近年、外国人との国際結婚が増えている反面、国際離婚を考える女性も決して少なくありません。そこで今回は外国人との離婚、手続き方法について触れていきたいと思います。

そもそも国際離婚とは

外国人と国際結婚した日本人がその外国人と離婚することを「渉外離婚」(国際離婚)と呼びます。
夫婦双方ともに日本人であれば日本法が適用されますが、夫婦の一方が外国人のときは、日本法が適用されるのかどうか、離婚の手続はどうすればよいのか(協議離婚を認めない国もあります)など、様々な問題が発生することから、日本人同士の場合と異なり、簡単に離婚することができません。

日本で国際離婚の手続きができるの?

日本で外国人との離婚の手続をするためには、①日本法が適用されること、②日本の家庭裁判所に裁判管轄権があること、③成立した離婚が外国でも有効であること、④外国に届け出ること、といった条件を満たす必要があります。

国際離婚は日本の法律が適用されるの?

外国人が関係する法律問題についてどこの国の法律が適用されるのか(これを「準拠法」と呼びます)は、「法の適用に関する通則法」という法律で明記されています。

法文の記載は複雑であるため、結論だけを述べると、夫婦の一方が日本人で、日本に「常居所」を有する場合には日本法が適用されます(発行後1年以内の住民票の写しがあれば日本国に「常居所」があると扱われますが、5年以上外国に居住していることがパスポートの記載上から明らかだと、その外国が「常居所」とされ、日本法は適用されません)。

この場合、外国人配偶者にも日本法が適用されます。そのため、日本法が認める方式による協議離婚を日本国内でしたとき、日本国内では法的に完全に有効な離婚が成立することになります。

しかし、外国人配偶者については、自らの本国に離婚したことを届け出なければ、自らの本国の法律上はまだ結婚したままの状態となります。そして、その届け出の際は、外国人配偶者の本国で日本の離婚のやり方が合法であるといえなければなりません。

具体的に説明すると、多くの国では協議離婚の方式による離婚は認めず、判決による離婚だけしか認めていないことから、市区町村役場に離婚届を提出することで日本法では離婚が成立したとしても、外国人配偶者の本国では有効な離婚とは認められないことになります。

国際離婚の手続き方法とは?

離婚に合意している場合

夫婦双方が離婚することに合意している場合は簡単です。

まず、外国人配偶者の本国(領事館等)に対し、協議離婚の方式による離婚が認められているかどうかを確認します。中国や韓国では協議離婚が認められていることから、その場合には、市区町村に離婚届を提出し、それを本国に示せばよいだけです。

これに対し、外国人配偶者の本国が協議離婚を認めていない場合は、判決による離婚をするしかありません。具体的には、日本の家庭裁判所に対し、離婚調停を申し立て、調停調書に「確定判決と同一の効力を有する」との確認条項を付記してもらい、翻訳文、翻訳者の公証人による認証、公証人の資格証明書、法務局長の職印証明書などを添付し、領事の認証をもらって外国人配偶者の本国に届け出ることになります。

しかし、外国によっては、日本の調停調書(上記の確認条項付き)を判決と同じものとして扱ってくれないところもあります(調停申立て前に領事館に確認すれば教えてくれますので、事前の確認が絶対に必要です)。その場合には、日本の家庭裁判所に離婚調停を申し立て、事情を説明して直ちに調停不成立にしてもらい、改めて離婚訴訟を提起し、直ちに離婚判決をもらう必要があります(日本の離婚裁判は「調停前置主義」を採用しており、離婚訴訟の訴状に調停不成立証明書を添付しなければならないものとしているため、離婚訴訟を提起する前に形式的に調停申立てを先行しておく必要があります)。

夫婦の一方が離婚に反対している場合

これらに対し、夫婦の一方が離婚に反対している場合は非常に難しいことになります。

まず、夫婦双方が日本国内にいれば、日本の家庭裁判所が管轄権を有するため、日本人に対するのと同様に、調停申立て→調停不成立→離婚訴訟の提起という流れに乗せることができます。

