったり、通院のために出勤できない日が増えたりもするでしょう。

それによって減ってしまった給料を補填するために請求できるのが休業損害で、日々の生活を維持するための費用として支払われます。会社員や公務員、自営業、アルバイトなど、業種や職種に縛られず支払われ、専業主婦など家事従事者であっても支払いの対象となります。

入通院慰謝料

交通事故で怪我を負わせてしまったことそのものに対する慰謝料です。
怪我による肉体的・精神的な苦痛や負担について謝罪するためのものであり、その後の入院・通院が生活を圧迫することに対しての補填でもあります。

後遺障害慰謝料

治療を続けても万が一むちうちが完治せずに後遺障害が残ってしまった場合に支払われる慰謝料です。
後遺障害慰謝料は、後遺障害の内容や程度によって金額が左右されるのが特徴です。
もし完治しなかった場合は、自分の後遺障害がどの程度の重さであるのかを証明する必要が出てきます。

後遺障害逸失利益

むちうちによって後遺障害が残ってしまった場合に請求できる費用です。
これは、何事も問題なく回復していれば得られていたであろう収入が後遺障害によって得られなくなってしまった場合に適用することができるもので、将来分の収入を補填する意味合いがあります。
働く人だけではなく、専業主婦や子ども・学生であっても後遺障害逸失利益を請求することが可能です。

むちうちの治療期間の平均はどのくらい?

むちうちの程度は、事故の状況や被害者の年齢によって差があるものです。
治療の効き具合にも個人差があるため、治療に要する期間は一概に予測することができません。
早くて3ヶ月程度、症状が重いと6ヶ月程度かかるケースもあるので、診察を依頼した医師に相談してみるのが確実でしょう。

むちうちの適切な通院頻度ってどのくらい?

治療のために通院していても、治療の打ち切りをされたり慰謝料が減額されたりするケースが存在します。

こうしたケースは、通院機関が長いにも関わらず通院頻度が少ない場合に起こりやすいと言われています。
一般的なケースと比較してあまりにも通院頻度が低い場合は、症状が軽いため治療が要らない、とされてしまって打ち切られる場合があるのです。
そのため、適切な通院頻度についてきちんと医師と話し合っておくことが重要でしょう。

症状の程度により異なりますが、3ヶ月の通院が必要とされた場合は、週3回程度の通院を考えておく必要があります。
仕事や生活が忙しいからという理由で医師による指示を守らない場合も、同様に「治療しなくても大丈夫では」と判断されてしまうことがあるため、指示を守って定期的に通院しましょう。

むちうちで整骨院に通ってもいいの?

整骨院による早期治療はむちうちの症状改善に有効なことが多く、後遺障害を防ぐためにも通っておいて損はないかと思います。
ただし、整骨院の先生は医師ではないということに注意しておきましょう。

後遺障害の等級認定が必要になった場合や、後遺障害診断書を作成できるのは医師だけであり、整骨院の先生には作成できません。
整骨院の先生によって「治療を続けてももう症状が改善しない」とする「症状固定」であると言われて治療費が打ち切られることもあります。
整骨院を選択したい場合でも、整形外科に定期的に通院した上で指示を仰ぎながら通う、という方式を取るのが理想です。

むちうちの治療3ヶ月で打ち切りを打診されたけど、どうすればいい?

まず覚えておきたいのは、治療の方向性を決めるのは医師と被害者である、ということです。
加害者や保険会社から治療の打ち切りを打診された場合でも、本当に治療を終えていいのかどうか主治医の判断を仰ぐようにしましょう。

また、通院頻度が低くなってしまっていないかを見直すのもポイントです。
事故からしばらく経つと、忙しさに影響されてつい通院頻度が低くなってしまうものです。定期的に通院して治療を受けることが必要であると証明するためにも、十分留意しておきましょう。

むちうちの慰謝料の相場は?

慰謝料をいくらで設定するかということについては、明確な基準が設けられています。
稀に、わざと低い慰謝料を提示して負担金額を抑えようとしてくる保険会社もいるので、注意してみておくことが必要です。
まず、慰謝料の算定基準となるのは「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つであるということを覚えておきましょう。

通院3ヶ月の場合

通院3ヶ月で治療を進めていった場合で試算してみましょう。

自賠責基準の場合は、3ヶ月合計で252,000円程度です。
一方で弁護士基準の場合は730,000円程度とされています。

自賠責基準と比較すると、金額が圧倒的に多いということが分かります。

通院4ヶ月の場合

同様に、通院4ヶ月の場合についても試算してみましょう。

自賠責基準の場合は、4ヶ月合計で336,000円程度と計算ができます。
一方で弁護士基準の場合は900,000円程度とされています。

通院6ヶ月の場合

同様に、次は通院6ヶ月の場合についても試算してみましょう。

自賠責基準の場合は、6ヶ月合計で504,000円程度と計算ができます。
一方で弁護士基準の場合は1160,000円程度とされています。

通う期間が長ければ長いほど、得られる慰謝料の金額差が大きくなるということが分かります。

自賠責基準と弁護士基準って何?

