結婚して2人で新たな生活…と思ったら、夫(妻)が実家に帰りすぎ?実家にべったり依存して、いつまでも息子・娘気分でいる人もいるようです。何度言っても治らない場合は離婚したくなるかもしれませんね。
今回は、そんな実家依存症の夫(妻)と離婚できるのか解説していきます。

実家依存症とは

実家依存症とは、婚姻関係にある妻・夫が実家の両親に精神的・経済的に依存してしまっている状態を指します。実家依存症が原因で家に帰らない、家事がおろそかになっている、子供を妻・夫から遠ざけるなど結婚生活に支障をきたしている場合には、離婚の理由として法的に認められるケースもあります。

実家依存症というと里帰り出産などで実家に長期間帰るきっかけの多い妻側に多いイメージがありますが、実際には妻・夫どちら側にも起こる可能性がある問題です。具体的にどのような行動が実家依存症の表れと言えるかを女性(妻)と男性(夫)に分けて、一部挙げてみました。

実家依存症の夫の行動

  • ・連休や長い休みはいつも実家に帰省する
  • ・実家の家事のやり方を妻に強要する
  • ・家庭内で起こった問題をすぐ実家に相談する

実家依存症の妻の行動

  • ・出産、育児の時期に実家に長期滞在する
  • ・実家の近くに住む、引っ越そうとする
  • ・実家の両親にすぐに子ども用品を買ってもらおうとしたり、学費を出してもらおうとしたりする

その他、実家の両親に頻繁に連絡(電話・メール)をする、配偶者よりも親の意見を優先するなども、実家依存症の特徴です。男女分けて例を挙げましたが、どちらも反対側に起こってもおかしくない症状です。

結婚するまで実家を出たことがなかった人は、結婚後の生活に馴染めず実家を精神的なよりどころにしてしまいがちです。友達のように仲の良い母娘だった場合の妻は実家依存症になりやすいようです。夫は、一人息子や長男で両親への経済的・精神的依存が常態となっていた場合に起こりやすいと言えます。

実家依存症であることを理由に離婚できる?

結論から言えば、実家依存症であることを理由に離婚することは可能です。ただし、依存の程度や状況によっても結果は変わってきます。

法的に離婚が認められるためには、妻もしくは夫が実家依存症であることによって、裁判で離婚が認められる理由となるような状況になっている必要があります。民法で定められている離婚原因は5項目ありますが、実家依存症の場合は2つ目の「悪意の遺棄」もしくは5つ目の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかどうかが鍵となります。

民法第752条には、夫婦には同居、協力扶助義務があると定められています。実家依存症となっていることによって、別居状態、家事・育児などの協力が困難な状況を引き起こしていても本人に改善する意思がない場合は「婚姻を継続しがたい重大な事由」、程度がひどい場合には「悪意の遺棄」とみなされ得ます。

実際に実家依存症となっている妻・夫がどんな行動や態度をとっているか、同居の意思があるか、子どもの有無やその状況はどうなっているかなど、個別のケースに応じて離婚が認められるかどうかは変わってきます。

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実家依存症によって離婚が認められた過去の判例

病気療養のために実家に帰省後そのまま2ヶ月以上夫の要請を無視して帰らなかった妻に対して夫が起こした離婚請求では、悪意の遺棄という申し立て事由は認められませんでしたが、第5事由(「婚姻を継続しがたい重大な事由」)に該当するとして離婚が認められました。

実家依存症であることを理由に離婚した場合、慰謝料はもらえるの?

妻・夫の実家依存症を理由として離婚する場合に慰謝料がもらえるかどうかは、実家依存症によって引き起こされた行動で相手がどの程度の苦痛・負担を負ったかが重要になります。

離婚の方法は、当事者間の話し合いによって決まる「協議離婚」と、話し合いでうまくいかない場合に家庭裁判所に申し立てる「離婚調停」という二つが主です。どちらの場合でも慰謝料は発生し得ますが、実家依存症が原因の場合には、実家依存症によって負担を負っている側にだけ離婚の意思がある場合が多く、協議離婚が成立しない場合が多いです。(相手が実家依存症とそれによって生じた被害を認めた上で離婚を受け入れた場合には、協議離婚でも慰謝料が発生する可能性があります。)

離婚調停になったとしたら、慰謝料が生じるのは離婚を申し立てた側が違法な権利侵害行為を受けていた場合です。例えば、不貞行為やDV・モラハラ、悪意の遺棄などがそれに当たります。

実家依存症が理由の場合には、実家依存症となっている側が一方的に悪意の遺棄に当たる行為(正当な理由のない同居・協力義務の拒否)を続けているとしたら、慰謝料が発生する可能性があります。ただし、出産や育児など正当な理由があって実家に帰っているだけとみなされた場合は、悪意の遺棄には当たらず、慰謝料どころかそもそも離婚自体が認められない可能性もあります。

また、実家依存症を双方の実家に対する考え方の違い、つまり「性格の不一致」を理由として離婚する場合などには慰謝料は発生しないでしょう。

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慰謝料の相場

離婚で生じる慰謝料の相場は、浮気・不倫、身体的精神的暴力、悪意の遺棄という離婚事由の違いによって異なります。

実家依存症によって「悪意の遺棄」に当たるようなはっきりとした家庭放棄が見られる場合は50万〜300万円程度が離婚の慰謝料の相場となります。「婚姻を継続しがたい重大な事由」によって離婚が認められた場合は、慰謝料の金額も個別のケースによってくることになり、慰謝料が発生しない可能性もあります。

実家依存症を理由とした離婚の慰謝料に関しては、離婚請求をする側が相手の実家依存症でどの程度の精神的・肉体的負担を強いられたのかという点が重要になってきますが、調停離婚の判決で出される離婚の慰謝料は最も高額でも400万円程度となっています。

ただし協議離婚の場合は話し合いによっていくらでも高額に慰謝料を設定することができます。そのため慰謝料の金額にもばらつきがありますが、双方が納得する金額でなくてはなりません。

まとめ

実家依存症は、人によって依存の程度にも差があり、その度合いによって行動や言動が配偶者に与える影響も変わってきます。そして、その程度によって離婚できるかできないか、慰謝料が発生するかしないかも変わってきてしまいます。

妻・夫が実家依存症かどうか判断がつかない、実家依存症のように思えるが離婚事由に該当するかどうかが判断つかないという場合には、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。個別の状況に応じた的確なアドバイスを仰ぐことができ、そのまま離婚協議・離婚調停を行う場合にも心強い味方となってくれるでしょう。