近年の熟年離婚に関する統計データによると、年間4万件以上の熟年離婚が起きていると言われております。なぜ、これほどまでに熟年離婚が増えているのでしょうか。熟年離婚する理由について見ていきましょう。

熟年離婚を切り出すのは夫婦のどちらから

熟年離婚は妻から切り出す方が圧倒的に多い

熟年離婚とは、一般的に「結婚期間が20年以上にわたる50代以上の夫婦が離婚すること」を指します。
熟年離婚の特徴は、「妻から離婚を切り出すことが非常に多い」という点です。特に専業主婦の場合、生活費を夫に頼っていることが多いため、結婚生活に不満を抱えていても、なかなか離婚を切り出すことはできません。しかし、夫の退職や子供の自立をきっかけとして、離婚を決意する女性が多いのです。

熟年離婚は男と女どちらがダメージを受けるか

熟年離婚を切り出された男性は、突然の離婚の申し出に慌ててしまいます。妻としては、長年の不満が積もったすえに離婚を切り出すのですが、夫にとっては晴天の霹靂です。多くの男性は、「働いている間は忙しくて家庭を顧みなかったから、老後は妻と二人でゆっくり過ごそう」と思い描いているのですが、このような夢は熟年離婚によって打ち砕かれてしまいます。このような理由から、熟年離婚は男性にとってダメージが大きい傾向にあります。

熟年離婚する理由・原因

価値観の違い

熟年離婚の原因として一番多いのは、「価値観の違い」です。結婚当初から価値観の違いを感じていても、離婚を決意するまでには時間がかかってしまいます。すぐに離婚に踏み切ることができず、長い間結婚生活に耐えていた、というケースは珍しいことではありません。
また、20年前には「離婚」というとイメージが悪く、世間から白い目で見られたものです。親戚から非難されることや近所で噂されることを気にして、離婚に踏み切ることができなかった女性はたくさんいます。
しかし、最近は離婚の件数も増加し、離婚に対するマイナスのイメージも無くなりました。世間の目を気にする必要が無くなったので、熟年離婚を決断した、ということが多々あります。

性格の不一致

熟年離婚の原因として意外に多いのが、「性格の不一致」です。20年以上もの間一緒に暮らしているのだから、お互い気心が知れているだろう、というイメージがあるかもしれませんが、実際はそうではありません。長く暮らせば暮らすほど、性格の不一致のストレスは大きくなるのです。
たとえ小さな性格の不一致であっても、長年そのズレを感じ続けていれば、積もり積もって大きなストレスとなってしまいます。
また、子育てをしている間は、子どもが緩和剤となり、お互いの性格を見過ごすことができるかもしれません。しかし、子供が一人暮らしを始めて、夫婦二人で生活をするようになると、お互いの性格と向き合わなければいけなくなり、性格の不一致に耐えられなくなる、というケースもよくあります。

舅・姑と合わない、介護がつらい

女性が熟年離婚を考えるきっかけとして多いのが、「舅や姑と合わない」ということです。舅や姑とトラブルを抱えていると、夫の性格自体に不満が無くても、夫への不満が募ってしまいます。例えば、夫が姑との話合いに立ちあってくれない場合や、夫が舅や姑の肩ばかり持つ場合には、夫へのストレスがたまってしまいます。

さらに、熟年夫婦の場合は、舅や姑の介護が現実の問題として迫ってきます。介護は365日24時間休みの無い、非常に過酷な仕事です。妻としては、子供が自立してようやく自分の時間が持てると思ったところに、義父母の介護を強いられるので、将来に対する不安が大きくなってしまいます。「いつになったら自由な時間ができるのだろうか」という不安が募り、介護の問題から逃れるために熟年離婚に踏み切る、というケースも増えています。

夫婦の会話がない

新婚当初は二人で楽しく会話が弾んでいても、子どもが生まれると、どうしても子どもの話題が中心になってしまいます。子育てをしていると、夫婦二人で会話する機会が無くなってしまいます。そのような状況で、急に子どもが自立することになると、二人だけで何を話したらいいのか分からなくなってしまい、夫婦の会話が無くなってしまいます。

