夫が自営業の場合は、家族が生活していくのも大変な場合があります。自営業の夫と離婚する場合に、慰謝料請求や親権、借金の肩代わりなどは、どうなるのか詳しく見ていきましょう。

自営業の夫と離婚するにはどうすればいいの?

自営業の夫と離婚する場合、どうすればいいのでしょうか?サラリーマンと比較して、どのような特徴があるのでしょうか?

まず気をつけなければいけないのは、「妻が夫の事業を手伝っているケース」です。このような場合、きちんと妻にお給料が払われている場合と、妻がただ働きをしている場合があります。

きちんとお給料を受け取っている場合は、問題がありません。ただ働きをしている場合は、妻が受け取るはずだったお給料が、夫の給与口座に振り込まれていることになります。離婚の話し合いをする際には、この点についてきちんと清算しなければいけません。こちらからきちんと主張しなければ、妻のただ働き分を考慮してもらうことはできません。

次に気をつけなければいけないのは、「妻が夫の自営業を手伝っている場合、離婚後も夫の事業を手伝い続けるのか」という問題です。

もし離婚を機に手伝いを辞めるのであれば、きちんと退職手続きを取る必要があります。従業員の一人として退職するわけですから、退職金を受け取る権利もあります。

離婚後も手伝いを続ける場合は、離婚後の給与の支払いについてきちんと話し合いを行いましょう。給与の振り込み先口座についても、きちんと取り決めをしておきましょう。今までは口約束で済ませていたことも、正式な書面にして確認しておくことが重要です。

その他にも、「事業のための借金を肩代わりした場合は返してもらえるのか?」「自営業の夫に対して、慰謝料の請求はできるのか?」など、自営業夫婦の離婚については、様々な問題があります。

これらの疑問について、一つずつみていきましょう。

事業のために借金を肩代わりしていた場合は返してもらえるの?

夫の事業のための借金を肩代わりしていた場合、離婚をするとその借金は戻ってくるのでしょうか?

自営業夫婦の借金には、2種類があります。「生活のための借金」と「事業のための借金」です。

このうち、「夫婦が生活するためのお金として借り入れたもの」であれば、財産分与の対象になります。例えば、「子どもの学費のためのローン」や「マイホームを購入するための住宅ローン」は、財産分与の対象になります。

これに対して、事業のための借金については、残念ながら財産分与の対象にはなりません。銀行から妻の名義で借金をしている場合、離婚をしたとしても、妻が銀行に返済を続けなければいけません。

銀行としては、妻の財産状況を信頼して、お金を貸しています。銀行にとっては、お金を貸した相手が離婚をするかしないかは、関係のないことです。もし銀行から返済を迫られた場合は、妻が返済を続けなければいけません。

しかし、妻としては、夫の事業のための借金を返済し続けることには、納得ができないかもしれません。そのような場合は、離婚調停の場できちんとそのことを主張しましょう。

離婚調停の話し合いでは、柔軟な解決方法を探ることができます。借金を肩代わりし続けることに納得ができないのであれば、そのことをきちんと調停委員に伝えましょう。離婚調停は、裁判ではありません。法律上は妻に返済義務があるとしても、お互いが納得すれば、夫が返済金額を事実上負担するという解決方法を取ることができるかもしれません。「夫の事業のための借金なので、離婚後は夫に返済してもらいたい」ときちんと主張すれば、調停委員が相手に伝えてくれます。

きちんと主張することができなければ、あなたが借金の肩代わりをし続けることになります。

自営業の夫と離婚する場合に慰謝料請求できるの?

自営業の夫と離婚する場合にも、慰謝料を請求することができるのでしょうか?

配偶者が自営業であろうがなかろうが、慰謝料を請求することは可能です。

離婚をする際に慰謝料をできるかどうかは、「婚姻生活中に、精神的苦痛を受けたかどうか」ということによって決まります。相手が自営業であってもサラリーマンであっても、同じ基準で判断されます。

慰謝料とは、「精神的苦痛を慰謝するためのお金」です。婚姻生活中に、相手方から精神的に傷つけられた場合には、慰謝料を請求することができます。

相手が自営業の場合は、具体的にはどのようなケースで慰謝料を請求することができるのでしょうか?

