離婚調停で弁護士に依頼したときに、弁護士費用がいくらなのかわからないこともあるでしょう。高額な場合は支払えるのか不安があります。そこで、離婚調停を弁護士に依頼した場合に弁護士費用がいくらくらいなのか、詳しく見ていきましょう。

離婚調停では弁護士をつける人は多いの?

離婚調停では、申立人の立場であっても相手方の立場であっても、弁護士に代理人を依頼することができます。弁護士を代理人に立てる人の割合はどのくらいなのか、見てみましょう。

平成16年の司法統計によると、当事者双方に弁護士が就いていた事件は8.4%、申立人のみに就いていた事件は13.0%、相手方の身についていた事件は3.6%でした。それが、10年後の平成26年の司法統計を見ると、当事者双方に弁護士が就いていた事件が19.5%、申立人のみに就いていた事件が22.7%、相手方のみに就いていた事件が4.8%となっています。全体を合わせると、弁護士が関与した離婚調停事件の割合は40%以上になっていることがわかります。

このように、この10年でも、離婚調停に弁護士が関与することはかなり増加したと言えます。離婚調停で弁護士をつける人は、非常に多いと言えるでしょう。

離婚調停で弁護士に依頼するメリットは何?

離婚調停で弁護士に依頼すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?たとえば以下のようなことがあります。

相手との距離が遠くなり、より冷静に話を進められる

離婚調停では、間に調停委員が介在するので、相手と直接顔を合わせて話をすることはありません。このことにより、お互いが冷静になって話を進めやすいと言われています。

しかし、自分で離婚調停に臨んでいる場合、調停委員から相手の言い分が直接伝えられますし、一人でその言葉を受け止めないといけないので、感情的になりやすいし、疲れます。ここで調停弁護士に離婚調停を依頼すると、自分の味方である弁護士がワンクッションおいてくれるので、相手の言っていることも冷静に受け止めやすくなり、話合いを進めやすくなります。

法律的なアドバイスを受けられるので不利にならない

離婚調停では、いろいろな決定をしなければならない場面があります。相手が主張や提案をしてきたり、調停委員が解決案を提示してきたりすることもあり、それらを受け入れるかどうかを決めなければなりません。

このようなとき、離婚調停に一人で臨んでいたら、適切に判断することができずに間違った決定をして、後で後悔することがあります。そこで弁護士に依頼すると、法律的な観点から適切なアドバイスを受けることができて、間違った判断をせずに済み、不利になることを避けられます。

精神的に楽になる

離婚調停では、相手と直接顔を合わさないとは言っても大きなストレスがかかります。調停委員から伝えられた相手の言い分に腹が立つこともありますし、相手への反論を考えることにも疲れます。

このようなとき、弁護士に調停代理人を依頼していたら、「法律のプロが味方してくれている」ということで、とても気持ちが楽になります。

面倒な手続きをしてもらえる

離婚調停の手続きは、けっこう面倒な部分があります。まずは調停申立書を作成して、資料を整えて印紙と郵便切手を購入して家庭裁判所に提出しないといけませんし、期日の調整などの裁判所とのやり取りも必要です。

自分でこういった手続きをするのが面倒なので、調停をせずに離婚問題を放置してしまう人もいます。ここで、弁護士に離婚調停を依頼すると、面倒な手続き関係はすべて弁護士がしてくれるので、大きなメリットがあります。

交渉のプロが、有利に話し合いを進めてくれる

弁護士は示談や調停などの交渉のプロです。そこで、法律的な知識を駆使して、依頼者の有利になるように調停を進めてくれます。素人がひとりで対応していると、必要な主張ができずに気づかない間に不利益を被っていることもありますが、弁護士に依頼するとそのような問題を避けることができます。

DVやモラハラ事案でも安心

離婚調停では、DVやモラハラ事件も多いです。これらの事件では、妻がひとりで離婚調停を起こすととても危険ですし、いろいろな困難が伴います。たとえば、家庭裁判所の前で待ち伏せをされて急に襲われることもありますし、家庭裁判所内で顔を合わせる可能性が絶対ないとは言えません。

そもそも、相手がいる建物と同じ場所に行くのがこわくて、離婚調停を起こせないDV被害者もたくさんいます。こんなとき、弁護士に依頼していたら、弁護士が常に一緒に行動してくれて、家庭裁判所の内外で相手と絶対に顔を合わせることがないように守ってくれます。実際に、DVやモラハラの被害者は、離婚調停を起こすとき、多くのケースで弁護士に依頼しています。

離婚調停は経験豊富な弁護士にお任せください

離婚調停を弁護士に依頼するデメリットは何?