しかし、外国人配偶者が既に本国に帰国してしまった場合は、国際裁判管轄(どの国の裁判所に離婚問題を扱うことができる権限があるか)の問題になります。日本の最高裁判所は、外国人配偶者が行方不明であったり、日本人の配偶者を日本に放置して無断で帰国したりするなどの特別の事情がなければ、日本の家庭裁判所は裁判管轄権を有しないと判断していますので、日本の家庭裁判所に調停申立てや離婚訴訟の提起をすることができません。そのため、上記の特別の事情が認められない場合は、外国人配偶者の本国の弁護士に依頼し、外国人配偶者の本国の裁判所で離婚裁判を進めることになります。

なお、例外的に上記の特別の事情が認められ、日本の家庭裁判所に裁判管轄権がある場合でも、日本の家庭裁判所は、外国人配偶者に訴状等の裁判書類を送達しなければなりません。一般的に、外国人配偶者の外国での住所が判明しているときであっても、送達が完了するまで6ヶ月から8ヶ月以上の時間がかかるといわれています。家庭裁判所に提出した書類に不備があると、補正した書類を再送達しなければならず、さらに6ヶ月から8ヶ月の時間がかかってしまいますので、外国への送達は1回で済むように事前に何度も入念に確認することが不可欠です。

国際離婚する場合、親権はどちらが持つのか

子供の親権には「法の適用に関する通則法」21条が適用され、①子供が日本人であれば日本法による、②子供が日本人でなく母と同じ国籍であれば母の本国法による、③これらのいずれでもなければ子供の「常居所」の法律による、と規定されています。

なお、国籍法2条1項は、子供の出生時に父または母が日本国民であれば子供もまた日本国民であると規定していますので、夫婦の一方が日本国民であれば、子供の親権をどちらが持つかは日本法に従って決定されることになります。

具体的には、協議離婚(離婚届を市区町村役場に提出して行うもの)や調停離婚(家庭裁判所の調停手続で離婚をするもの)は、夫婦の協議によって子供の親権者を定めますので、夫婦双方が「母でよい」といえば親権者は母になります。

これに対し、夫婦双方の協議がととのわなかったとき(夫婦のいずれもが自分が親権者になることを譲らなかったとき)は、父または母の請求により家庭裁判所がどちらを親権者とするかを判断することになります。

日本での親権について詳しくみる

国際離婚でも慰謝料請求ができる?

離婚の慰謝料には2種類あります。すなわち、①離婚に伴う慰謝料、②離婚に至るまでの個別の不法行為に基づく慰謝料です。

まず、①離婚に伴う慰謝料は、離婚の準拠法と同じです(離婚と同じ「法の適用に関する通則法」27条が適用されます)。離婚に伴う慰謝料は、通常は、離婚の調停や裁判手続と一緒の手続で審理判断されることになります。

これに対し、②離婚に至るまでの個別の不法行為に基づく慰謝料については、離婚とは異なる条文(法の適用に関する通則法17条)が適用され、不法行為地(暴力や不貞行為をした場所)の法律が準拠法となります。

ただし、離婚事件で「慰謝料」というときは、通常は①離婚に伴う慰謝料を指します。たしかに、離婚に至るまでの過程で暴力行為や不貞行為があったときは、厳密に言えばそれらは個々の不法行為を構成しますが、それらが複合した要因となって最終的に離婚に至ったと捉え、離婚に伴う慰謝料の増額事由とするのが一般的です。

不貞行為の証拠があれば慰謝料増額の可能性が高くなります 日本での離婚慰謝料の請求についてはこちら

そして、離婚の準拠法が日本法のとき、離婚に伴う慰謝料について夫婦双方で協議がととのわないときは、日本の家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになり、離婚調停の中で慰謝料の金額についても話し合いがなされることになります。調停とは、裁判所を間に入れた話し合いですから、夫婦双方が慰謝料の金額について納得することができなければ、調停は不成立となります(理論的には、離婚することの合意は成立したものの、慰謝料の金額についての合意は成立しないケースもあり得ます。しかし、慰謝料を請求する側にとっての最大の交渉材料は「離婚に応じてほしければ慰謝料をたくさん支払え」ということですので、相手方が慰謝料の支払いを渋っている状況で先行して離婚に応じるということは、通常は考えられません)。

