テレビを見ていると「ハリウッドスターが慰謝料1億円で離婚した」というニュースを目にすることがあります。慰謝料というのは、実際にそんなにもらえるものなのでしょうか?離婚の慰謝料の相場とは、一体どれくらいなのでしょうか?一言で「不倫」といっても、様々な形態があります。それでは、一体どのような場合に慰謝料が高額になるのでしょうか?

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浮気・不倫の状況によって、請求できる金額は変わってくる

慰謝料という言葉はよく耳にする言葉ですが、実は日本の法律には慰謝料の具体的な算定基準が定められているわけではありません。もちろん、裁判になれば、裁判官がいくつかの事情を考慮したうえで、金額を決定します。それでは、その「事情」とは、一体何なのでしょうか。

浮気・不倫が原因で離婚することになった

慰謝料とは、「精神的な苦痛を慰謝するための金銭」です。つまり、「夫が不倫したことによって辛い思いをしたから、お金をもらうことによって解決しよう」というものです。もし不倫が原因で離婚する場合は、「不倫が無ければ離婚するなんて考えなかった。不倫のせいでとても辛い思いをした」ということになるので、苦痛の程度は大きくなります。そのため、慰謝料の額も高額になります。

離婚はしないけど慰謝料は欲しい

一方、「夫が不倫したのは事実だが、離婚はしない」という場合は、慰謝料の金額は安くなってしまいます。離婚する場合の慰謝料に比べると、半額以下だと言われています。「離婚をしないということは、夫婦関係に与えたダメージが小さいのだろう」と考えられてしまうからです。

離婚慰謝料が減額される理由

結婚生活が長い

婚姻期間が長ければ長いほど、傷の深さは大きくなると考えられ、慰謝料は高額になります。逆に、婚姻期間1~2年程度で短ければ、浮気によるショックも小さいと考えられてしまい、慰謝料は低く抑えられてしまいます。

浮気・不倫された期間が長い

浮気の程度が悪質であればあるほど、裏切られた人の精神的ショックは大きくなるので、慰謝料は高額になります。浮気の悪質さは、浮気の期間や回数に比例します。浮気の期間が長ければ長いほど、浮気の回数が多ければ多いほど、慰謝料の金額は上がっていきます。もっとも、浮気の期間や回数については、具体的な証拠が無ければ認められません。浮気の証拠は、慰謝料を請求する側が提出しなければなりません。

浮気の証拠集めは探偵に依頼しましょう

何度も浮気・不倫を繰り返す、復縁される

浮気の悪質さは、裏切りの程度にも比例します。例えば、「過去に浮気が発覚したことがあり、二度と浮気をしないと約束したのに、約束を破って浮気を繰り返した」という場合、相手に対する裏切りの程度は大きいので、慰謝料は高額になります。

子どもがいる家庭なのに不倫(浮気)された

夫婦間に子供がいる場合はどうでしょうか。子供がいる場合は、「不倫によって子供にまで精神的な傷を負わせた」「子供がいれば、離婚後の生活は大変なものになるだろう」と考えられるため、慰謝料は高くなります。子供が幼ければ幼いほど、精神的に傷つきやすい年頃であるため、慰謝料は高額になります。また、子供の数が多いほど、不倫による被害者が多いということになるので、慰謝料は高額になります。

不倫相手、もしくは不倫した夫(妻)の資産が多い

不倫した人の年収が高い場合はどうでしょうか。「慰謝料100万円」と一言でいっても、年収300万円の人が支払う場合と、年収1億円の人が支払う場合では、意味が全く異なります。そこで、慰謝料を支払う人の年収が高ければ、慰謝料を増額する要因の一つと考えられることがあります。もっとも、「年収が2倍であれば慰謝料が2倍になる」というわけではありません。「年収が低い人よりは、年収が高い人の方が、高い慰謝料を支払う傾向にある」という程度にとどまります。

財産分与と慰謝料は別々?一緒?