次に、離婚調停を弁護士に依頼するデメリットを見てみましょう。これについては、弁護士費用の問題が大きいです。次項以下で詳しく説明しますが、離婚調停を弁護士に依頼すると、数十万円単位の費用がかかることが普通です。

相手から財産分与や慰謝料などのお金がもらえた場合でも、そこから弁護士費用を支払わなければならないので、自分の取り分は減ってしまいます。また、弁護士費用は、各弁護士事務所によっても異なりますし、計算方法も一般にはあまり周知されていないので、具体的にどのくらいかかるのかの予想がしにくく、トラブルが起こることもあります。そこで、弁護士費用がかかることは弁護士に離婚調停を依頼するデメリットの1つと言えます。

他にデメリットがあるとすれば、弁護士選びに失敗する可能性があることです。弁護士にもいろいろな人がいて、離婚問題が得意な人もいればそうでない人もいます。親身になって話を聞いてくれる人もいれば、そうでない人もいます。

離婚事件があまり得意ではなく、人の話をあまり聞いてくれず、費用も高い弁護士に離婚調停を依頼してしまったら、調停を弁護士に依頼するメリットを受けることもできず、不利益ばかりが大きくなってしまいます。このようなデメリットを避けるには、当初から離婚問題に強く、良心的な良い弁護士を探すことが重要です。

離婚調停の弁護士費用はいくらくらいなの?

離婚調停にかかる弁護士費用は、具体的にどのくらいになるのでしょうか?弁護士費用は、今は自由化されているので、具体的な費用は依頼する事務所によって異なりますが、だいたいの相場があります。

相談料の相場は30分5000円(+税)

弁護士に調停を依頼する場合、まずは、離婚相談を受ける必要があります。このとき法律相談料がかかりますが、その相場は30分5000円(+税)となっています。ただし、今は多くの弁護士事務所で無料相談サービスを行っているので、そのようなサービスを利用すれば、法律相談料を支払わずに済みます。

離婚調停の着手金の相場は大体15万円~30万円程度

次に、離婚調停の着手金が必要です。着手金とは、事件を弁護士に依頼する際、当初にかかる費用のことです。着手金は原則一括払いであり、後で返ってくることはありません。離婚調停の着手金の相場は、大体15万円~30万円程度です。

離婚調停の報酬金は30万円程度かかることが多い

離婚調停では、報酬金も発生します。報酬金とは、事件が解決されたときに、その解決内容に応じてかかってくる費用のことです。まず、離婚が調停によって解決できたとき、報酬金として30万円程度かかることが多いです。

財産分与や慰謝料などで金銭回収ができた場合、だいたいその10%~15%程度が報酬金の相場となります。子どもの養育費などの約束を取り付けることができたら、養育費2年分の1割などが報酬金として加算されます。親権争いのある事件であれば、親権を獲得できたことによって報酬金が加算されるケースもあります。

日当の相場は、1日あたり3万円~5万円程度

弁護士費用には、日当もあります。日当とは、弁護士が遠方に出張をして時間を取られることに対する報酬です。たとえば、東京の弁護士が青森の裁判所に行った場合などには日当がかかります。これは、交通費などとは異なる弁護士への手当です。日当の相場は、1日あたり3万円~5万円程度です。

離婚調停でかかる実費

最後に、実費もかかります。実費は、事件処理のために実際にかかる費用のことで、たとえば印紙代や郵便切手代、交通費などです。実費は弁護士に依頼しなくてもかかるので、厳密な意味では弁護士費用ではありませんが、一般的に弁護士費用に含めて考えられていることが多いです。

離婚調停を申し立てる際、基本的に1200円の収入印紙(事案によって加算があります)と1000円程度の郵便切手が必要です。これと、家庭裁判所の往復の交通費がかかる程度です。遠方の裁判所で調停が行われる場合には、交通費が必要です。弁護士が遠方に出張した場合には、実費(交通費)と日当の両方がかかることになり、依頼者には大きな負担がかかることが多いです。

協議離婚でも弁護士に依頼できるの?

協議離婚とは

離婚の話合いをするとき、調停ではなく協議離婚を進めることも多いです。協議離婚とは、夫婦が当事者同士で話合い、離婚条件を取り決めて、役所に離婚届を提出する方法で離婚する離婚方法のことです。

日本では離婚する夫婦のうち、8割以上が協議離婚によって離婚していると言われており、もっともメジャーな離婚方法です。協議離婚する場合、子どもの親権さえ決めれば離婚届けの提出だけで離婚ができるので、慰謝料や財産分与などのその他の細かいと決めをする必要はありません。

ただ、後々のトラブル防止のためには、協議離婚のケースでも、必要事項についてきちんと取り決めて合意書を作成しておくべきです。

協議離婚での弁護士費用はいくらくらい?

協議離婚でも、相手ときちんと話し合って離婚条件を取り決めておくべきですが、その交渉の代理人を弁護士に依頼することもできます。協議離婚での弁護士費用は、どのくらいになっているのでしょうか?

