医師の方は、普通の勤め人に比べ、高所得者であり、生活スタイルも違うので、離婚問題を解決するためには注意しなければいけないことがあります。

医師は、仕事と家庭の折り合いがつけづらい

家族と過ごす時間が少ないことで、離婚問題に発展するリスクも

医師は、離婚が多い業種であると言われています。それは、医師は勤務医の場合でも開業医の場合でも、忙しいことが原因の1つです。特に勤務医の場合には、当直や宿直も多いですし、急患があると、昼夜を問わず病院に呼び出されたりします。

仕事のストレスが溜まることも多く、家族との関係がうまくいかなくなりがちです。

社会的な責任も重く、仕事を優先しなければならない立場であることから、家族のことが後回しになって、家族関係が悪化してしまいます。このようなことから、夫婦関係に亀裂が入って、離婚問題につながるケースが多いのです。

女医でも同様の離婚リスクはある

医師の離婚率が高いのは、男性医師には限りません。女医のケースの離婚もとても多いです。

女性医師の場合でも、男性医師と同じように忙しいので、やはり家族のことが後回しになるという問題点は同じです。女性には家にいて家事や育児をしてほしいと考えるステレオタイプな夫とはうまくいかないことが目に見えています。

また、医師の場合、女性でも男性でも給料や収入が同じなので、女医は一般女性と比べて極めて収入が多く、離婚してもまったく生活に困らないという事情もあります。

このようなことから、医師の場合には、男女問わず離婚するカップルがとても多いのです。

医師が離婚にまつわる諸問題や解決方法について知っておく必要性は高いです。

医師との離婚での財産分与

財産分与で紛争になることもある

医師と離婚する場合、多くのケースで財産分与が問題になります。

医師は、一般の人と比べて高収入であることが普通です。勤務医でも年収1000万円を超えることが一般的ですし、開業医の場合には年収が数千万円になります。

そこで、離婚の際には、これらの医師の収入によって積み立てた財産を分割する方法が問題になるのです。

離婚の際には、財産分与ができますが、財産分与とは、夫婦が婚姻中に積み立てた財産を分け合う手続のことです。通常は、夫婦が2分の1ずつ取得します。

財産分与の対象は、夫婦共有財産ですが、夫や妻が働いて得た収入を預貯金などの形で積み立てたものも対象になります。

財産分与の対象になる財産は、具体的には、預貯金や生命保険、退職金や積立金、貴金属や不動産、車などの財産です。

不動産や車を分ける場合には、どちらかがその財産を取得して、他方に対してはその評価額の半額の現金を渡す方法で精算します。どちらもその取得を望まない場合には、不動産や車を売却して、その売却金を半額ずつ分けます。

自宅や自動車の財産は必ずしも購入時と同価値ではない

自宅や投資用の不動産や車などを財産分与で分割する場合、それらの価値の評価方法が問題になります。

このとき、その不動産や車の購入価格で計算するわけではないことに注意が必要です。

不動産や車などの「物」は、新品のときには評価額が高いですが、時間が経つにつれて価値が下がってくるのが普通です。そこで、これらを分割する際には、離婚時の価格で評価する必要があります。

不動産を評価するためには、不動産屋に簡易査定をしてもらう方法が便利です。自宅近くの不動産屋に「簡易査定してください」と依頼してもかまいませんし、インターネット上での不動産査定サービスなどを利用しても良いです。

車の評価については、中古車のディーラーや車の販売会社、代理店などに依頼すると良いでしょう。「評価書」を出してもらいにくい場合には、車を買い換えた場合の下取り価格などを提示してもらう方法もあります。

不動産の場合でも車の場合でも、複数の業者に見積もりをとって、どのあたりが適正な価格になるのかを見定めることが大切です。

医師の退職金

退職金も財産分与の対象になるのかという問題もありますが、ケースによっては退職金も財産分与に含めて計算することが可能です。

退職金は、将来いつもらえるかどうかがわからず、もらえるとしても金額が不確定なことも多いので、常に財産分与に含まれるわけではありませんが、具体的に支給時期が明らかであり、金額などもある程度予想できる場合には、財産分与対象になるのです。