財産分与と慰謝料は、全く別のものです。混同しないように気をつけましょう。財産分与とは、「婚姻期間中に、二人で協力して積み上げた財産がある。今後は別々に生活することになるので、二人で分けて清算しましょう」という制度です。

例えば、夫の給料を夫名義の銀行口座に預金していた場合は、夫は妻に財産分与を行わなければいけません。例え夫が働いた給与で貯蓄をしていたとしても、夫は妻に財産分与として金銭を支払わなければいけません。これに対して、慰謝料は「相手を精神的に傷つけてしまった人」が支払うものなので、夫婦の財産分与に関わることなく、不倫した夫(妻)が相手に支払います。

不倫(浮気)相手が未成年や無収入でも、慰謝料は請求できる?

それでは、不倫した相手にめぼしい資産が無い場合はどうなるのでしょうか?もちろん、相手が無職であっても破産者であっても、慰謝料を請求することは可能です。もっとも、このような場合は、相手が支払いを渋ることが多いので、どのようなタイミングで請求し、どのような方法で支払ってもらうのか、慎重に検討しなければなりません。分割払いを提案したり、肩代わりしてくれる人を見つけてもらうなど、交渉にはテクニックが必要です。

不倫(浮気)相手が未成年の場合

不倫相手が未成年の場合はどうでしょうか。日本の法律では、未成年者だからといって慰謝料を支払う義務がないということにはなりません。ただし、「自己の責任を弁識するに足りる知能がない」という場合に限って、慰謝料を支払う義務を負いません。一般的には、11才から12才程度であれば、責任弁識能力があると考えられています。

つまり、不倫相手が中学生や高校生の場合でも、慰謝料を請求することができるのです。もっとも、中学生や高校生の場合は、収入や資産がないので、本人が支払うことができない場合がほとんどです。このような場合は、両親や兄弟に肩代わりしてもらうように交渉することが一般的です。

不倫(浮気)相手が無収入、低収入の場合

相手が無収入の場合でも、諦める必要はありません。まずは相手と話し合いましょう。相手が「収入が無いから支払うことができない」と言っても、「慰謝料の支払い義務と収入とは無関係だ」と説得しましょう。注意すべき点は、「相手が慰謝料の支払いを免れるために、無収入だと嘘をついている可能性がある」ということです。相手が「収入が低くて支払えない」と言う場合は、必ず給与明細書を確認しましょう。もし相手が「収入が無い」という場合は、確定申告書を提出してもらいましょう。

もし上記の書類をチェックしたうえで、現在は無収入であることが確定しても、将来的に仕事に就く可能性があるのであれば、必ず公正証書を作成しておきましょう。公正証書があれば、将来相手が就職したときに、相手の給与を差し押さえることができます。

養育費や慰謝料を給与差し押さえで払ってもらう方法と注意点

不倫・浮気慰謝料は誰に請求できる?

慰謝料を請求するパターンとしては、下記の3通りがあります。

  • 1)不倫した夫(妻)のみに請求する
  • 2)不倫相手だけに請求する
  • 3)不倫した夫(妻)と不倫相手の双方に請求する

一般的には、不倫した夫(妻)と不倫相手の双方に請求するケースが多いです。

不倫慰謝料請求をするときに確認しておくべき5つのポイント

浮気した夫(妻)に請求する

まず、不倫した夫(妻)に請求する場合を考えてみましょう。気をつけなければいけないのは、「夫婦関係が破綻する前の不倫」でなければ、慰謝料は認められません。 例えば別居している場合は、別居後の不倫については、慰謝料が認められません。この場合は、「既に夫婦関係が破綻しているのだから、お互い誰と付き合おうと、傷つくことはないだろう」と考えられるからです。

不倫相手だけに請求する

不倫相手に慰謝料を請求するときは、相手が「既婚者だと知っていた」「既婚者だと容易に推測できる状態だった」ということが必要です。例えば社内不倫の場合には、その人が結婚していることが社内に知れわたっていることが一般的なので、この条件が問題になることはありません。他にも、例えば高校の同級生の場合には、共通の友人がたくさんいるので、噂で既婚者だと知っていた可能性が高いと考えられます。このような場合には、相手が「既婚者だと思わなかった」と言い訳しても、通用しません。もちろん、この場合についても、「夫婦関係が破綻していた」と判断されると、慰謝料が認められません。

