夫や妻に浮気された場合、慰謝料の請求はどのように行ったらよいのでしょうか?
「慰謝料」と聞くと、まず「弁護士に頼んだ方がよいのではないか」と考える人が多いのではないでしょうか。
「しかし弁護士に頼むとなると費用がかかるのではないか」という心配もあるかもしれません。

今回の記事では、不倫の慰謝料の請求を専門家に相談するメリットについて解説します。また、気になる費用についても詳しく説明します。

実は、慰謝料を「請求する」だけなら誰でもできる

慰謝料を請求するには、どのような手続きが必要になるのでしょうか?難しい法律書類が必要になるのでしょうか?
実は、「慰謝料を請求する」だけであれば、誰でも簡単に行うことができます。慰謝料の請求額を記載した手紙を作成し、相手方に送付すればよいだけです。

しかし、このような「手紙」には、何の法的な拘束力もありません。相手が手紙を無視したとしても、それ以上の対策を取ることはできません。相手が文句も言わずに素直に払ってくれればよいのですが、そのようなラッキーなことはめったにないでしょう。

また、手紙の書き方によっては、相手方から「脅迫罪」として訴えられる可能性があります。このような場合、逆にあなたが相手方に慰謝料を支払うことになってしまいます。専門家を通して慰謝料の交渉を行えば、相手から訴えられる心配はありません。

夫や妻に不倫されるということは、精神的にとてもつらいことです。このような精神状況の中で、さらにご自身で慰謝料の請求を行うとなると、新たなストレスを抱えることになってしまいます。
このようなストレスを抱えることなく、相手から確実に慰謝料を支払ってもらいたいのであれば、専門家に依頼することが得策です。

不倫慰謝料関係を依頼できる専門家について

「専門家」と一口に言っても、いったい誰に相談したらよいのでしょうか?

不倫の慰謝料を請求できる専門家というと、「行政書士」「司法書士」「弁護士」の三種類の専門家が考えられます。
しかし、この三者は扱う分野が大きく異なります。どのような場合に誰に相談するのが一番よいのでしょうか?

それでは、各専門家のメリットやデメリットや費用について、みていきましょう。

行政書士について

【できること】

行政書士とは、その名のとおり、「行政に関する書類を作成したり、行政手続きについて相談にのること」を専門の業務としています。

行政書士の主な業務は、「契約書や合意書の作成」です。
不倫の慰謝料の請求では、「慰謝料の金額を合意した際に、きちんと書類として残してもらうこと」を依頼することができます。

つまり、行政書士に依頼するには、「相手が慰謝料を支払うことに納得しており、金額についても争っていないこと」が前提となります。

【できないこと】

行政書士の仕事は、あくまで「書類を作成すること」です。誰かの代理人として交渉することはできません。

例えば、「相手は慰謝料を100万円支払うと言っているが、300万円払うように説得してほしい」というように、相手方との交渉を依頼することはできません。
このような場合は、あなた自身が相手と連絡を取り、説得して、話し合いをまとめなければいけません。

また、行政書士は、「紛争のある案件」を扱うことはできません。
例えば、「相手が慰謝料として100万円支払うと言っているが、分割にするか一括にするか、もめている」という場合には、行政書士に依頼することはできません。

また、「相手が手切れ金として50万円支払うと言っているが、不倫をしたことは争っている」という場合も、不倫をしたかどうかについて争いがありますので、行政書士に依頼することは避けたほうがよいでしょう。

もしこのような案件を受任する行政書士に出会った場合は、違法行為をしていることになりますので、依頼することは避けるべきです。

【費用】

行政書士の業務は書類作成に限られていますので、費用はかなり安く済みます。
費用体型は行政書士事務所によって幅がありますが、おおよそ3万円から8万円が相場です。もちろんこれは契約書の作成のみの費用です。

もし相手方と交渉をする必要が出てきたり、裁判をするようなことになれば、その段階で弁護士に依頼しなおさなければならないため、二重に費用がかかってしまいます。

司法書士について

【できること】

司法書士は、「法律に関する書類を作成したり、法律手続きについて相談にのること」の専門家です。

行政書士と同じように、「慰謝料に関する合意書」を作成することができます。
また、司法書士の中には、「認定司法書士」という特別な資格を持った人がいます。

認定司法書士は、「簡易裁判所で請求額140万円を超えない案件」に限って、裁判を行うことができます。地方裁判所や高等裁判所で裁判を行うことはできません。

【できないこと】

司法書士は、行政書士と同様に、相手と交渉を行うことはできません。

もしあなたが慰謝料の金額でもめている場合は、あなた自身が相手を説得しなければいけません。あなたが話し合いをまとめることができなければ、司法書士に依頼することはできません。