協議離婚の着手金は大体10万円~20万円程度

これについても、離婚調停の場合と基本的な考え方は同じです。まずは法律相談料がかかりますが、無料相談を利用すれば負担はありません。協議離婚の場合、着手金は大体10万円~20万円程度となります。

協議離婚の報酬金は大体20万円~30万円程度

報酬金については、離婚が成立した場合の基本的な報酬金が20万円~30万円程度、財産分与や慰謝料などの支払いを受けられた場合にはその10%~15%くらいがかかります。養育費の約束ができた場合や親権をとれた場合の加算も、離婚調停の場合と同じです。

協議離婚の場合は日当や実費はあまりかからない

協議離婚の場合、裁判所に行く必要がないので日当がかかることは少ないですが、夫が遠方に住んでいて出張が必要になったケースなどでは日当がかかります。料金は離婚調停のケースと同じです。協議離婚の場合、実費はあまりかかりません。相手とのやり取りにかかる郵便の費用くらいでしょう。

離婚調停でも決着がつかないときはどうすればいいの?

離婚調停をしても、必ずしも相手と離婚できるとは限りません。相手が調停に出てこないこともありますし、調停で話し合ってもお互いの意見が合わず、合意できないこともあります。

このように、離婚調停でも決着がつかない場合、調停は「不成立」となって、そのまま終わってしまいます。自動的に裁判が始まることなどもなく、そのまま中途半端な状態になってしまうということです。

離婚訴訟を行う

ここで、一歩先にすすめて離婚するには、離婚訴訟をする必要があります。離婚訴訟とは離婚を求める裁判のことであり、家庭裁判所で行われる裁判手続きです。離婚訴訟を起こす場合には、訴状という書類を作成し、戸籍謄本と関連する証拠などを揃えて家庭裁判所に提出します。

訴状には、法律的に整理した内容でこちらの主張や求める結論を記載しなければなりませんし、裁判手続きでは、適切に主張と立証を行う必要もあります。離婚訴訟は離婚調停に比べてかなり専門的な手続きなので、弁護士に依頼せずに自分一人で手続きを進めることはかなり難しいです。

一人でもできないことはありませんが、相手は弁護士を立ててくるでしょうし、そうなったらこちらはかなり不利な状態になってしまいます。離婚訴訟で有利な条件を勝ち取りたいなら、離婚問題に強い弁護士を探して依頼することが必要です。

離婚裁判での弁護士費用の相場はいくらなの?

離婚裁判とは

離婚裁判とは、先に説明した離婚訴訟のことです。離婚調停で離婚問題が解決できない場合には離婚訴訟をする必要があります。ここで、そもそも調停が成立する見込みがないから、はじめから離婚訴訟をしたい、という方がたまにいます。

調停前置主義

しかし、そのようなことは原則的にできません。日本では、離婚問題は訴訟前に必ず調停を先にしなければならないという調停前置主義があるからです。よって、相手との対立が激しく、調停が成立する見込みがなくても、一応離婚調停のステップを先に踏んでおくことが必要になります。離婚の手続きを理解する上で、意外と重要な点なので、押さえておきましょう。

離婚裁判の弁護士費用の相場はいくらなの?

離婚裁判の弁護士費用は、どのくらいになっているのでしょうか?これについても、費目としては協議離婚や調停離婚の場合と同様です。

まず着手金がかかりますが、裁判離婚の場合、だいたい30万円~50万円程度となります。離婚ができた場合の報酬金は、だいたい30万円~60万円程度です。相手から財産分与や慰謝料などの金銭回収ができたら、その15%程度が報酬金となることが多いです。養育費や親権が獲得できた場合に加算が行われる点もその他の手続きと同様です。

裁判離婚の場合、実費として裁判所に納める印紙代と郵便切手代が多少高くなります。印紙代としては、最低13000円かかりますし、慰謝料などの金銭請求をする場合には請求する金額に応じて印紙代が加算されます。たとえば500万円の慰謝料請求をする場合には3万円の収入印紙が必要となります。

また、5000~7000円程度の郵便切手も必要です。裁判所が遠方ならその交通費と弁護士の日当が必要になります。裁判中に尋問などが行われて、裁判記録の謄写(コピー)が必要になる場合には、謄写費用(実費)として数千円程度かかります。

まとめ

以上のように、離婚手続きにかかる費用は、ケースや利用する手続きによって大きく異なります。協議離婚から調停離婚、さらに裁判離婚へと進んだ場合、それぞれの手続きにおいて着手金が必要になってくるので、大きな負担となることも多いです。ただ、引き続いての依頼の場合には、着手金を減額してもらえる事務所もたくさんあります。

離婚において何を請求するのか、どのような結果を獲得できたかなどによっても弁護士費用は大きく異なってきます。離婚を有利に進めたいなら、離婚問題に強く、費用については良心的な事務所を探す必要性が高いです。自分では、どのような手続きを利用してどのような請求を立てれば良いのか、分からない方が多いでしょう。離婚問題で迷ったら、一度離婚問題に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。