熟年離婚の財産分与には、対象となる財産と対象とならない財産があります。また、財産分与の割合はどのように決めるのでしょうか。夫の退職金も財産分与の対象となるのか、見ていきましょう。

目次

熟年離婚の財産分与はどのようなものがあるか?

夫婦の財産について

財産分与の対象になるのは、「夫婦の共有財産」です。共有財産とは、「結婚生活の間に夫婦で協力して獲得した財産」のことです。
反対に、「お互いが独自に取得した財産」は、財産分与の対象になりません。このような財産は、夫婦で協力して獲得した財産ではないからです。例えば、独身時代に得た収入は、財産分与の対象になりません。また、婚姻期間中に取得した財産であっても、親から相続した財産は、夫婦が協力して獲得した財産ではないので、財産分与の対象になりません。

コツコツ貯めたへそくりも財産分与の対象になるのか

へそくりが財産分与の対象になるかどうかは、へそくりの資金源によります。例えば、夫の給料を節約してコツコツ貯めたへそくりであれば、資金源は夫婦の収入なので、財産分与の対象になります。
これに対して、親から相続した財産を、夫に隠れて貯金していた場合は、資金源は独自の財産なので、財産分与の対象になりません。

熟年離婚の財産分与は折半なの?

財産分与の原則は、折半です。半分ずつ平等に分けるのが原則です。これは、専業主婦であっても共働きであっても変わりはありません。夫婦のどちらの収入が多いかに関係なく、基本的には折半します。妻の収入が多い場合であっても、折半するのが原則です。
ただし、特別な事情があれば、財産分与の割合が変更されることがあります。特別な事情とは、「個人の特殊な能力によって高額な収入を得ていた場合」です。例えば、大病院を経営しているお医者さんについて、財産分与の割合が変更されたケースがあります。他にも、スポーツ選手や大会社の社長さんなどは、「個人の特殊な能力によって収入を得ている」といえるでしょう。このような場合は、個人の技能によって特別に収入を得ることができたと認められ、夫婦の協力で獲得した収入ではないので、半分ずつ分けるべきではない、と考えられています。

婚姻期間中の夫婦の財産について

固有の財産

冒頭で説明したとおり、財産分与の対象になるのは「夫婦の共有の財産」です。「固有の財産」は、財産分与の対象になりません。固有の財産とは、「各個人が独自に取得した財産」です。例えば、独身時代の収入や親から相続した財産は、固有の財産ですので、財産分与の対象にはなりません。
他にも、独身時代に購入したマンションは、固有の財産です。たとえ夫婦で住んでいたマンションだとしても、財産分与の対象にはならないので注意しましょう。

共有財産

財産分与の対象になるのは、「夫婦の共有の財産」です。「共有の財産」とは、「夫婦が協力して獲得した財産」のことです。分かりやすい例としては、夫婦の収入をもとに購入したマンションは、夫婦の共有の財産です。夫の収入だけを頼りに購入したマンションであっても、夫婦の共有の財産です。夫の収入であっても、専業主婦が家事や育児を行うおかげで、夫が仕事に集中できたわけですので、夫婦で協力して獲得した財産といえるからです。

実質的な共有財産

夫婦の共有財産であるかどうかは、名義のいかんに関わらず、実質的に判断されます。たとえ名義が夫婦どちらか一方のものであっても、「夫婦で協力して獲得した財産」と認められれば、財産分与の対象になります。夫の名義でマンションを購入した場合でも、夫婦の収入をもとに購入したものであれば、夫婦の共有の財産です。
マンションの名義だけでなく、ローンの名義がどちらにあるかについても、基本的には関係ありません。ローンの名義が夫であっても、夫婦の収入をもとに購入したのであれば、夫婦の共有の財産と認められます。ローンの負担割合が夫7割、妻3割であっても、財産分与の対象となり、最終的には半分ずつに分与することになります。

財産分与の対象となる財産とは

財産分与の対象となる財産は、「婚姻期間中に協力して獲得した財産」です。「財産」というと、プラスの財産を思い浮かべがちですが、マイナスの財産も財産分与の対象になります。
例えば、夫婦で住むために家(マンションや一戸建て)を購入して、住宅ローンがまだ残っている場合は、マンションや一戸建ての住宅ローンも財産分与の対象になります。(参考:夫のDVが原因で離婚したいけど住宅ローンはどうなるの?)マイナスの財産の名義がどちらにあるかは、関係ありません。夫の名義で住宅ローンを組んでいる場合であっても、家(マンションや一戸建て)の住宅ローンも財産分与の対象になるので、注意しましょう。

ギャンブルや浪費等で作った借金は財産分与の対象となるのか?