また、一般の司法書士は裁判を行うことができません。
裁判を行うことができるのは、認定司法書士に限られます。認定司法書士であっても、訴額は140万円以下に限られています。つまり、慰謝料として140万円以上を請求することはできません。

また、認定司法書士は「強制執行」を行うことができません。
強制執行とは、「相手方が慰謝料を支払わない場合に、相手方の給与や貯金から強制的に慰謝料を支払ってもらう」という便利な制度です。

つまり、認定司法書士に依頼して裁判で勝訴しても、相手方が素直に慰謝料を支払わなければ、どうすることもできません。

強制執行を行うには、新たに弁護士に依頼しなければいけませんので、二重に費用がかかってしまいます。

【費用】

司法書士に合意書の作成を依頼する場合は、行政書士と同じぐらいの費用がかかります。ただし、行政書士よりも若干業務範囲が広いため、行政書士よりもやや高くなる傾向にあります。

どのような内容の合意書を依頼するかによって費用は異なりますが、おおよそ5万円から10万円が相場です。

認定司法書士に裁判を依頼する場合の費用は、「慰謝料をいくら請求するか」によって費用は異なります。例えば、慰謝料100万円を請求する場合は、おおよそ15万円から20万円ほどかかります。

強制執行を行う場合には、別途弁護士費用がかかりますので、最初から弁護士に依頼していた場合に比べると、やはり費用が高くついてしまいます。

弁護士について

【できること】

弁護士は、法律に関する業務を全て取り扱うことができます。

慰謝料に関する合意書の作成はもちろんのこと、相手方との交渉や、離婚調停、裁判、強制執行など、法律に関する業務に幅広く対応することができます。
慰謝料の請求の場合は、まず内容証明で慰謝料を請求し、相手が応じなければ裁判を起こし、それでも相手が支払わなければ強制執行を行うなど、最初から最後まで弁護士がサポートすることができます。

最初から弁護士に依頼しておけば、途中で弁護士に切り替える手間を省くことができますし、最終的には相手方から強制的に慰謝料を回収することができます。

【できないこと】

弁護士の業務は「法律に関すること全て」です。
法律業務であれば、制限はありません。

法律に関することであれば、できないことはありません。司法書士や行政書士にできることであれば、全て弁護士も行うことができます。

弁護士に依頼すれば、慰謝料に関する業務を長期的かつ幅広くサポートすることができます。
しかも、慰謝料の請求をしている間に、離婚の手続きや子供の親権のもめごとなどなにかしらの法的トラブルが生じた場合には、そのまま弁護士に相談することができるので、安心です。

【費用】

業務範囲がオールマイティーである代わりに、行政書士や司法書士に比べると、費用がかかってしまいます。

慰謝料の合意書の作成を依頼する場合には、およそ5万円から10万円ほどかかります。
調停や裁判を行うとなると、これよりも費用がかかります。裁判の費用は、慰謝料をいくら請求するかによって異なります。たとえば200万円の慰謝料を請求して勝訴した場合には、費用はおよそ40万円から60万円ほどかかります。

しかし、一度弁護士に依頼してしまえば、法律業務の全てを任せることができるので、余計な費用を払う心配はありません。

また、裁判を視野に入れて相手と交渉をすることができるので、相手の対応を待って時間ばかりが過ぎていく、ということもありません。

おすすめはやっぱり弁護士

費用面で一番安いのは、行政書士です。しかし費用が低額であるだけあって、サポート範囲も一番限られています。行政書士の対応できる範囲は、合意書の作成や内容証明郵便の作成にとどまります。相手方への強制力は一切ありません。

司法書士は、行政書士よりは業務範囲が広いものの、一般的な司法書士の業務の中心は不動産登記です。離婚の慰謝料請求を専門とする司法書士はごくまれです。慰謝料請求に精通した司法書士を探すことは、難しいかもしれません。

弁護士は、費用の面だけ考えると、三者の中で一番高額となります。しかし、日頃から多くの慰謝料のケースを扱っており、交渉事にも長けています。
一度弁護士に依頼してしまえば、状況に応じて様々な選択肢を取ることができますので、あなたのニーズに合わせて臨機応変に対応してもらうことができます。

たとえば、話し合いが長引いた場合に裁判を起こすことができますし、それでも相手が慰謝料を払わなければ強制執行をすることもできます。
また、弁護士に依頼すれば、慰謝料請求の手続きを最後までサポートすることができますので、「途中で行政書士から弁護士に切り替える」という余計な手間がかかりません。

慰謝料に弁護士費用を上乗せできる?