たとえば、「夫の事業がうまくなくなり、そのストレスから夫から暴力をふるわれた」というケースや、「夫の事業が忙しくて家にいる時間がほとんどなく、生活費も渡してくれなかった」というケースでは、慰謝料を請求することができます。

この他にも、慰謝料が認められるケースは状況によって様々です。慰謝料の請求をお考えの方は、ご自身のケースで慰謝料を請求できるかどうか、まずは弁護士に相談してみましょう。

自営業の夫と離婚する場合に財産分与はどうなるの?

自営業の夫と離婚する場合、財産分与はどのように行われるのでしょうか?

相手方が自営業の場合、「事業のための財産」と「夫婦の生活のための財産」が混同しているケースがよくあります。このような場合、まずはこれらをきちんと区別することから始めます。

離婚の財産分与の対象となるのは、原則として「夫婦の共有の財産」です。事業のための財産は、財産分与の対象にはなりません。

注意すべき点は、「夫婦の財産なのか事業のための財産なのかは、名義ではなく、実質的に判断される」ということです。

たとえば、夫の個人名義の預貯金であっても、事業の売り上げ資金を管理するために使われている口座であれば、「事業のための財産」と判断されます。この場合、財産分与の対象にはなりません。

自営業の夫と離婚したら親権はどちらにいくの?

自営業の夫との間に子どもがいる場合、親権はどうやって決めるのでしょうか?

親権を決めるには、まずは「話し合い」を行います。夫婦の話し合いで親権者が決まるのであれば、その話し合いの結論がまず何よりも優先されます。

話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に決定してもらいます。家庭裁判所の調査官が、子どもと面談したり、家庭訪問を行い、調査を行います。綿密な調査を行ったうえで、どちらが親権者としてふさわしいのかを判断します。

家庭裁判所の調査官は、様々な調査を行ったうえで、慎重に親権者を決定します。たとえば、「今まで誰が子どもの世話をしてきたか」「子どもはどちらになついているか」「子どもが転校することを嫌がっていないか」など、様々な要素を考慮して決定します。

一般的には、母親が親権を獲得するケースがほとんどです。ただし、夫が自営業の場合は、サラリーマンよりも時間に融通をきく場合が多く、子育てに積極的に関わっているケースが多いので、男性が親権を獲得しやすいという特徴があります。

親権についてお悩みの方は、お早めに弁護士に相談しておきましょう。

自営業の夫が自己破産しても離婚慰謝料請求できるの?

自営業の夫が事業に失敗して、自己破産をした場合、離婚の慰謝料を請求することはできなくなるのでしょうか?

自己破産をしても慰謝料を請求できるかどうかは、「慰謝料の原因」によって異なります。慰謝料の原因によっては、慰謝料を請求できなくなる場合もあれば、引き続き慰謝料を請求できる場合もあります。

それでは、自己破産後にも慰謝料を請求することができるケースとは、どのような場合でしょうか?

「夫が積極的に妻を傷つける意図があった」と認められるケースでは、自己破産後でも、慰謝料を請求することができます。

たとえば、夫が事業のストレスで妻に暴力をふるったという場合には、「妻の身体を傷つけようとする積極的な意図がある」といえるため、自己破産後でも慰謝料を請求することができます。

浮気による慰謝料の場合は、浮気の期間や回数によって、判断が異なります。期間が短く、回数も少なければ、「妻を積極的に傷つける意図がある」とは認められません。このような場合は、自己破産後には慰謝料を請求することができなくなります。相手が自己破産をする前に、急いで慰謝料を支払ってもらう必要があります。

なお、子どもの養育費については、自己破産によって免責されることはありません。相手が自己破産をした後でも、安心して養育費を請求することができます。

子どもの養育費は、子どもの将来を左右する重要なお金です。子どもの養育費については、相手が自己破産する時期を気にする必要はなく、ゆっくり請求することができます。すでに相手が自己破産をしている場合でも、あきらめずに養育費を請求しましょう。

まとめ

以上のとおり、自営業夫婦が離婚する場合には、様々な特徴があります。特に、財産分与や親権については特殊な問題があるため、揉めごとが生じた場合には話し合いが長期化するおそれがあります。

自営業夫婦の離婚は、事業の問題と離婚の問題が混在しているため、当人同士で解決することが難しい問題です。夫婦での話し合いが長期化する前に、専門家の判断を仰ぎましょう。

離婚は一生の問題です。お一人で悩むのではなく、まずはお気軽に弁護士にご相談してみましょう。