慰謝料の算定基準となるのは「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つがあります。
得られる慰謝料の金額については、自賠責基準<任意保険<弁護士基準の順に高くなる傾向があり、どの基準を適用して計算するかが非常に重要です。

弁護士基準とは、過去実際に起きた交通事故裁判の判例から導き出された基準であり、法的根拠に基づいて算出されています。
そのため、もし裁判に進むとなった場合、請求できるであろう可能性が高い金額に近くなるよう計算されているのです。
可能であれば弁護士基準で計算した慰謝料を受けとるべきでしょう。

むちうちの慰謝料の計算方法は?

実際にむちうちの場合の慰謝料はどう計算されているのでしょうか。
計算方法は算定基準事に異なるので、どの基準を適用するかが重要になってきます。

例えば自賠責基準の場合であれば、「実際に治療を行うために病院に通った日数の2倍」もしくは「病院に通っていた期間」の、いずれか低い方に日額4,200円をかけて計算されます。
2日に1回ペースで通院していない限り、実際の治療日数に4,200円をかけた金額になることが多そうですね。

相手方の保険会社から提示された慰謝料がもし1日あたり4,200円で計算されていたのであれば、最低限の金額を提示しているということが分かります。
本当に納得できる金額であるかということも含め、金額算出の方法についてはよくチェックしておくとよいでしょう。

むちうちで後遺症が残ってしまったら

もし万が一治療を続けても元通りまで改善せず、後遺障害が残ってしまった場合についてもよく考えておく必要があります。

後遺障害が起きた場合、後遺障害慰謝料や逸失利益の損害賠償請求を行うことが可能となります。
そのためには後遺障害等級認定を受けることがポイントとなるので、主治医に相談をしておきましょう。
また、むちうちの場合に認定される後遺障害等級は14級もしくは12級であることがほとんどです。

むちうちで後遺障害等級14級認定される基準とは

後遺障害等級は、具体的にどんな症状が心身に残ってしまっているのかを判断し、決定します。

14級であれば、「局部に神経症状を残すもの」と定められています。
事故当初から一貫して症状を訴えていること、将来においても回復が困難であること、症状が今も常在し続けていることがポイントとなり、医師の診察の上で決定されます。

むちうちで後遺障害等級12級認定される基準とは

12級であれば、「局部に頑固な神経症状を残すもの」と定められています。
14級の要素に加え、画像所見などによって痛みやしびれといった本人の訴えを裏付ける証拠があるかどうかがポイントとなります。
そのため、こちらも医師の診察が必要不可欠となり、書類を用意してもらってはじめて等級認定となります。

むちうちの後遺障害診断書作成のポイント

後遺障害認定を受けるために欠かせないのが、医師の作成する後遺障害診断書です。
認定を受けようと考えた際には必ず必要となりますので、かかりつけ医に相談の上、作成してもらいましょう。

また、作成してもらう際には記載内容についても注意が必要です。
画像所見がある場合はその旨をしっかり記載し、事故当初から痛みやしびれが続いていること、今も症状があること、完治が難しいこと、などを盛り込んでもらうのがポイントです。
少しずつではあるがよくなってきている、完治に向かっている、など誤解を受ける表現をしてしまうと、認定が下りないケースもあるので注意しましょう。

交通事故でむちうちになってしまったら、弁護士にご相談ください

交通事故によるむちうちで慰謝料や後遺障害認定を受けるには様々なポイントがあることが分かります。

ただ、事故に遭った本人は自分の体調のことや生活の立て直しに力を割かねばならず、こうした細かい手続きややり取りに不足が出ることが多いものです。
気が付いたら、後遺障害認定を受けられず、慰謝料も低い金額に設定され、もらえるはずのものがもらえなかったということにも発展します。

こうした専門知識がいる手続きに関しては弁護士に依頼するというのも1つの手です。
弁護士に依頼すれば、慰謝料の算定方法決定や、後遺障害診断書内容についての医師との打ち合わせ、異議申し立てをする際の事務手続きなど、労力のかかる部分をお任せすることができます。
加害者や保険会社・医師と揉めることもなく安心して過ごすことができるでしょう。
なるべく身体的・精神的な負担を減らし、治療に専念できる環境を整えられればいいですね。