不倫した夫(妻)と不倫相手の双方に請求する

不倫相手と不倫をした夫(妻)は、「共同不法行為者」として連帯債務を負います。 「連帯して責任を負う」ということなので、双方は運命共同体であり、二重に責任を負わせることはできません。

例えば、不倫の慰謝料が200万円の場合、不倫した夫(妻)から200万円を受け取ってしまうと、不倫相手には1円も請求することはできなくなってしまいます。各自に100万円ずつ請求することは可能です。慰謝料を請求する場合は、どのような順番で、誰に請求するのか、慎重に検討しましょう。

結婚するって言ったのに約束を破られた!不倫相手に慰謝料請求できる?

不倫を行った者同士の間では、原則として慰謝料を請求することはできません。たとえ男性が「妻との仲は冷えきっている」「既に妻とは離婚した」と嘘をついていた場合でも、慰謝料請求が認められることはありません。もっとも、慰謝料を請求する余地が全く無いわけではありません。不倫している男性が結婚していることを隠していて、不倫相手がその言葉を信じて子供を産んで育てている場合や、男性との再婚を信じてローンを組んで結婚後の生活のためにマンションを購入したなど、男性の行動が相当程度に悪質であると判断されれば、慰謝料請求が認められる可能性もあります。

ダブル不倫だった場合は注意!慰謝料を相殺・減額されるかも

ダブル不倫の場合は、慰謝料の支払いはどのように行われるのでしょうか。ダブル不倫とは、「既婚者同士が不倫すること」を意味します。つまり、あなたの夫が不倫して、その不倫相手も既婚者であるという場合です。もちろんこのような場合にも、互いの夫婦間で慰謝料を請求しあうことができます。

この場合、双方同額の慰謝料になるとは限りません。例えば、男性側が女性側に対して積極的にアプローチした事で結果的に不倫関係になったとしたら双方において多少の増減が発生する事もあります。

しかし、それほど大きな増減がない限り、結果としてはお互いの夫婦間でお金を交換しただけ、ということになります。お互いにとってプラスにもマイナスにもなることはありませんので、あまり意味がある行為とはいえません。

不倫(浮気)慰謝料の相場のパターン

以上の通り、慰謝料の金額というのは、不倫の状況によって大きく変動します。一般的には、慰謝料は50万円から300万円の範囲におさまることが多い、と言われています。それでは、どのような場合にどれぐらいの金額になるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

~100万円になる場合

比較的精神的苦痛が軽いとみられるケースでは、慰謝料は50万円から100万円におさまります。例えば、離婚も別居もしない場合や、不倫の期間が短い場合や、結婚期間が短い場合などが考えられます。

~300万円、それ以上になる場合

精神的苦痛が大きいと認められれば、慰謝料は高額となり、100万円から200万円ほどに値上がりします。例えば、夫婦関係が良好であったのに不倫が原因で離婚することになった場合や、婚姻期間が10年から20年にも及ぶ場合や、長期間にわたって繰り返し不倫された場合などが挙げられます。不倫相手との間に子供がいる場合など、不倫の程度が悪質だと認められれば、300万円ほどの高額な慰謝料が認められる可能性が出てきます。

弁護士を入れるメリット

慰謝料の請求は、当事者同士の話し合いで決めることもできます。しかし、話し合いの場で不倫を認める人は少ないですし、容易に慰謝料の支払いに応じる人は非常に稀です。不倫をされたという事実だけでも非常に辛いことなのに、ご自身で慰謝料の請求をするとなると、さらに大きな精神的な傷を負うかもしれません。ご自身で交渉をするのではなく、弁護士に相談するとどうなるのでしょうか。弁護士に依頼することでどのようなメリットがあるのか、考えてみましょう。