医師の場合でも、勤務医のケースで退職金が支給されるケースがあります。

近い時期に退職が決まっていて金額なども予想されるようなケースでは、退職金も含めて財産分与の計算をしましょう。

開業医の場合には、退職金が出る保険をかけていることが多いです。この種の保険を利用すると、将来も安心ですし、税金対策にもなるからです。

保険の場合には、勤務先での退職金と比べて現在の評価額なども出やすいので、財産分与の対象に含めやすいです。

開業医と結婚している場合、夫がどのような退職金対策をしているかを知らないこともあるので、このような退職金を見逃さないように注意しましょう。

財産分与の話し合いをする際、夫がどのような保険や退職金制度を利用しているのか、しっかりと調べることが大切です。

財産分与で退職金をもらうための方法

医師との離婚での養育費や慰謝料について

慰謝料や養育費といったお金の問題

夫婦が離婚する場合、どちらかに責任がある場合には慰謝料が発生することがあります。

慰謝料は、すべてのケースで請求できるわけではありません。夫婦のどちらかが離婚原因を作った場合に発生するもので、具体的には、どちらかが不貞(不倫)をしたり、DVがあったりしたようなケースで認められます。

また、夫婦に子どもがいたら、親権や養育費も決めないといけません。相手も子どもの親権がほしいと言ったら争いが起こりますし、親権についてはこちらが取得出来たとしても、養育費の金額を決めるときに意見が合わないこともあります。

離婚後相手が子どもと会いたいと言ったら、子どもとの面会交流の方法も決める必要があります。

面会交流権とは。取り決め方と決定時期について

医師は慰謝料や養育費が一般の家庭より高額になるケースが多い

医師と離婚する場合に慰謝料や養育費の金額を決める際、いくらに設定するのかが問題になります。

相手が医師の場合には、慰謝料や養育費の金額が一般人の場合と比べて高額になることが普通です。

それは、医師が高収入であるからです。

養育費は、双方の収入状況に応じて計算されるので、支払う側の収入が高くなればなるほど、請求できる養育費の金額も高くなります。よって、相手が高収入の医師の場合には、通常より高い養育費を請求できるようになります。医師に養育費を請求する場合、毎月数十万円の養育費を請求できるケースもあります。一般人では数万円が関の山なので、かなりの差があることがわかります。

慰謝料の金額も高額になります。慰謝料を定める場合、支払う側の収入や社会的地位が高くなると、その分金額も上がることが多いからです。

医師と離婚する場合、相手の言いなりになって低い金額で養育費や慰謝料を定めて離婚すると、本来受けられるはずの支払いを受けられなくなって不利益を受けます。

そこで、養育費や慰謝料などの金額について、適正な金額がわからなかったり、自分たちではスムーズに決められなかったりする場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。

養育費の請求は弁護士にお任せください

配偶者を雇用している場合

離婚を理由として解雇することはできない

医師と離婚する場合、配偶者を雇用している場合にも問題が起こります。

開業医の場合には、配偶者を医院で雇用しているケースが多いからです。たとえば、夫が医院を開業していて、奥さんが事務などをしていることはとても多いです。このような方法をとると、税金対策にもなるので、税理士もそのように勧めることがあります。

夫婦の関係がうまくいっていると良いのですが、離婚の際にはこのことが大きな問題になります。離婚したことにより、夫が妻に対して解雇を申し渡してくるケースもあります。

しかし、離婚を理由に解雇をすることはできません。

法律上、労働者は保護を受けるので、正当な理由がない限り解雇されることはありませんが、離婚は解雇の正当事由にならないからです。解雇しない代わりに不当に減給をするということも認められません。

よって、妻が夫の医院で働いている場合やその逆のパターンの場合、離婚したからと言ってたちまち職を失う、ということにはなりません。ただし、離婚した後も夫の医院で働き続けるのは通常多大な精神的ストレスを感じるものですし、居心地も悪いでしょうから、近いうちに別の就職先を探して辞めることになることが多いです。

その場合でも、退職金制度のある医院であれば、きちんと正当な退職金を請求することができます。

まとめ

以上のように、医師はそもそも一般人より離婚率が高く、離婚トラブルに巻き込まれることが非常に多いです。また、医師は高収入であることなどから、医師が離婚する場合には、財産分与や慰謝料、養育費などの諸々の離婚問題において、一般人より大きなトラブルになりがちです。これらの金銭支払いについて、そもそもどのくらいが適正な金額になるのかがわからないことも多いですし、夫婦間で話し合いをしてもうまく解決できないこともよくあります。

このように、医師と離婚をする場合、きちんと知識をつけておかないと不利な結果になってしまうおそれが高いです。離婚の際には、離婚問題に詳しい弁護士に相談をして、必要があれば離婚の交渉や調停などの手続を依頼した方が良いでしょう。