飼い主の死後、ペットの生活がどうなるか不安な方も多いのではないでしょうか?今回は、ペットの生活保障について詳しく見ていきたいと思います。

飼い主の死後、ペットはどうなるの?

ペットの面倒をみてくれる知人や友人、家族がいれば問題ありませんが、そうでない場合は施設で保護されたり殺処分されてしまったりすることがあります。しかし、このような最悪の事態を未然に防ぐためには、飼い主は生前に何をしておくべきなのでしょうか。また、飼い主の死後、ペットの生活は保障されるのでしょうか。一般的には飼い主の死後、相続人に相続されます。ここでは、その理由や飼い主の死後のペットの生活について解説していきます。

飼い主が死んだらペットの生活はどうなる?

飼い主の死後、残されたペットの世話を条件に他人に引き渡されたり、あらかじめ信託保証された団体に引き取られたりする場合があります。殺処分という最悪な事態を防ぐためには、飼い主は生前のうちにペットの老後について考えておかなければなりません。

しかし、ペットの世話を他人にお願いするということは、ある程度の資金が必要になってきます。したがって、飼い主はペットの老後を見据えて貯金しておく必要があります。また、生前にペットの相続人を指定して、飼い主の死後も面倒をみてくれる方とあらかじめ契約を交わしておいたり、遺言を残したりしておくことによって、ペットの生活が保証されます。

ペットに遺産を相続させることは可能?

残念ながら日本では法律上、ペットなどの動物は「物」として取り扱われるため、ペットに遺産を相続させることはできません。

民法85条の「この法律において物とは有体物をいう」という規定に基づいて、ペットなどの動物は「物」であると解釈されています。そのため、ペットには民法上遺産を受け取る権利がありません。具体的には、飼い主の死後、ペットに対して遺産を遺したいと考えても、そもそも民法85条でペットは物扱いと規定されているため、遺産を相続させることができませんし、ペットが何らかの事故に巻き込まれて怪我をしたり死亡したりしても高額な慰謝料を請求することができません。

相続放棄した場合ペットはどうなる?

飼い主の生前にペットの相続人として承認を得ていても、飼い主の死後に事情が変わったことで相続人がペットの相続を放棄する場合もあります。このような場合は一体どうなるのでしょうか。ここでは、ペットの財産価値や引き取り手がない場合にどうなるのかなどについて解説していきます。

そもそもペットは相続の対象なのか

民法85条で、ペットは「物」として規定されているため、一般的には相続の対象となります。つまり、飼い主の死後も、ペットは財産的価値があるものとしてみられるため、飼い主の死後に相続人が相続放棄しない限り、ペットの世話をするのが一般的です。

ただし、飼い主の財産のうちペットだけ相続放棄することはできません。理由としては、ペットそのものに財産的価値があるためです。そもそも、相続人が財産を相続する場合に、原則として飼い主が保有していた財産や物を利用したり、処分したりすることはできません。しかし、財産的価値がないと判断されたペットは引き取ることが可能です。

財産的価値の有無はどうやってきまるのか、誰が決めるのか

それでは、ペットの財産的価値の有無はどのように決まるのでしょうか。

価値は、それぞれの動物の専門家が決めていきます。例えば、ペットショップのスタッフやブリーダーなどです。

飼い主の死後に関わらず、ペットそのものには財産的価値がありますが、実際にどのくらいの価値があるのかを判断するためには専門家の意見が必要です。さらに、具体的な財産的価値の有無を決める方法として、ペットの種類や年齢だけでなく、栄養状態や身体的・精神的損害なども項目に含まれます。

引き取り手のいないペットはどうなる?