マイナスの財産が財産分与の対象になるからといって、全ての借金が財産分与の対象になるわけではありません。財産分与の対象になるのは、「夫婦の生活に使うために借金したもの」に限られます。例えば、生活費や子どもの学費のために借金したお金は、財産分与の対象になります。
反対に、「どちらか一方の趣味や浪費のために作った借金」は、財産分与の対象になりません。例えば、夫がパチンコや競馬などのギャンブルにのめりこみ、ギャンブルをするために作った借金であれば、「夫婦の生活のための借金」とはいえないので、財産分与の対象にはなりません。この場合は、借金を作った当事者である夫が、責任を持って返済をすることになります。

熟年離婚の財産分与の割合はどのように決めるの?

財産分与の割合は、基本的には折半です。50%ずつ分割するのが原則です。
もちろん、話合いによってお互いが納得するのであれば、自由に割合を変更することができます。両者が合意するのであれば、4対6としても構いませんし、1対9としても構いません。

財産分与の割合が話合いでスムーズに決まることはめったにない

ただし、財産分与の割合が話合いでスムーズに決まることはめったにありません。話合いが難航する場合は、速やかに家庭裁判所に申し立てを行いましょう。財産分与の請求には期限がありますので、話合いを長引かせることは得策ではありません。

財産分与の請求期限は離婚した時から2年以内

財産分与の請求の期限は、「離婚した時から2年以内」です。離婚の話合いは長期化する傾向にあるので、知らないうちに期限が過ぎてしまった、という場合も珍しくありません。財産分与の話合いをしている方は、期限が迫っていないかどうか、必ず確認しておきましょう。
「離婚をした時から」というのは、「役所に離婚届を提出した日から」ということです。調停離婚や裁判離婚を行った場合は、「調停で離婚が成立した日」や「裁判上で離婚が成立した日」から計算します。
離婚を切り出した日から2年が経過していても、まだ離婚の話がまとまっておらず、離婚届を出していないのであれば、財産分与の請求期限は進行していません。このような場合は、いつでも財産分与を請求することができます。

夫が退職時にもらった退職金も分割・折半できるの?

長年、同じ会社に勤めた旦那さんの場合は、退職時に退職金をもらうことがあると思いますが、熟年離婚を考える妻は夫の退職金を自分ももらえるのか、折半できるのか気になるところだと思います。

夫の退職金も財産分与の対象になる

夫の退職金は財産分与の対象になります。退職金は給料の延長だと考えられており、妻が家庭を支えることによって獲得することができる財産なので、夫婦の共有の財産といえるからです。
最近では、夫の退職金が入った途端に熟年離婚に踏み切る、というケースが多くなっています。

財産分与した場合に夫の退職金をどのくらいもらえるの?

財産分与の基本は折半ですが、退職金については特別な計算方法が使われています。勤続年数が婚姻期間よりも長い場合は、割合が減額されます。
例えば、勤続年数が40年で、婚姻期間が30年の場合を考えてみましょう。退職金に対する妻の貢献度は75%(30年/40年)なので、退職金の75%を折半することになります。つまり、妻は退職金の37.5%を財産分与として請求することができます。
ただし、財産分与を請求する時点で退職金が残っていることが前提です。退職金を住宅ローンの清算に使った場合や、子供の学費に使った場合には、退職金が残っていませんので、財産分与として請求することはできません。このような事態を避けるために、退職金が入った途端に熟年離婚を決意する女性が増えています。

夫が退職する前に離婚しても、妻が夫の退職金をもらうことはできるの?

離婚する時点でまだ退職金が支払われていない場合は、財産分与として請求することはできないのでしょうか?
財産分与は、「離婚する時点での財産を折半する」ことが基本なので、退職金がまだ支払われていない場合は、原則として財産分与の対象になりません。
しかし、退職が間近に迫っており、近いうちに退職金が支払われることが確実であれば、財産分与の対象とすることができます。例えば、夫の退職が2年後に迫っており、会社の職務規定で退職金の算定方法がきちんと定まっている場合には、確実に退職金がもらえるケースといえるでしょう。
反対に、退職までにまだ10年以上もかかるのであれば、その会社に居続けることが確実であるとはいえないので、退職金を財産分与の対象とすることはできません。
また、会社の経営状況が悪化しており、退職金がカットされる可能性が高い場合も、退職金を財産分与の対象とすることはできません。
つまり、なんとしてでも財産分与の対象として退職金を請求したい場合は、退職金が入った直後に離婚するのが確実です。これより早いと、「将来退職金をもらうことが確実とはいえない」となりますし、これより遅すぎると、退職金が使われてしまい残っていないかもしれません。

夫が払い続けていた年金を分割することはできるのか?

