世の中には、夫の借金が原因で離婚を考えている人も少なくないでしょう。相手の借金が原因で離婚を考えているときに、どのようなことに気を付けなくてはいけないのか、詳しく見ていきましょう。

相手の借金が原因で離婚することはできるの?

借金が原因で離婚する場合はどのような離婚方法があるの?

実務上よく利用されている離婚の方法は、大きく分けて4種類です。協議離婚、調停離婚、和解離婚、裁判離婚となります。

協議離婚は、当事者同士で合意して離婚する方法ですから、離婚の理由は何でもかまいません。相手の借金が原因で離婚することも、もちろんできます。

調停離婚は、家庭裁判所で調停という話し合いの場を持ち、離婚について話し合うことです。当事者が合意できればいいので、離婚原因は何でもよく、夫の借金でつらい思いをしているということでも申立をすることは可能です。 しかし、調停では、両方が合意しなければ離婚できません。

夫が離婚に応じない場合はどうすればいいの?

夫が離婚を拒んでいるときに離婚する方法は、離婚訴訟を起こすことしかありません。離婚訴訟を起こすには、法律に定められた離婚原因が必要です。民法第770条第1項では、5つの離婚原因を挙げています。

  • ・配偶者に不貞な行為があったとき
  • ・配偶者から悪意で遺棄されたとき
  • ・配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  • ・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • ・その他婚姻を継続しがたい重大な事由

「悪意で遺棄された」とは、不当に同居しない、生活費を払わない、夫婦の協力義務を果たさないというようなことです。ギャンブルや浪費で勝手に借金を増やし、生活費を払わないというような夫であれば、この条件に当てはまります。

「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」には、暴力、暴言、精神的虐待などが含まれます。夫が浪費やギャンブルで借金を繰り返し、つらい思いをしているということであれば、この「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして、離婚訴訟を提起します。

なお、離婚訴訟の途中で、夫婦が離婚することを合意し、離婚条件でも合意できた場合には、和解で離婚します。合意できない場合、夫の借金の状況などが、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」であると裁判所が認めれば、裁判離婚することができます。

離婚する場合、借金はどうなるの?

離婚しても借金を返済しないといけないことはあるの?

借金とは、お金を借りて返済する契約をしたということです。そこで、誰がお金を借りる契約をしたのかが重要です。

夫が銀行やサラ金と契約して借りたものは、夫が返済しなければなりません。夫と契約した銀行やサラ金は、原則として、妻に返済を請求することができません。債権者は、原則として、お金を貸した相手が離婚したかどうかなど関係なく、契約した相手に返済請求をします。

もっとも、婚姻中は「日常家事債務」という概念があります。日常家事債務とは、家族の食料、衣料などの買い入れ、光熱費、家賃、教育費の支払いなどのための債務のことで、これらは、夫婦が連帯して責任を負うことになります。そして、離婚するときには、借金は「財産分与」として考える必要があります。

財産分与とは、婚姻期間中に築き上げた財産を分け合うことです。この「財産」には、プラスのものだけでなく、マイナスのものも含まれますから、婚姻生活のための借入も含まれます。

「婚姻生活のための借入」とは、住宅ローンや生活費のための借金のことです。浪費やギャンブルのための借金は、そもそも「婚姻生活のための借入」ではないので財産分与の対象にはならず、離婚後も借りた人が返していくだけです。

財産分与では、「婚姻生活のための借入」をした人に多めに財産を分けることで解決します。例えば、婚姻中にためた預貯金が300万円あって、夫が生活費のために借り入れた借金の残りが100万円である場合には、預貯金を夫が200万円、妻が100万円というふうに分けることで平等になります。

もっとも、生活費のために借金をするような場合には、預貯金はないことが多いでしょう。夫の立場からすれば、生活費のために100万円借金したのだから、離婚するときには、妻にも半分負担してもらいたいと思うかもしれません。この部分は、法的にはっきりと決着がついているわけではないのですが、マイナスだけを分け合うことはできないというのが多数説です。この場合には、借りた人が離婚後も返していかなければしようがありません。

住宅ローンなど一緒に借金した場合は離婚しても返済しないといけないの?

離婚のときに一番問題になるのは、自宅と住宅ローンの問題です。住宅の価値が残ローンの額を上回っている場合、例えば、夫名義の住宅の時価が3,000万円で、夫名義の住宅ローンの残高が2,000万円であれば、夫はプラスの価値の半分である500万円を財産分与として妻に払います。

問題はオーバーローンのとき、例えば、夫名義の住宅の価値が1,000万円しかないのに、夫名義の住宅ローンが2,000万円あるときです。この場合も、例えば、別に夫婦の預貯金が2,000万円あれば、夫が1,500万円、妻が500万円をもらえば、公平に解決できます。

一方、夫婦に十分な預金がない場合には、マイナスの分配はできないというのが多数説ですので、夫が住宅ローンを支払い続けるしかありません。

自宅が夫婦共有名義になっていたり、夫婦が住宅ローンの連帯債務を負っていたりすると、解決が複雑になります。この場合には、「夫婦が協力して自宅を売却する」、「一方が、もう一方に持ち分を譲渡する」、「片方がローン組み換えをして、相手の債務の支払いをする」、「自宅に住み続ける方が、事実上、相手の分の住宅ローンも支払い続ける」などの方法が考えられます。

どういう方法が一番いいのか、また、どういう方法を取ることができるのかは、どちらがその家に住みたいのか、他に預貯金などの財産があるか、相手の分も含めてローンの借り換えができるかなどの所事情によりますので、このような場合の解決方法はケースバイケースになります。

勝手に自分名義で借金された場合、離婚しても返済しないといけないの?

そもそも、自分の名義が勝手に使われた場合、つまり、自分が契約していない場合には、支払義務がないというのが原則です。ただし、どのような経緯でそのような契約がなされたのか、代理権を与えたとみなされる行為をしていないか、追認していないか、勝手に契約されたことを証明できるかなど、いろいろと問題点があります。

自分名義の借金は、離婚をしたから払わなくてよくなるという問題ではありません。勝手に自分の名義が使われたと判明したら、すぐにでも、弁護士に相談するべきです。

相手が自己破産しても養育費や慰謝料を請求できるの?

離婚のときにせっかく、養育費や慰謝料の金額を決めたのに、そのあとで、相手が破産してしまったら、どうなるのだろう?という疑問を持つ人もいます。

養育費は、破産法第238条1項4号により、非免責債権(自己破産しても、支払う責任を免除されず、支払いを続けなければならない債権)であると規定されていますから、相手の自己破産には関係なく請求することができます。

慰謝料が、破産法第238条1項によって、非免責債権となるのは、「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」という要件に当てはまる必要があります。「悪意」とは、「故意」よりも強い概念で、他人を害する積極的意欲があった場合です。離婚に対する慰謝料、不貞行為に対する慰謝料などは、その具体的な内容にもよりますが、「悪意」であるとまでは認定されず、免責されることもあります。

まとめ

借金と一口にいっても、どのような借金かによって、離婚できるかどうかも異なりますし、財産分与でも扱いが異なります。そして、そもそも、借金があるということは、夫婦以外の第三者(債権者)が存在するということですので、法律関係が複雑になっています。離婚と借金に関しては、自己判断することなく、弁護士に早めに相談した方がいいでしょう。