弁護士に依頼する最大のデメリットは、「費用がかかる」ということです。
その弁護士費用を、不倫した夫や妻や不倫相手に支払わせることはできないのでしょうか?

実は、裁判になると、弁護士費用を上乗せした慰謝料が認められることがあります。
裁判官が、「裁判をするはめになったのは、元々は相手方が不倫をしたことが原因である。不倫をされた人が弁護士費用まで払うことはかわいそうである。弁護士費用は、不倫をした本人が負担するべきだ」と考えるからです。

弁護士費用がいくら認められるかは、ケースに応じて様々です。弁護士費用が全く認められないこともありますが、弁護士費用が認められる場合には、おおよそ慰謝料の十分の一程度が認めらます。

たとえば、判決で慰謝料として200万円が認められた場合には、慰謝料とは別に、弁護士費用としておよそ20万円が認められます。
相手からは、合計として220万円を支払ってもらうことになります。

裁判で認められる弁護士費用は、「あなたが実際にいくら弁護士に支払ったか」に関係ありません。実際は弁護士に40万円を払っていたとしても、裁判で弁護士費用として40万円がそのまま認められるわけではありません。
しかし、相手に弁護士費用の一部を負担してもらえるというのは、裁判を行う場合の大きなメリットです。

裁判を行わず、相手と示談交渉をしている段階では、相手に弁護士費用を支払ってもらうことはほぼ不可能です。

費用節約の秘訣!早期解決を目指そう

弁護士に頼むと、行政書士や司法書士に比べて費用がかかってしまいます。
それでは、費用を節約するにはどうしたらいいのでしょうか?

費用を節約する一番の方法は、早期解決を目指すことです。時間がかかればかかるほど、手続きは複雑となってしまい、費用も高額になってしまいます。
それでは、慰謝料請求を早期解決するにはどうしたらいいのでしょうか?

第一に、問題をシンプルにすることです。

慰謝料の請求をする方の多くは、複雑な離婚問題を同時に抱えています。慰謝料の請求をしながら、子供の親権も争って、財産分与でももめている、ということは珍しくありません。
これでは、問題が複雑化してしまい、時間がかかってしまいます。まずは慰謝料の請求だけを行うという方法もありますし、まず親権の問題を片付けてから慰謝料の請求をする、という方法もあります。

問題をシンプルにすることで、それぞれの問題に集中することができますので、一つずつスムーズに解決することができます。

第二に、相談窓口を一本化することです。

慰謝料の請求を行政書士に頼んだものの、問題が解決しないのでやはり弁護士に依頼しなおさなければならないとなると、行政書士事務所と弁護士事務所を行ったり来たりすることになります。無駄な時間がかかってしまうだけでなく、費用も二重にかかってしまいます。
最初から弁護士に頼んでいれば、このような二度手間を防ぐことができます。

第三に、最初から長期的なプランを立てておくことです。

もし相手が全ての条件に素直に応じてくれるのであれば、行政書士や司法書士に依頼するほうが、費用は安くすみます。長期的なプランを立てる必要はありません。
しかし、もし条件の一つについてでも揉めそうであれば、裁判や強制執行を視野に入れて交渉しなくてはいけません。金額だけでなく、支払い方法や支払い時期など、少しでも揉めそうであれば、最初から強制的な手段を視野に入れておくべきです。
このような長期的プランを立てることができるのは、弁護士だけです。なにかしらトラブルとなりそうな可能性があれば、最初から弁護士に依頼することがおすすめです。

専門家に依頼したほうがいいケースについて

ここまでは、慰謝料の請求を専門家に頼む方法について紹介しました。

しかし、「自分の場合は、わざわざ専門家に頼むほどのことではないのでは…?」と思っている方がいらっしゃるかもしれません。
弁護士や司法書士や行政書士は、一般の方にはなじみのない職業です。専門家に相談するとなると、躊躇してしまう方がたくさんいらっしゃいます。

そこで、ここからは「専門家に依頼した方がいい」というケースを紹介していきます。
一つでもあてはまる方は、迷わず専門家に相談しましょう。

慰謝料の支払いどころか、話し合いにも応じない。請求を無視される

相手が話し合いに応じない場合は、早めに専門家に相談しましょう。

もしかしたら、相手はすでに弁護士に相談しているかもしれません。弁護士に相談したうえで、「裁判を起こされているわけでもないので、しばらく放っておきましょう」とアドバイスされているのかもしれません。
また、もしかしたら、相手は単に慰謝料を払いたくないだけかもしれません。慰謝料の支払いをうやむやにするために、わざと無視して引き延ばそうといるのかもしれません。
このような場合には、個人で解決することは非常に困難です。