民法上、ペットなどの動物は「物」として取り扱われるため、財産としてみなされます。つまり、ペット自体「物」として金銭的価値が認められており、飼い主の死後は相続の対象となりますが、相続人と飼い主の生前に交わされた取り決めの内容によっては、相続人が相続を放棄してしまう場合もあります。

実際、このようなケースでの対応で困る方もいることでしょう。しかし、相続人が個人であれば難しい内容であっても、動物の愛護を目的として活動している団体も数多く存在していますので、事前に相談しておくことで万が一に備えることができます。

民法940条1項では、財産の保全・管理する義務が規定されているためペットを引き取ることが可能であり、飼い主の死後もペットの生活は保証されます。しかし、基本的には飼い主が生前にペットの今後について相続人と取り決めを交わす以外何もしていなければ、結果的にペットの引取り人がいないこととなり、相続人が相続を放棄した時点でペットの生活が保証されなくなってしまいます。仮にそうなれば、最終的に殺処分されてしまう可能性もありますのでペットの老後についての対応は、細心の注意を払わなければなりません。

飼い主の死後、ペットの生活を保証させる方法

ここまでは、飼い主の死後のペットの生活についてや相続放棄した場合のペットの扱いについて解説してきました。ここでは、さらに具体的にペットの生活を保障させる方法について解説していきます。

遺言書を遺す

ペットは、民法85条で「物」として規定されているため、飼い主の死後も遺産を相続させることはできません。しかし、相続人にペットの世話等を保証させる負担付遺贈や負担付死因贈与契約という制度で遺言を残すこともできるため、飼い主は生前のうちにやっておくことで、ペットの生活を保証させることができます。

財産を相続させる代わりに、ペットの世話をしてもらうよう意思表示する(負担付遺贈)

負担付遺贈とは、飼い主の死後に相続人が財産を相続する場合、ペットの世話も一緒に引き受ける義務のことです。例えば、飼い主が誰か特定の相続人を指定して、「飼い主の死後もペットの世話をしてくれるのであれば財産を渡します」という遺言を残すことができます。

この負担付遺贈は、飼い主と相続人との間であらかじめ合意が得られていなければなりません。しかし、相続人の事情が変わり遺贈を放棄することもできるため必ずしもペットの生活が保証されるわけではありませんので、注意が必要です。

死後、財産を贈与する代わりにペットの世話をしてもらう契約をする(負担付死因贈与契約)

負担付死因贈与契約とは、飼い主と相続人との間で、負担付遺贈と同様「飼い主の死後もペットの世話をしれくれるのであれば財産を渡します」という契約をすることです。これは、遺言とは異なり、相続人にペットの生活を保証させるための契約ですので、基本的には相続人が一方的に撤回することはできません。そのため、負担付遺贈よりもペットの生活が確実に保証されるという特徴があります。

ペットサービスを利用する

飼い主の死後に引き取り手がいなくても、信託や老犬ホーム、動物の愛護団体などさまざまなサービスを利用することでペットの生活を保証させる仕組みが存在します。

ペット信託

ペット信託とは、動物の愛護団体として活動しているNPO団体などに、あらかじめペットの生活に必要な経費を「信託(財産の管理をしてもらう)」することで、飼い主に万が一のことがあってもペットの生活が保証される仕組みのことです。

信託法に基づいて手続きされますが、一般の方には分かりにくい箇所もあると思いますので弁護士に相談するとよいでしょう。ペット信託することで、定期的に団体への費用負担が生じますが、あらかじめ契約で定められた範囲内でのみ支出できないため、安心して預けることができます。

老犬ホーム

老犬ホームとは、飼い主が何らかの事情でペットをみることができなくなった場合に、一時的に預かってその後の生活を保証してくれる施設です。老犬ホームを利用しているほとんどの動物は、さまざまな事情を抱えており、短期から長期にかけてスタッフがペットの世話をしているケースが少なくありません。具体的には、飼い主が逝去してしまった場合や引き取り手がいない場合、さらに、老犬の介護が困難になった場合に利用するケースが増えています。

まとめ

最後に、飼い主はペットの生涯を背負う責任が生じるとともに、万が一のことがあった場合でも事前に備えておく必要があります。法律上、ペットは「物」として扱われますが、飼い主にとっては家族同然ですので、万が一のことがあってもペットには安定した生活を送ってもらいたいものです。

ペットへの遺言やペット信託などさまざまなサービスがありますが、不明な点が多いという方も多いでしょう。まずは専門的な知識を持った弁護士に相談して、問題解決を図ることをおすすめします。