示談で相場より多く不倫(浮気)慰謝料が取れる場合がある

一般的に、当事者で話し合うよりも、弁護士を代理として行った方が、慰謝料の金額が増加する傾向にあります。また、裁判となった場合、裁判官が不倫の証拠を慎重に検討し、不倫の悪質さや裏切りの程度など、様々な要素を考慮して決定しますが、弁護士が代理人として交渉するよりも少なくなる可能性があります。そもそも当事者同士の話し合いでは、不倫を認めさせることも大変ですし、相手方との連絡もままならなくなるなど相当な時間がかかってしまうと思われます。

相手が不倫を認めないなど、示談がまとまらないときに有効

また、話し合いの場で「慰謝料を支払う」と口約束で言われても、実際に支払われる保証はありません。後になって相手の気が変わってしまえば、慰謝料を受け取ることはできません。弁護士に依頼した場合は、弁護士が交渉過程を記録するので、相手が支払わないと言い出した場合にも、証拠を突きつけることができます。また、弁護士は慰謝料の交渉に関するノウハウを持っていますので、相手に支払意思が無いと認めれば、さっさと見切りをつけて裁判を行うことができます。

代理人~相手と会いたくない、無用なトラブルを避けたいときに~

不倫は信頼している配偶者に裏切られることであり、非常にショッキングな出来事です。そんな中で顔を合わせて話し合いを進めようとしても、冷静に話し合うことは非常に困難です。話し合いによって、余計に関係がこじれてしまうことも珍しくありません。そんなとき、弁護士に交渉を依頼しておけば、相手と直接顔を合わせなくてすみますし、弁護士は交渉のエキスパートですので、適切な金額で交渉をまとめてもらうことができます。慰謝料の話し合いは、当事者間で解決するのではなく、まずは弁護士に相談しましょう。

弁護士を入れるデメリット

弁護士費用がかさみ、慰謝料をとれてもマイナスになってしまうかも

弁護士に依頼すると、弁護士にお金を払わなければなりません。弁護士費用の内訳は、「着手金」と「成功報酬」です。「成功報酬」は、交渉が成功して慰謝料が支払われたときに支払う報酬ですので、慰謝料がもらえなかった場合は、支払う必要がありません。「着手金」は、相手方と交渉を行うこと自体に対する報酬ですので、慰謝料がもらえなかったとしても、支払わなければいけません。一般的な相場としては、着手金は数十万円、成功報酬は慰謝料の20%から30%程度です。

多少費用をかけても、不倫相手や不倫した夫(妻)をこらしめたい!

不倫は結婚相手に対する劣悪な裏切り行為です。費用が多少かかったとしても、相手に反省を促し、あなた自身が前向きに新しい生活をスタートさせるためにも、慰謝料の請求をしておきましょう。弁護士に頼むと費用はかかりますが、ご自身で交渉するよりも格段にスムーズですし、相手と顔を合わせる必要もないので、精神的な負担を負わなくてすみます。

依頼する弁護士を探す労力がかかる

通常の生活をしている方なら、「今まで弁護士に会ったことはない」という方がほとんどでしょう。いきなり弁護士を探そうとしても、どのような弁護士に頼めばいいのか、信頼できる弁護士とはどのような人なのか、判断することは困難です。誰かに相談しようと思っても、不倫や離婚の話となると、家族や友人には話しにくいでしょう。お金がかかることが不安であれば、無料相談をやっている弁護士を探してみましょう。無料であれば安心ですし、時間を気にすることなく気軽に相談することができます。

ただ、弁護士がすべての事件に精通しているわけではありませんし、年齢が高いほど経験があるとは限りません。可能なかぎり専門的且つたくさんの事件処理をしている弁護士に相談してみましょう。

まとめ

不倫による慰謝料の相場をまとめると、

  • ・不倫による精神的苦痛が多いければ慰謝料の金額も上がっていく
  • ・慰謝料を請求できる相手は、不倫をした夫(妻)と不倫相手
  • ・一般的な相場としては、50万円から300万円程度

ということになります。個別的な事情によって、慰謝料の金額は異なりますので、慰謝料について悩んでいる方は、まずは専門家に相談してみましょう。