夫婦の一方または双方が弁護士の場合で離婚を考える時、注意しなければいけない点がありますので、詳しく見ていきましょう。

弁護士との離婚

法律的な知識が必要になる

弁護士と離婚しようとする場合、相手は法律の専門家ですので、離婚に関する知識について圧倒的な差があります。何の準備も無しに離婚の話し合いを始めてしまうと、話の内容についていけなくなり、不利な立場に立ってしまうかもしれません。

弁護士と離婚する場合には、話し合いを始める前に、まず離婚に関する知識を身につけておくことが大切です。

弁護士は平均年収が高く、慰謝料などが高額化することがある

弁護士は一般的に年収が高いため、慰謝料も高額化する傾向にあります。また、年収が高い人ほど財産の種類も多くなりますので、財産分与の話し合いに時間がかかってしまいます。

もし配偶者が弁護士事務所を経営している場合は、仕事の財産と個人の財産を区別して話し合いをしなければいけません。このような場合、財産の種類が多肢にわたりますので、財産分与の話し合いはさらに複雑となります。

弁護士との離婚での財産分与

財産分与の割合は原則として2分の1

財産分与の対象となるのは、「夫婦の共有財産」です。夫婦の共有財産とは、「結婚生活中に夫婦が協力して築き上げた財産」のことです。

財産分与の割合は、原則として50%です。夫婦の財産ですので、半分ずつ平等に折半するのが原則です。

夫婦の一方が弁護士であろうと、夫婦の一方が専業主婦であろうと、「50%」という割合に変更はありません。

一般的に、弁護士は複数の銀行に分けて口座を持っていることがよくあります。クライアントごとに口座を分けている場合もありますし、預かり金口座と報酬受け取り口座を分けている場合もあります。離婚する相手がどこの銀行に口座を持っているのか、財産分与の話し合いを始める前に、きちんと調べておきましょう。

弁護士法人の代表者の場合

夫婦の一方が弁護士である場合、その弁護士が弁護士法人の代表をしていることがあります。このような場合、財産分与について注意が必要です。

法律上は、法人と個人は全く別の人格として扱われます。法人が保有する財産は、夫婦の財産とは別のものとして扱われます。よって、法人名義の財産は、財産分与の対象にはなりません。

ただし、弁護士個人の財産を、弁護士法人に貸し付けている場合があります。たとえば、弁護士個人が所有しているビルの一室を、弁護士法人の会議室として賃貸していることがあります。このような場合、ビル自体は弁護士個人の財産ですので、財産分与の対象となります。仕事用に使っているからといって、財産分与の対象から外れるわけではありません。どのような財産を保有しているのか、きちんと名義を調べておきましょう。

また、弁護士法人に勤務している弁護士の場合、弁護士法人の出資持分を個人で保有していることがあります。この場合も、出資持分は弁護士個人の財産ですので、財産分与の対象となります。出資持分の価値は、弁護士法人の規模によって様々ですが、弁護士法人の経営が順調である場合は高額になることもあります。財産分与の話し合いを行う際は、見落とさないように注意しましょう。

弁護士の退職金

弁護士の多くは、個人事務所に所属していますので、退職金の制度がありません。しかし、弁護士法人に勤務している弁護士の場合は、退職金制度を設けている場合があります。このような場合、退職金が財産分与の対象となる可能性がありますので、退職金制度があるかどうか、勤務先に確認しておきましょう。

なお、離婚する時点で既に退職金を受け取っている場合は、その退職金が財産分与の対象となることに争いはありません。しかし、離婚する時点でまだ退職金が支払われていない場合は、注意が必要です。

退職金がまだ支払われていない場合は、原則として、退職金は財産分与の対象となりません。ただし、退職が間近に迫っており、数年以内に確実に退職金が支払われる場合には、財産分与の対象とすることができます。例えば、弁護士の退職が2年後に迫っていて、弁護士法人の規定で退職金の算定方法が明確にきまっている場合は、財産分与の対象とすることができます。

弁護士の年金

年金分割の制度の対象となるのは、共済年金と厚生年金です。国民年金は年金分割の対象ではありません。

多くの弁護士は、個人事務所に所属しています。一般的な個人事務所では、共済年金も厚生年金も設けていません。よって、個人事務所に所属する弁護士は、基礎年金である国民年金にしか加入していません。国民年金は年金分割の対象にはなりませんので、年金分割の制度を利用することはできません。

弁護士の中には、弁護士法人の社員として働いている方もいます。弁護士法人に所属している場合は、厚生年金に加入していることが一般的です。夫婦の一方が厚生年金に加入している場合、年金分割の制度を利用することができます。

夫婦の一方が弁護士法人に所属している場合は、年金分割を利用できるかもしれませんので、厚生年金の加入状況を調べておきましょう。

弁護士の中には、「日本弁護士国民年金基金」に加入している方もいます。こちらは国民年金基金ですので、年金分割の対象にはなりません。

弁護士との離婚での養育費

養育費とは、「子供が自立するまでにかかる費用」のことです。教育費だけでなく、生活費や医療費や娯楽費など、様々な費用が含まれます。

離婚する際には、「月々いくらの金額を支払うか」ということを話し合って決めます。養育費の金額は、基本的には話し合いで決定します。話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所で調停を行います。家庭裁判所では、夫婦双方の収入を参考にして、養育費の金額を決定します。

夫婦双方の収入を示す資料としては、「源泉徴収票」や「給与明細書」が使われることが一般的です。弁護士法人に所属している弁護士の場合も、源泉徴収票や給与明細を参考資料とします。

個人事務所に所属する弁護士の場合は、確定申告の書類を参考資料とすることが一般的です。

弁護士との離婚協議

自分も弁護士に相談する

離婚協議をまとめるためには、たくさんの事柄について話し合いをしなければいけません。夫婦で生活をしていた住宅のローン、子供の進学や教育費、夫婦の年金や保険の名義変更など、話し合わなければならない内容は広範囲に及びます。

当事者同士で冷静に話し合おうとしても、話し合うべき事柄がたくさんあるため、話し合いの途中で混乱してしまうかもしれません。特に、夫婦の一方が弁護士である場合は、離婚に関する知識に圧倒的な差がありますので、話し合いのペースについていけないかもしれません。

離婚の話し合いは複雑ですので、最後まで冷静に話し合いを進めることは、非常に難しいことです。冷静な話し合いを保つためには、客観的な第三者である弁護士に仲介を依頼することが有効です。

弁護士に相談することにより、知識の差を埋めることができますし、当事者同士が顔を合わせることなく話し合いを進めることができますので、心理的なストレスも軽減します。

法律事務所で配偶者を雇用している場合

離婚を理由に解雇はできない

夫婦の一方が法律事務所を経営している場合は、秘書や事務員として配偶者を雇用していることがあります。このような場合、離婚を理由として配偶者を解雇することはできません。もちろん、雇用されている配偶者が「離婚を理由に退職したい」と希望する場合には、きちんと退職金を支払った上で、退職させることができます。配偶者が働き続けることを希望している場合には、強制的に退職させることはできません。

まとめ

夫婦の一方が弁護士である場合、相手は法律の専門家ですので、離婚に関する知識について圧倒的な差があります。弁護士と離婚する場合には、まず離婚に関する知識を身につけておくことが大切です。ご自身で話し合いを進めることに不安がある場合は、離婚に詳しい弁護士に相談しましょう。弁護士に相談することにより、知識の差を埋めることができますし、わずらわしい手続きからも解放されます。さらに、弁護士が話し合いを仲介してくれますので、相手と顔を合わせる必要が無くなり、心理的なストレスも軽減します。