会話の無い相手と一緒に暮らすというのは、相当なストレスです。特に女性にとっては、おしゃべりをすること自体がストレス解消となる人が多いので、会話が無い相手と同じ空間にいることを苦痛に感じてしまいます。反対に、多くの男性は会話が無いことを特にストレスと感じませんので、事態が改善されることはありません。このような中でますます女性の孤独が募っていき、最終的には「会話の無い相手と一緒に暮らす意味は無い」と考えるようになり、熟年離婚に至ります。

夫の収入の減少

夫が仕事をしている間は、夫婦生活に不満があっても、「生活費を稼いでくれているから我慢しよう」「仕事が忙しいからしょうがない」と耐えることができます。
しかし、夫が退職して収入がなくなると、急に夫が頼りなく見えたり、一日中夫が家でごろごろしていることにストレスを感じるようになり、熟年離婚を決意するケースが多々あります。

相手の浪費や借金

熟年離婚には金銭のトラブルがつきものです。例えば、ギャンブルによる借金がある夫婦のケースを考えてみましょう。結婚当初であれば、「そのうちギャンブルを止めるかもしれない」「話合いをすれば分かってくれるかもしれない」「二人でがんばって働けば借金を返せるかもしれない」と、前向きに考えることができます。
しかし、50代になると老後への不安も大きくなり、ギャンブルや借金に関するストレスが大きくなってしまいます。長年連れ添った相手に対する失望も大きくなり、「どうせ話し合っても無駄だろう」「この人がギャンブルを止めることはできないだろう」と諦めてしまいます。このような失望が熟年離婚につながるのです。
ギャンブルに限らず、妻が高級ブランド品を買いあさる場合など、女性の浪費癖が原因となって熟年離婚に至るケースもあります。

家事を全くしてくれないなど家庭を顧みない

夫が子供の面倒を見ない場合や、家事の手伝いをしない場合も、熟年離婚の原因となります。夫が働きざかりであれば、「外で忙しく働いているからしょうがない」と我慢することができます。しかし、夫が退職して一日中家にいるのに、家事を全く手伝わないのであれば、妻のストレスはたまってしまいます。
夫が家事を手伝おうとしても、家事に慣れていないために手間がかかり、かえって妻の負担が増えてしまう、という場合もあります。
また、たまに孫が遊びに来ても、夫が孫の面倒を見ない場合には、「子育てもしなかったうえに、孫の面倒も見ないのか」と、妻の不満が爆発してしまいます。

夫婦のスキンシップ(セックスレスなど)が無くなった

結婚当初は頻繁にスキンシップを取っていても、結婚生活が長くなるにつれ、夫婦の触れ合いは少なくなってしまいます。外で手をつなぐことがなくなり、夜の夫婦生活が少なくなり、最終的には言葉でのスキンシップも無くなってしまいます。このような場合に、夫婦としての愛情や絆を感じることができなくなり、熟年離婚に至るケースが少なくありません。
このようなスキンシップ不足のケースでは、夫が夫婦関係を改善しようと試みても、妻がすんなりと受け入れることができず、拒否してしまうことがあります。スキンシップ不足の解消は、一筋縄ではいかないのです。

モラハラやパワハラなど精神的・肉体的虐待

熟年離婚では、モラルハラスメントやパワーハラスメントを原因とするケースも多く見られます。モラルハラスメントとは、「妻は夫よりも先に寝てはいけない」「女性はおしとやかであるべきだ」など、個人の道徳や倫理観を相手に押し付けることです。
パワーハラスメントとは、「誰の金でメシが食えてると思ってるんだ!」など、夫が家計を握っていることを武器として、言葉の暴力によって相手を傷つけることです。