夫が納付した保険料の一部を妻自身の年金として受け取ることができるようになった

平成19年より、年金分割の制度が開始されました。平成19年には「合意分割」の制度が始まり、平成20年からは「3号分割」の制度が始まりました。
これ以前においては、離婚した女性は、夫が婚姻期間中に支払った年金を受け取ることができませんでした。そのため、老後の生活に不安を感じて、多くの女性が離婚を躊躇していました。
しかし、妻が家庭を支えることによって、夫が収入を得て年金を支払っているわけですから、夫のみが年金を受給できるのは不公平である、と批判されるようになりました。こうして始まったのが、年金分割の制度です。

妻が年金受給年齢に達していなくても、夫の年金を受け取ることができるのか?

妻も夫が納付した保険料の一部を受け取ることができますが、たとえ、夫が年金受給年齢に達していたとしても、妻が年金受給年齢に達していなければ、妻は年金を受け取ることができません。なので、夫の年金を受け取るには、妻が年金受給年齢に達している必要があります。

熟年離婚の財産分与の対象となる年金は?

年金分割の対象となるのは、共済年金と厚生年金です。国民年金は対象ではありません。
共済年金とは、公務員が加入している年金です。厚生年金は、サラリーマンが加入している年金です。夫が自営業の場合は、厚生年金にも共済年金にも加入していないので、年金分割の制度を利用することはできません。

年金受給を受ける本人が資格期間を満たしていることが必要

年金分割として年金を受給するためには、夫が年金の資格期間を充たしていることが必要です。年金の資格期間は25年ですので、夫が25年以上年金を支払っていることが必要です。

年金分割の種類は二つある

年金分割には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。

合意分割とは

合意分割とは、「話合いによって年金分割の割合を決めること」です。平成19年4月1日以降に離婚した人が対象です。これ以前に離婚した人については、残念ながら合意分割を利用することはできません。
合意分割では、お互いの話合いによって、自由に割合を決めることができます。妻10%夫90%としてもよいですし、妻30%夫70%としてもよいのです。
もっとも、妻が請求できる割合の上限が50%なので、ほとんどの場合は「妻50%夫50%」として合意がまとまっています。

3号分割とは

3号分割とは、「妻からの一方的な請求によって、年金を2分の1に分割することができる制度」です。つまり、夫がどんなに抵抗しても、妻が自動的に年金の2分の1を獲得できる、という画期的な制度です。
3号分割は、「平成20年5月1日以降に離婚した人」が対象です。誤解している人が多いのですが、「平成20年4月1日以降に離婚した人」ではありませんので、注意しましょう。これ以前に離婚した人は、3号分割の制度を利用することはできません。
平成19年4月1日から平成20年4月30日までの間に離婚した人は、合意分割を利用することができますが、3号分割を利用することはできません。
注意すべき点は、「婚姻期間中に支払った年金の全てが分割されるわけではない」ということです。「平成20年4月1日から離婚するまでの期間」が対象です。

第3号被保険者

3号分割の制度は、「第3号の被保険者」のみが利用できる制度です。第3号の被保険者とは、「第2号の被保険者の配偶者で収入が一定以下の人」です。
典型的なのは、サラリーマンの妻で専業主婦の場合です。夫が自営業の場合や、夫が無職や学生である場合には、3号分割を利用することはできません。

年金分割が請求できる期限

年金分割を請求できるのは、「離婚した時から2年以内」です。この間に手続きをしなければ、年金分割を利用することができなくなります。特に熟年離婚の場合は、受給できる年金が高額ですので、この期限を過ぎてしまうと損失が重大です。熟年離婚の場合は特に注意が必要です。熟年離婚をお考えの方は、離婚すると同時に、速やかに年金分割の手続きを行いましょう。

長く連れ添った夫婦が熟年離婚する原因とは

まとめ

熟年離婚で財産分与を行う際は、様々な事情を考慮しなければなりません。婚姻期間が長ければ長いほど、夫婦の財産は多くなりますし、財産の種類も増えていきますので、熟年離婚の財産分与は複雑化する傾向にあります。
このような複雑な話合いを、当事者のみで解決できることはめったにありません。また、長年連れ添った相手とお金の話をするというのは、非常にストレスのたまることであり、新たなトラブルの火種となります。財産分与でお悩みの方は、お早めに弁護士にご相談しましょう。熟年離婚は特殊なケースですので、熟年離婚について実績のある弁護士にご相談するのがおすすめです。