子どもがいない家族で、夫が死亡した場合に、夫の財産を義理の兄弟姉妹に渡さないといけないのでしょうか。子どもや直系尊属がいない相続はどうなるのか。詳しく見ていきましょう。

夫が死亡した場合は、夫の財産を義理の兄弟に渡さないといけないの?

義理の兄弟に財産を渡さない

日本の法律では、義理の兄弟にも相続権があります。相続権があるといっても、常に相続人となるわけではありません。義理の兄弟は、相続人になる場合もあれば、相続人にならない場合もあります。

あなたに子どもがいる場合は、相続人はあなたと子どもだけです。義理の兄弟は相続人にはなりません。遺産について相談する必要はありません。

あなたに子どもがいなくて、義両親も義祖父母も既に亡くなっている場合は、義理の兄弟に相続権が発生します。あなたと義理の兄弟が相続人となりますので、義理の兄弟と話し合いを行い、遺産を分割しなくてはいけません。しかし、このような場合においても、事前に遺言を作成しておくなどの対策を取っておけば、義理の兄弟に財産を渡す必要はありません。

義理兄弟の法定相続分

義理の兄弟が相続人となる場合でも、義理の兄弟と財産を半分ずつ分ける必要はありません。法律で定められた配分割合は、配偶者が4分の3で、義理の兄弟が4分の1です。義理の兄弟は、被相続人とのつながりが弱いので、配分割合は4分の1しか認められていないのです。

もし義理の兄弟が複数いる場合は、兄弟で4分の1の財産を均等に分けます。たとえば、夫に2人の姉がいる場合は、その2人の姉が8分の1ずつ相続します。夫に3人の弟がいる場合は、3人の弟が12分の1ずつの財産を相続します。

つまり、夫に兄弟が何人いても、あなたの相続割合が4分の1であることに変わりはありません。夫に兄弟がたくさんいるからといって、あなたの取り分が減るわけではありません。

相続の手続きは基本的にすべての法定相続人の同意が必要

法定相続人の同意

相続の手続きを進める際には、たくさんの手続きを行わなければいけません。マイホームの名義変更や、預貯金の解約、生命保険の死亡保険金の受取手続きなど、膨大な数の手続きが必要となります。

これらの手続きを進めるには、それぞれの手続ごとに、相続人全員の同意書が必要になります。

たとえば、「お葬式の費用として、貯金を100万円だけおろしたい」という場合にも、法定相続人全員の同意書を銀行に提出しなければなりません。

同意書の形式は様々ですが、多くの場合は署名と実印を必要としています。手続きを行うたびに義理の兄弟にサインのお願いをするというのは、非常にストレスのかかることであり、義理の兄弟が遠方に住んでいる場合は時間もかかります。

義理の兄弟に夫の財産を渡さない方法

遺言書に残す

義理の兄弟に夫の財産を渡さない方法として、最も確実な方法は、夫に遺言書を作成してもらうことです。遺言書に「配偶者に全ての財産を渡す」「兄弟姉妹には相続させない」という内容が書いてあれば、義理の兄弟に財産を渡す必要はありません。

相続に詳しい方であれば、「そんな遺言書を残したら、義理の兄弟から遺留分を主張されるのではないか」と心配するかもしれません。遺留分とは、「相続人に最低限保障されている相続分」のことです。

実は、日本の法律では、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。遺留分が認められているのは、「兄弟姉妹以外の相続人」に限られています。兄弟姉妹は、配偶者や子どもに比べると、被相続人との結びつきが弱いため、遺留分の権利が認められていないのです。

よって、被相続人の兄弟姉妹は、遺留分を主張することができません。遺言書に「兄弟姉妹には財産を一切渡さない」と記載されていれば、兄弟姉妹が抵抗することはできないのです。

子どもがいない夫婦はお互いに遺言を書いておく

法的な遺言書がないと無効になる

義理の兄弟が相続人となる場合は、トラブルが生じることが珍しくありません。一般的に、義理の兄弟と頻繁に連絡を取っている方は少ないので、相続のことで腹を割って話し合いをするというのは難しいものです。話し合いがうまく進まず、時間ばかりが過ぎてしまうので、焦燥感がつのり、様々なトラブルが生じてしまいます。このようなトラブルを避けるためにも、子どもがいない夫婦の場合は、きちんと遺言書を作成しておいた方がよいでしょう。

有効な遺言書の書き方はこちら

しかし、「とりあえず遺言書を書いておけば安心」というわけではありません。遺言書は大きな効果をもたらすものなので、法律で細かく形式が決まっています。少しでも不備があると、無効となってしまいます。

せっかく夫婦で話し合って作成した遺言書でも、一箇所でも記載漏れがあれば、ただの紙切れになってしまいます。あなたがどんなに遺言書の内容を主張しても、法的な不備があれば、裁判官から無効な遺言書だと認定されてしまいます。

遺言書をご自身で作成するのは、非常に危険な行為です。相続に詳しい弁護士に相談して、公正証書としてきちんと残しておきましょう。弁護士に相談すれば、弁護士がきちんと内容を確認しますので、後になって不備が見つかるということはありません。また、公正証書にする際には、公証人がきちんと遺言の形式を確認してくれますので、遺言書の内容が保証されることになり安心です。

まとめ

以上のように、義理の兄弟とは相続についてトラブルとなるケースが少なくありません。このようなトラブルを避けるためにも、きちんとした形で遺言書を残しておくことが重要です。遺言書の形式は法律で厳格に決まっていますので、ご自身で遺言書を作成するのはおすすめできません。相続に詳しい弁護士に相談したうえで、きちんとした公正証書遺言を残しておきましょう。