モラルハラスメントやパワーハラスメントにおいて、一つ一つの言葉は些細なものです。しかし、長い間このような言葉の暴力に耐えていると、少しずつ精神的な傷が大きくなってしまいます。
DV(ドメスティックバイオレンス)とは、「家庭内でふるわれる暴力」のことです。DVは、アルコール依存症の夫に多く見られる傾向です。多くの女性が、夫に暴力を振るわれながらも、子どもが小さいうちは離婚を我慢しています。「自分に暴力をふるう人であっても、子どもには父親が必要だろう」と考えるからです。しかし、子供が自立して、夫が退職すると、二人で過ごす時間が長くなります。このような場合、女性は「自分の身は自分で守ろう」と思い立ち、離婚を決断します。また、娘を持つ女性の場合には、「あんな父親とは離婚すればいい」と、娘から熟年離婚を勧められるケースもあります。

相手の浮気や不倫

夫婦生活が長ければ長いほど、お互いの信頼関係は大きくなります。このような強い信頼関係のある相手が、もし浮気していることが分かれば、裏切られたことのショックは相当大きなものとなってしまいます。
また、熟年離婚の場合は、「相手の浮気に長い間耐えてきたが、我慢の限界になった」という場合もよくあります。相手が浮気していても、夫の収入をあてにして離婚できないこともありますし、子供のために我慢することもあります。しかし、子供が自立し、夫が退職したことによって、浮気に目をつぶる必要がなくなり、熟年離婚を決意するのです。

不倫の慰謝料請求をするときに確認したい5つのポイントとは

女性の社会復帰

子供が自立すると、母親としての責任から解放され、パートや短時間勤務として社会復帰をする女性が増えています。このような場合、ある程度の収入を得ることができるので、生活費を夫に頼る必要がなくなり、社会人としての自分に自信を持つことができます。そこで、「夫にばかり依存する生活から抜け出したい」と考えて、熟年離婚に至るケースが増えています。

他に好きな人ができた

最近はSNSやインターネットの掲示板が幅広く普及したため、出会いの機会が増えています。専業主婦の場合でも、家にいながら世界中の人と交流することができます。このようにインターネットを通じて好きな人ができて、熟年離婚に至る、というケースも最近では珍しくありません。

熟年離婚が増加する要因

年金分割制度の整備により離婚後年金がもらえるようになった

年金分割の制度ができたことにより、離婚後にも妻が夫の支払った年金の一部を受給できるようになりました。これによって、専業主婦の女性も、老後の収入を一定程度確保することができるようになりました。つまり、「老後に夫の資産をあてにしなくてよい」ということなので、熟年離婚を後押しする流れとなっています。
年金分割の制度は、離婚後に夫が死亡したり、自分が再婚した場合でも、受給権を失うことはありません。ただし、「離婚してから2年以内に手続きをすること」が必要です。離婚する際には様々な手続きが必要となるので、うっかり忘れてしまう人が少なくありません。離婚する際には、年金分割の手続きを忘れないように注意しましょう。

子どもの自立

妻が熟年離婚を考える最大のきっかけは、「子どもの自立」です。特に専業主婦の場合、子育てにかける時間は24時間で、責任も重大です。このようなプレッシャーから解放されることは、自分自身の今後の人生を考える大きなきっかけになります。
子どもが小さいうちは、「離婚すると子どもがかわいそう」「離婚すると子どもの学費が払えない」など、たくさんの不安が先行します。結果として、多くの女性が離婚を踏み止まります。
しかし、子どもが大きくなると、子どもの学費や子どもの精神面の心配はなくなります。娘がいる人の場合は、娘から「お母さんの人生なんだから、お父さんと離婚したら」と離婚を後押しされることもあります。

自分の仕事がある

ある程度の収入がある女性は、離婚後の生活を心配する必要がないため、熟年離婚をしやすい状況にあります。最近は結婚後に社会復帰をする女性の数が増えており、専業主婦の女性が社会復帰しやすくなっています。このような社会状況は、女性の自立を後押しし、熟年離婚が増加する一因となっています。

熟年離婚の慰謝料請求の相場はいくらなの?

夫が不倫・浮気などの不貞行為をしていなくても慰謝料請求できるのか?