調停が不成立になったときは、夫婦の一方(離婚をしたい側)が日本の家庭裁判所に離婚訴訟を提起することになります。そして、裁判官による和解の試みが失敗したときは、判決(離婚を命じる判決と離婚請求を棄却する判決の2種類があります)が言い渡されることになります。

なお、通常は考えにくいことですが、離婚を先行させて成立させてしまい、離婚に伴う慰謝料だけを離婚後に請求するケースもあります。その場合には、離婚に伴う慰謝料は、離婚日から3年で時効消滅してしまいますので、それまでに慰謝料請求訴訟を提起するなどしなければなりません。

国際離婚でも養育費を請求できるのか

子供の養育費には「扶養義務の準拠法に関する法律」が適用され、①子供の「常居所」の国の法律(これを「常居所地法」と呼びます)、②常居所地法では扶養を受けることができない場合は当事者の共通本国法、③子供の常居所地法でも当事者の共通本国法でも扶養を受けることができないときは、日本法が適用されます。

そのため、子供が日本に住んでいるときは日本法が適用されますので、子供の親権者が子供の法定代理人としての立場で、離婚した元配偶者に対し、養育費の請求をすることになります。

日本での養育費の交渉・回収は弁護士へ

国際離婚でも財産分与が可能なのか

財産分与についても、慰謝料請求と全く同じです。

慰謝料請求と異なる点は、①離婚成立後に財産分与を請求するときの時効期間は2年であるという点(慰謝料よりも1年短いことに注意してください)、②家庭裁判所に財産分与を求める調停の申し立てをして、それが不成立になったときは、改めて提訴しなくても自動的に審判に移行し、裁判官が具体的な財産分与の金額を判断し、審判書でその支払いを命令してくれるという点です。

日本での財産分与についてはこちら

国際離婚をしたら、すぐに帰国しなければいけないのか

日本人と結婚した外国人には、「日本人の配偶者等」という在留資格が認められます。在留期間は当初は6ヶ月ですが、婚姻期間が継続するにつれ、1年、3年というように、在留資格を更新するまでの期間が徐々に長くなっていきます。

しかし、日本人と離婚をすると、その外国人は「日本人の配偶者等」としての在留資格を満たさなくなってしまいます。そのため、次回の更新時には「日本人の配偶者等」ではない他の在留資格への変更を申請し、それが認められなければ帰国しなければなりません(離婚によって直ちに在留資格が失われるのではなく、「日本人の配偶者等」としての在留資格での更新ができなくなるだけですので、次回の更新時までは「日本人の在留者等」としての在留資格で日本に滞在し続けることができます)。

離婚後の在留資格の更新時における新たな在留資格として可能性があるのは、「定住者」です。「定住者」とは「法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認める者」のことですが、認められる条件は非常に厳しく、①離婚した外国人が日本人との間に未成年の実子をもうけていること、②離婚した外国人がその未成年の実子の親権者で、現実に養育監護していることが必要です。未成年の実子の養育のために「定住者」としての在留資格が認められた場合には、未成年者の実子の養育状況が継続する限り、通常は「定住者」としての在留資格の更新が認められます。

なお、未成年の実子を養育する状況にない場合であっても、「定住者」への在留資格の変更が認められる可能性はあるものの、非常な困難を伴いますので、弁護士等の専門家に依頼して入念な準備をすることが不可欠です。

国際離婚後の姓はどうなるの?

日本人と外国人が結婚したとき、その氏がどうなるかは、それぞれの本国法によって判断されます。日本の戸籍法は、日本人が外国人と結婚したとしても日本人の氏を変更するものとはしていませんので、日本人が外国人と結婚したときは、当然に夫婦別姓となります。

ただし、夫婦別姓を希望しないときは、婚姻日から6ヶ月以内であれば、外国人配偶者の氏に変更する旨の届け出をすることで氏の変更をすることができるという特例があります(婚姻日から6ヶ月を超えると、氏の変更には家庭裁判所の許可が必要となります)。そして、日本人と外国人が離婚したとき、氏の変更をしなかったときは夫婦別姓のままですから、そのまま何も変わりません。