個人で交渉している間は、あくまで「慰謝料を払うようにお願いする」ことしかできません。
単に相手の反応を待っているだけでは、だらだらと時間ばかりが過ぎてしまいますし、もし相手の反応を待っているうちに三年間が過ぎてしまうと、時効によって慰謝料が請求できなくなってしまいます。
強制力を持って相手に慰謝料を請求するには、弁護士に依頼して、法的措置を取るしか手段はありません。

弁護士に依頼して裁判を行うと、相手がこちらの請求を無視した場合には、相手に様々なペナルティーが課されます。
たとえば、相手が裁判を無視して欠席した場合は、「欠席判決」といって、こちらの請求をそのまま認める判決が出されます。
それでも相手が判決を無視すれば、そのまま強制執行を行い、相手の銀行口座から強制的に慰謝料を回収することができます。

このように、相手が話し合いに応じない場合には、個人で解決することはできません。弁護士に頼んで法的措置を取ることにより、手続きをスムーズに進めることができます。

浮気相手が弁護士を連れてきた!

慰謝料を請求した相手の対応が素早ければ、あなたよりも先に弁護士に相談するかもしれません。相手が先に弁護士を雇った場合は、あなたが個人で対抗することは難しいでしょう。

弁護士と一般の方の間には、圧倒的な法律知識の差があります。相手の弁護士の書面を解読できないかもしれませんし、相手の弁護士と交渉しようとしても、相手の弁論に圧倒されてしまうかもしれません。
慰謝料の請求相手が弁護士を雇ったということは、相手は本気であなたと争う覚悟です。あなたも専門家を雇って対抗するべきです。

なお、行政書士や司法書士は、相手の弁護士と交渉を行うことはできません(認定司法書士であれば、請求額140万円以下の民事事件に限り交渉を行うことができます)。

相手が弁護士を雇ったのであれば、あなたも弁護士を雇うべきです。
どちらが先に弁護士を雇うかによって、裁判の勝ち負けが決まるわけではありません。しかし、もしあなたが弁護士に頼むかどうかを迷っていると、その間は手続きを進めることができませんので、時間ばかりが無駄に過ぎてしまいます。
相手が先に弁護士を雇った場合は、あなたも早めに弁護士に依頼しましょう。

浮気相手が不倫慰謝料の減額を求めてきた!

慰謝料を請求した相手が、減額を求めてきたり、分割払いを提案してくることがあります。このような場合は、すぐに専門家に相談しましょう。

もちろん、相手が提示してきた金額にあなたが納得できるのであれば、専門家に相談する必要はありません。その通りの金額を受け取れば、それで手続きは終了です。
しかし、もしその金額に納得できないのであれば、話し合いは平行線になってしまいます。「慰謝料の相場」というのは分かりにくいものなので、妥協点を見つけることは難しいでしょう。
このような場合、いつまで経っても話し合いは解決しません。話し合いにさっさと見切りをつけて、専門家に相談しましょう。

また、相手が金額に合意していても、「年末のボーナスが入れば払うから、それまで待ってほしい」とか、「三年かけて払うから、月々の分割にしてほしい」など、支払いの延期を提案してくるかもしれません。

このような場合に、安易に支払いの延期を認めてしまうことは、非常に危険です。もしかしたら消滅時効が完成してしまい、慰謝料を請求できなくなってしまうかもしれません。
「相手はそのうち払うと言っているのだから、専門家に相談しなくてもいいだろう」と油断していると、慰謝料を受け取ることができなくなってしまうかもしれません。

消滅時効の計算には、法律知識が必要です。
相手が慰謝料をすぐに払わないのであれば、早めに専門家に相談して、消滅時効について確認をしておきましょう。

気になる不倫慰謝料の相場についてはこちら

まとめ

いかがでしたでしょうか?
慰謝料を受け取るまでには、たくさんのハードルがあります。個人で行うことは難しい問題ですし、精神的なストレスもかかってしまいます。慰謝料の請求をお考えの方は、早めに専門家に相談しましょう。

それでもやっぱり費用が気になるという方は、まずは無料の法律相談にいってみましょう。各法律事務所で無料相談を行っていることもありますし、弁護士会や自治体などが無料の法律相談を行っていることもあります。
慰謝料の請求は、一人で悩んでいても解決する問題ではありません。積極的に専門家を利用して、早期解決を目指しましょう。