夫が浮気をしていた場合には、慰謝料を請求することができます。もちろん、慰謝料を請求できるのは、浮気の場合に限りません。身体的な暴力(DV)を受けていた場合や、精神的な暴力(モラルハラスメントやパワーハラスメント)を受けていた場合にも、慰謝料を請求できます。
また、夫が妻に生活費を渡さなかったせいで家計が困窮していた場合にも、悪意の遺棄を主張して、慰謝料を請求することができます。

身体的・精神的な暴力を受けた場合

身体的な暴力や精神的な暴力を受けていた場合、慰謝料の相場は50万から500万円だといわれています。大きく幅があるのは、一言で「暴力」といっても、様々な形態があるからです。
裁判になった場合は、「暴力の回数」や「暴力を振るわれるまでの経緯」や「ケガや後遺症の有無」など、様々な状況を考慮して、慰謝料が決定されます。
例えば、夫に散々暴力を振るわないように説得していたにも関わらず、何度も夫が暴力をふるった場合は、慰謝料は高くなります。また、夫からの暴力で骨折したり失明した場合にも、慰謝料は高額となります。

悪意の遺棄の場合

悪意の遺棄とは、「正当な理由がなく、夫婦の協力義務を果たさないこと」です。例えば、夫が家を出て愛人と同居しており、生活費を一切渡さない場合や、妻が入院しているのに看病を一切せず、治療費も払わない場合です。
悪意とは、「わざと」という意味です。つまり、「生活費が足りないと分かっていたのに、わざと生活費を渡さなかった場合」が対象となります。反対に、「妻が入院していることは知らなかったので、入院費を払わなかった」という場合は、悪意の遺棄には該当しません。

悪意の遺棄を受けた場合、慰謝料の相場は50万円から300万円といわれています。裁判になると、「悪意の遺棄をするに至った経緯」や「生活費を負担しない理由」など、様々な事情を考慮したうえで慰謝料の金額が決定されます。
一般的には、悪意の遺棄の期間が長ければ長いほど、慰謝料は高額になります。また、悪意の遺棄の程度が悪質であればあるほど、慰謝料は高くなります。

性格の不一致の場合

性格の不一致が離婚の原因である場合、慰謝料の請求が認められることはありません。慰謝料は、「相手を傷つけた人が支払うお金」です。性格の不一致の場合は、どちらか一方に非があるわけではありませんので、慰謝料の対象にはなりません。

離婚慰謝料請求の時効について

離婚による慰謝料請求には、時効があるので気をつけましょう。「離婚をした日から3年以内」です。「離婚をした日」とは、「離婚届を提出した日」です。離婚を切り出した日でもありませんし、離婚届にサインをした日でもありません。「離婚届を市役所や区役所に提出した日」です。

「3年」ときくと長い期間のようですが、慰謝料の交渉をしていると、あっという間に3年間が過ぎてしまいます。また、「離婚の傷が癒えたら慰謝料の話をしよう」と思っているうちに、気が付けば3年間が過ぎてしまった、というケースも珍しくありません。3年を過ぎてしまうと、慰謝料の請求は一切できなくなりますので、注意しましょう。
慰謝料の交渉は、離婚届を提出する前にしておくのがよいでしょう。離婚届を出す前であれば、まだ時効は進行していませんので、焦らずゆっくり交渉することができます。もし早い段階で交渉がまとまりそうであれば、必ず公正証書を作成しておきましょう。口約束だけでは、後で「言った」「言わない」の争いになってしまいます。
公正証書にはいろいろな形式がありますが、必ず「直ちに強制執行に服する」という文言を入れておきましょう。この文言があれば、相手が慰謝料を払わない場合に、面倒な裁判の手続きを省略して、すぐに強制執行をすることができます。これを「執行受諾文言」といいます。

まとめ

以上のとおり、熟年離婚の原因は様々です。一言で「熟年離婚」といっても、「どのような準備が必要か」「どのように手続きを進めるべきか」は、ケースによって異なります。熟年離婚でお悩みの方は、お早めに弁護士に相談しましょう。熟年離婚は特殊なケースですので、熟年離婚に強い弁護士にご相談することをおすすめします。熟年離婚について実績のある弁護士であれば、ご自身のケースに即した実践的なアドバイスを行ってくれますし、スムーズに熟年離婚の手続きを進めてくれます。