これに対し、氏の変更をした後に離婚したときは、原則として、家庭裁判所の許可を得ることで元の氏に戻ることができます。ただし、婚姻日から6ヶ月以内に家庭裁判所の許可を得ずに氏の変更をしていたときは、例外的に、離婚や死別の日から3ヶ月以内に復氏の届け出をすることで元の氏に戻ることができます。

なお、上記は、あくまでも外国人と結婚した日本人の氏が日本国内でどうなるかについての説明です。日本人と結婚した外国人の氏がどうなるかは、その外国人配偶者の本国法によります。また、外国人配偶者の本国内において、その外国人と結婚した日本人配偶者の氏がどうなるかは、その外国人の本国法の定めによることになります。

国際離婚後、すぐに再婚できるの?

日本人と外国人が離婚した後、それぞれがすぐに再婚することができるかは、それぞれの本国法(日本人配偶者は日本法)によります。

日本人が男性の場合は、外国人女性との離婚後、直ちに再婚することができます。

これに対し、日本人が女性の場合は、外国人男性との離婚後、100日間の再婚禁止期間が定められていますので、その間は再婚することができません。ただし、妊娠をしていない旨の医師の証明書を用意するなどすれば、例外的に離婚日から100日以内であっても再婚することができます。

国際離婚でその他に注意しなければいけないこと

多くの外国は、協議離婚は認めませんが、判決による離婚は認めます。

しかし、中には、離婚を一切認めない国も存在します。その場合には、外国人配偶者の本国で離婚手続をすることはできませんので、日本の家庭裁判所に裁判管轄権が認められるときは(日本の最高裁判所は、外国人配偶者が日本に住んでいれば日本の家庭裁判所の裁判管轄権を認めています)、日本の家庭裁判所で離婚の判決をもらって離婚をめざすことになります。

また、外国人配偶者が日本人配偶者の知らないところで、勝手に本国の裁判所に離婚と高額の慰謝料の訴えを起こし、離婚と高額の慰謝料を認める判決が出てしまう場合もあります。

日本の民事訴訟法は、外国裁判所の判決が日本国内で効力を生じるためには、①外国裁判所の裁判権が認められること、②敗訴した被告が訴訟の開始に必要な呼び出し等を受けたこと、③判決の内容や訴訟手続が日本の公序良俗に反しないこと、④相互の保証があることという4つの条件をすべて満たさなければならないと規定しています。

そのため、日本人配偶者が知らない間に外国裁判所で敗訴判決を受けたとしても、上記の②の条件を欠くため、その外国判決の日本国内での効力が否定されます。具体的には、日本国内でその外国判決に基づいて離婚手続や強制執行手続をしようとしても、することはできません。

しかし、戸籍実務では、外国判決が上記の4つの条件を欠くことが一見して明らかである場合を除き、外国判決に基づく離婚届は受理することとされていますので、そのような届け出がなされると、戸籍上は離婚したことになってしまいます。その場合には、外国離婚判決の無効確認訴訟を提起し、その勝訴判決をもって戸籍の訂正をすることになります。

これに対し、外国判決を日本国内で強制執行するためには、その前に日本の地方裁判所の「強制執行を許す旨を宣言する判決」(執行判決)を得なければならないものとされていますので、もし知らないところで高額の慰謝料の支払いを命じる外国判決が言い渡されたとしても、執行判決を得るまでの手続の中で外国判決の無効性を争い、執行判決の宣言を阻止することになります。

まとめ

外国人と離婚をするということは、日本法だけでなく、外国人の本国法が影響するため、通常の離婚事件より難しい問題に直面することがあります。前述したとおり、協議離婚を認めない外国も多くあるため、日本の感覚で協議離婚をしても外国ではまだ結婚したままだったということもあり得ます。また、外国人配偶者が日本にいればよいのですが、日本を出国してしまった場合には、法律関係が一気に複雑化します。

そのため、外国人との離婚を考えているときは、できるだけ早期に弁護士に相談し、最も手間と時間がかからない方法が何かを事前に十分に検討しておくことが非常に大切です。